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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
修行編

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第88話 『遭難』

温泉村まで。


あと少し。


そう聞いていた。


アリスは雪道を歩く。


吐く息は白い。


空気は冷たい。


だが。


気持ちは軽かった。


「もうすぐ会えるかな。」


小さく呟く。


ユーマ。


リリム。


ロキ。


ガルド。


一年ぶりの再会。


考えるだけで少し嬉しくなる。


アリスは微笑んだ。


そして。


三十分後。


立ち止まった。


「・・・あれ?」


周囲を見回す。


雪。


木。


雪。


木。


雪。


木。


全部同じだった。


アリスは地図を開く。


見る。


閉じる。


もう一回開く。


見る。


閉じる。


「・・・。」


嫌な予感がした。


もう一度周囲を見る。


やっぱり分からない。


「・・・あれ?」


沈黙。


「おかしいな。」


さらに歩く。


十分。


二十分。


三十分。


もっと分からなくなった。


「・・・。」


アリスは空を見上げる。


そして。


認めた。


「迷ったぁぁぁぁぁ!!」


雪山に叫び声が響く。


村人達の言葉を思い出す。


――迷うなよー!


「迷いませんって言ったのに・・・。」


しゃがみ込む。


恥ずかしかった。


だが。


いつまでも落ち込んではいられない。


アリスは立ち上がる。


「大丈夫。」


「落ち着こう。」


一年で成長した。


昔の自分じゃない。


そう言い聞かせる。


そして。


適当に歩き出した。


それが良くなかった。


さらに迷った。


「なんでぇぇぇぇ・・・。」


泣きそうだった。


その時。


ズシン。


アリスの足が止まる。


「・・・え?」


ズシン。


ズシン。


地面が揺れる。


何かいる。


大きい。


かなり大きい。


森の奥。


木々を押し倒しながら。


巨大な影が現れた。


白い毛。


巨大な牙。


鋭い爪。


熊だった。


だが普通ではない。


四メートル近い巨体。


全身から冷気を放っている。


アリスの顔色が変わった。


「フロストベア・・・。」


知っている。


高レベルモンスターだ。


レベル30。


今の自分より強い。


フロストベアもアリスを見つけた。


目が合う。


沈黙。


そして。


咆哮。


「グオォォォォォォ!!」


「きゃぁぁぁぁぁ!!」


アリスは反射的に走った。


森を駆ける。


雪を蹴る。


だが。


速い。


フロストベアも速い。


距離が縮まる。


「ウォーターランス!」


水の槍を放つ。


ドン!!


命中。


だが。


フロストベアは止まらない。


「そんな・・・!」


以前のアリスなら逃げるだけだった。


だが。


一年間修行した。


立ち止まる。


杖を構える。


「来なさい!」


フロストベアが突進する。


アリスは避ける。


ギリギリ。


雪が舞う。


続けて水魔法。


さらに回避。


確実に成長していた。


だが。


限界がある。


レベル差。


経験差。


火力不足。


ジリジリと追い詰められる。


そして。


足を滑らせた。


「あっ!」


転ぶ。


雪の上へ倒れる。


杖も落ちた。


最悪だった。


フロストベアが目の前まで迫る。


巨大な影。


巨大な口。


鋭い牙。


終わった。


アリスは思わず目を閉じた。


その瞬間だった。


ドゴォォォォォォン!!


凄まじい轟音。


衝撃。


風圧。


地面が揺れた。


「・・・え?」


アリスはゆっくり目を開く。


フロストベアが吹き飛んでいた。


何十メートルも。


木をなぎ倒しながら。


雪煙が舞う。


白い世界。


その向こう。


誰かが立っていた。


一人の女性。


長い赤髪。


風に揺れる髪。


背中には巨大な銃。


その姿に。


アリスの瞳が大きくなる。


「え・・・?」


雪煙が少しずつ晴れていく。


見覚えがあった。


忘れるはずがない。


一年前より。


ずっと綺麗になった姿。


ずっと大人っぽくなった姿。


アリスは震える声で呟く。


「リ・・・」


「リリム・・・?」


赤髪の女性がゆっくり振り返った。

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