第89話 『再会』
雪煙がゆっくりと晴れていく。
アリスは目を見開いていた。
目の前。
そこに立っていたのは。
間違いなくリリムだった。
だが。
知っているリリムとは少し違う。
長く伸びた赤髪。
後ろで一つに結ばれている。
以前より大人っぽい顔立ち。
そして何より。
纏う空気が違った。
強い。
見ただけで分かる。
背中には巨大な銃。
腰には二丁の拳銃。
一年という時間の重みを感じた。
「リリム・・・。」
アリスが呟く。
その時だった。
吹き飛ばされたフロストベアが立ち上がる。
怒り狂った咆哮。
「グオォォォォォォ!!」
巨大な身体が雪を蹴る。
一直線。
リリムへ向かう。
アリスが叫んだ。
「危ない!」
だが。
リリムは振り返りもしない。
ただ。
面倒そうにため息を吐いた。
「朝からうるさいわね。」
炎が揺れる。
リリムの右腕。
拳。
そこへ炎が集まっていく。
魔炎鳥ではない。
もっと小さい。
もっと凝縮された炎。
「邪魔。」
次の瞬間。
ドゴォォォォォォン!!
拳がめり込んだ。
フロストベアの顔面へ。
衝撃。
轟音。
巨大な身体が宙を舞う。
木を何本もへし折りながら吹き飛んだ。
そして。
動かなくなった。
沈黙。
アリスも。
森も。
静まり返る。
「・・・。」
「・・・。」
アリスはフロストベアを見る。
もう一度見る。
そして。
リリムを見る。
「え?」
それしか言えなかった。
レベル30。
一年前なら恐怖の対象。
今。
リリムは拳一発で倒した。
理解が追い付かない。
リリムが振り返る。
そして。
小さく笑った。
「久しぶり。」
「アリス。」
その瞬間だった。
アリスの目に涙が浮かぶ。
「リリム・・・!」
思わず駆け寄る。
一年ぶり。
本当に一年ぶりだった。
リリムは少し困った顔をする。
「近い近い。」
「だって・・・。」
アリスは笑う。
嬉しかった。
本当に。
心から。
その時。
後ろから声が聞こえた。
「相変わらずだな。」
聞き覚えのある声。
アリスが振り返る。
そこにはナディアが立っていた。
「ナディアさん!」
「久しぶりだ。」
ナディアも少し笑う。
以前と変わらない。
だが。
どこか余裕が増していた。
アリスは二人を見る。
そして。
一番気になっていたことを聞いた。
「ユーマは?」
「ガルドは?」
「ロキは?」
リリムとナディアが顔を見合わせる。
そして。
リリムが笑った。
「心配しなくても。」
「みんな生きてるわよ。」
アリスがホッとする。
リリムは続けた。
「もう帰ってくる頃。」
その言葉に。
アリスの顔が明るくなった。
三人は温泉村へ向かう。
雪道を歩く。
一年分の話をしながら。
アリスは嬉しそうだった。
リリムは少し呆れていた。
ナディアは笑っていた。
そして。
夕方。
三人は温泉村へ到着した。
温泉街。
湯気。
賑やかな声。
懐かしい景色。
アリスは少し前を歩いていた。
その時だった。
後ろから。
声が聞こえた。
「アリス。」
足が止まる。
心臓が跳ねた。
聞き間違えるはずがない。
一年間。
何度も思い出した声。
ゆっくりと振り返る。
そこには。
一人の少年が立っていた。
一本の刀を腰に差し。
少し大人びた顔で。
笑っている。
その隣にはガルド。
アリスの瞳が大きくなる。
「ユーマ・・・?」
信じられなかった。
だが。
間違いない。
一年ぶりの再会だった。




