第91話 『雷の魔法戦士』
バチバチバチッ!!
雷が走る。
温泉村の入り口。
空間そのものが歪み始めた。
アリスが目を見開く。
「な、何!?」
ガルドは笑った。
「来たか。」
魔法陣が浮かび上がる。
眩い光。
そして。
裂けるように空間が開いた。
その向こうから。
小さな老人が現れる。
「ふぅ。」
ウィザードだった。
そして。
その後ろからもう一つの影が現れる。
ローブ。
長くなった髪。
以前より鋭くなった目。
その男は静かに前へ出た。
「待たせたな。」
ロキだった。
アリスの顔が明るくなる。
「ロキ!」
ロキは軽く手を上げる。
「久しぶりだな。」
ユーマはロキを見て固まった。
そして。
吹き出す。
「なんだその格好。」
ロキが眉をひそめる。
「何がだ。」
「怪しすぎるだろ。」
「魔王軍かと思った。」
リリムが笑う。
「確かに。」
「怪しい。」
ナディアも頷く。
「怪しいな。」
ロキ。
「お前らな。」
一年ぶりなのに酷かった。
すると。
ロキもユーマを見る。
腰に差された刀。
以前の竹刀でもなければ剣でもない。
日本刀だった。
ロキは呆れたように言う。
「お前は侍みたいになったな。」
ユーマはニヤリと笑った。
「侍だ。」
「違うだろ。」
即答だった。
アリスが思わず笑う。
何も変わっていない。
一年経っても。
みんな同じだった。
その時だった。
アリスが気付く。
「あれ?」
「ん?」
「ロキ。」
「斧は?」
ロキの腰には小さな斧しかなかった。
以前使っていた大斧はない。
ユーマも見る。
「確かに。」
「小さくね?」
ロキは小さく笑った。
「そうか?」
腰の斧を手に取る。
そして。
雷が走った。
バチバチバチッ!!
斧を包む雷。
アリスが目を見開く。
「えっ!?」
形が変わる。
小型斧だったものが。
巨大な戦斧へと変貌した。
ズン。
重々しい音を立てる。
「おぉぉ!?」
ユーマが声を上げる。
リリムも少し驚いた顔をする。
「なによそれ。」
ロキは肩に担ぐ。
「ケラノウス。」
「俺の相棒だ。」
さらに。
雷が走る。
戦斧だった武器が。
今度は槍へ変わる。
さらに鎌。
さらに元の小型斧へ。
アリスは目を輝かせる。
「すごい!」
「便利そう!」
ユーマも頷く。
「めっちゃ便利だな。」
ロキは少しだけ得意げだった。
その様子を見ていたウィザードが笑う。
「ほっほっほ。」
「なかなかじゃろ?」
「ワシの最高傑作の一つじゃ。」
ロキがため息を吐く。
「作った本人が言うな。」
「事実じゃ。」
ウィザードは胸を張った。
そして。
全員を見回す。
一年。
長かったようで短かった。
それぞれが強くなった。
それぞれが成長した。
その事実を誰もが感じていた。
そして。
ウィザードが北を見た。
雪の向こう。
巨大な壁。
一年前。
傷一つ付けられなかった壁。
氷壁。
「さて。」
ウィザードが笑う。
「行くかの。」
全員が同じ方向を見る。
ユーマ。
リリム。
ロキ。
アリス。
ナディア。
ガルド。
そしてウィザード。
一年前。
届かなかった場所。
越えられなかった壁。
だが。
今は違う。
ユーマは腰の刀へ手を添える。
名刀カゼマサ。
リリムは背中のAK2020を見上げる。
ロキはケラノウスを握る。
誰も言葉にしない。
だが。
全員の思いは同じだった。
――今なら行ける。
雪が舞う。
風が吹く。
そして一行は歩き出した。
氷壁へ向かって。




