第90話 『帰還』
「ユーマ・・・?」
アリスは呆然と立ち尽くしていた。
目の前にいる。
ずっと会いたかった人が。
一年。
長かった。
本当に長かった。
夢じゃない。
幻でもない。
間違いなくユーマだった。
そして。
次の瞬間。
アリスは走り出していた。
「ユーマ!!」
「うおっ!?」
勢いのまま飛び付く。
ユーマは慌てて受け止めた。
「ア、アリス!?」
「よかった・・・!」
「本当によかった・・・!」
アリスの声は少し震えていた。
一年。
ずっと心配していた。
怪我はしていないか。
無事なのか。
生きているのか。
色々考えていた。
だから。
今こうして目の前にいるだけで嬉しかった。
だが。
数秒後。
アリスは我に返る。
「・・・あ。」
沈黙。
自分が何をしているのか理解した。
抱きついている。
思いっきり。
ユーマに。
顔が真っ赤になる。
「ご、ごごごごごめん!!」
慌てて離れる。
ユーマも少し照れていた。
「いや・・・。」
「まぁ・・・。」
何と言えばいいか分からない。
気まずい空気。
その様子を見ていたガルドが吹き出した。
「ガハハハハ!」
「若いなぁ!」
「うるせぇ!」
ユーマが即座に返す。
ナディアも笑っている。
そして。
リリムは呆れたように肩をすくめた。
「青春ねぇ。」
アリスはさらに顔を赤くした。
「も、もう!」
ユーマは苦笑する。
だが。
改めてアリスを見る。
一年前とは違う。
どこか大人っぽくなった。
魔力も以前よりずっと強く感じる。
「アリス。」
「ん?」
「強くなったな。」
アリスの目が丸くなる。
そして。
少し嬉しそうに笑った。
「ユーマも。」
「見違えたよ。」
ユーマは笑う。
「そうか?」
「うん。」
その返事だけで十分だった。
そして。
今度はユーマが視線を移す。
赤髪。
長く伸びた髪。
背中には巨大な銃。
腰には二丁の拳銃。
一年ぶりの戦友。
「お前も偉く派手になったな。」
リリムが眉を上げる。
「何がよ。」
「射撃大会は地元でやれ。」
ユーマが笑う。
「温泉村で戦争始める気か?」
リリムも笑った。
「一年で帰ってこれたんだな。」
「ん?」
「修羅に認められなくて。」
「十年くらい帰ってこないと思ってたけど。」
ニヤリ。
挑発的な笑み。
ユーマも笑う。
「誰がだ。」
「むしろお前の方が危なかっただろ。」
「失礼ね。」
二人が向かい合う。
そして。
どちらからともなく手を差し出した。
ギュッ。
握手。
短い時間だった。
だが。
それだけで十分だった。
言葉はいらない。
お互い生きて帰ってきた。
それだけでいい。
リリムが笑う。
「生きてたわね。」
ユーマも笑う。
「そっちもな。」
その時だった。
アリスが周囲を見回す。
「あれ?」
「どうした?」
「ロキは?」
沈黙。
ユーマ。
「知らん。」
リリム。
「知らない。」
ナディア。
「見てない。」
ガルド。
「はぐれた。」
アリス。
「えぇ・・・。」
一年ぶりの再会なのに。
全員が普通にロキを見失っていた。
その時だった。
バチッ。
空気が震える。
全員が振り返る。
バチバチバチッ!!
雷。
眩い光。
空間そのものが歪み始める。
「な・・・!?」
アリスが目を見開いた。
魔法陣が浮かび上がる。
そして。
裂けるように空間が開いた。
その向こうから。
二つの影が現れる。
一人は小さな老人。
そして。
もう一人は――
「待たせたな。」
聞き慣れた声が響いた。




