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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
修行編

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第92話 『氷壁再来』

雪が降る。


冷たい風が吹き抜ける。


そして。


目の前には巨大な氷壁がそびえ立っていた。


一年ぶりだった。


ユーマ達は足を止める。


誰も言葉を発しない。


必要なかった。


覚えている。


一年前。


何度攻撃しても傷一つ付かなかった壁。


絶望した日。


そして。


修行を始めた日。


氷壁は何も変わっていない。


変わったのは。


ユーマ達の方だった。


静寂。


ユーマが一歩前へ出る。


誰も止めない。


リリムも。


ロキも。


ただ見ている。


ガルドも腕を組む。


ナディアも微笑む。


ウィザードも静かに見守る。


アリスは息を飲んだ。


ユーマは氷壁の前に立つ。


巨大な氷。


その表面に。


自分の姿が映っていた。


一年ぶりに見る自分。


少し伸びた髪。


以前より引き締まった身体。


そして。


あの日とは違う目。


弱かった頃の自分が重なる。


ミスト村で剣を振っていた頃。


ゴブリンに苦戦していた頃。


何度も死にかけた旅。


たくさんの出会い。


たくさんの戦い。


そして。


一年の修行。


ユーマは小さく笑った。


「成長したな。」


誰に言うでもない。


自分自身への言葉だった。


ゆっくりと腰へ手を伸ばす。


名刀カゼマサ。


静かに刀を抜く。


キィン――


澄んだ音が響いた。


風が吹く。


雪が舞う。


ユーマは構える。


技名は言わない。


ただ。


自然に。


当たり前のように。


刀を振った。


シュッ――


一閃。


それだけだった。


何も起きない。


誰も動かない。


静寂。


だが。


次の瞬間だった。


パキッ。


小さな音。


氷壁に一本の亀裂が入る。


そして。


二本。


三本。


十本。


百本。


無数の亀裂が走った。


アリスが目を見開く。


「え・・・。」


その直後。


ドゴォォォォォォォォォォォン!!


巨大な氷壁が崩れ落ちた。


轟音。


雪煙。


吹き荒れる風。


一年前。


傷一つ付かなかった壁が。


粉々になっていた。


アリスは言葉を失う。


ただ呆然と立ち尽くす。


ウィザードが笑った。


「ほう。」


「なかなかじゃな。」


「良い修行をしたようじゃ。」


ガルドも笑う。


「死に物狂いでやりましたよ。」


ユーマが振り返る。


「死に物狂いどころじゃなかっただろ。」


「何回殺されかけたと思ってんだ。」


ガルドは鼻で笑った。


「気のせいだ。」


「絶対気のせいじゃない。」


思わずツッコミが入る。


そのやり取りにナディアも笑った。


アリスはまだ氷壁を見ていた。


信じられない。


一年前。


全員で攻撃しても無理だった壁。


それを。


たった一振りで。


「す、すごい・・・。」


思わず声が漏れる。


「ユーマ・・・。」


ユーマが振り返る。


「ん?」


アリスは恐る恐る聞いた。


「今・・・。」


「レベルいくつなの・・・?」


ガルドが代わりに答える。


「55だ。」


アリスが固まった。


「え?」


「55。」


「もう俺より遥かに強いよ。」


沈黙。


そして。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


アリスの叫びが雪原に響いた。


ユーマは苦笑する。


リリムは肩をすくめる。


ロキは鼻で笑う。


一年。


それだけの時間を彼らは戦い続けた。


そして。


ついに。


壁の向こうが見える。


誰も知らない景色。


白銀の世界。


遠くに見える巨大な城塞。


戦士達の街。


怒りの街。


ユーマはその景色を見つめる。


そして。


小さく笑った。


「行こうぜ。」


誰も異論はなかった。


新たな冒険が始まる。

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