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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
修行編

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第79話 『修羅の迷路』

温泉村へ戻ったユーマ達。


疲れていた。


精神的に。


そして肉体的にも。


宿屋へ入るなり。


番台の老人が笑った。


「ほっほっほ。」


「帰ってくると思っとったぞい。」


ユーマが机を叩く。


「知ってたなら言えーーー!!!」


老人はキョトンとしていた。


「そりゃそうじゃ。」


「そうじゃじゃねぇよ!」


「何回攻撃したと思ってんだ!」


リリムも頷く。


「腕が痛い。」


ロキも頷いた。


「斧が泣いてる。」


老人は楽しそうだった。


「まぁまぁ。」


「何事も挑戦じゃ。」


「挑戦にも限度があるだろ!!」


ユーマが叫ぶ。


老人はお茶を飲んだ。


ズズッ。


そして。


何でもないことのように言う。


「あの壁はな。」


「レベル40以上じゃないと壊せん。」


沈黙。


ユーマ。


リリム。


ロキ。


全員固まった。


「・・・は?」


「40?」


「40?」


老人は頷く。


「うむ。」


「最低でもじゃ。」


「最低で!?」


ユーマが頭を抱える。


今の自分達は25。


つまり。


全然足りない。


「じゃあ爺さん。」


ユーマが立ち上がる。


「壊してくれよ。」


「大魔法使いなんだろ?」


老人は少し考えた。


そして。


首を横に振る。


「無理じゃ。」


「は?」


「魔法使いにレベルという概念はない。」


「すなわち。」


「ワシは壊せん。」


沈黙。


「なんじゃそりゃーーー!!!」


ユーマの絶叫が響いた。


村人達は慣れていた。


誰も驚かない。


老人は笑った。


「じゃが。」


ユーマが止まる。


「壊す方法なら知っとる。」


「え?」


リリムが身を乗り出した。


ロキも老人を見る。


老人はゆっくり言った。


「修行じゃ。」


沈黙。


ユーマが嫌そうな顔をする。


「うわ。」


「その顔はなんじゃ。」


「絶対キツいやつじゃん。」


「正解じゃ。」


老人は笑った。


そして。


真面目な顔になる。


「修羅の迷路。」


その言葉に。


セフィが反応した。


『え・・・?』


老人が見る。


「知っとるか。」


『伝説の魔法・・・。』


ユーマ達は顔を見合わせた。


老人は続ける。


「ワシが作る世界じゃ。」


「その中で修行してもらう。」


「修行専用の世界?」


「そうじゃ。」


老人は頷く。


「中には魔法で作られたモンスター。」


「修行場。」


「試練。」


「なんでもある。」


ユーマが少し興味を持つ。


「へぇ。」


老人はさらに続ける。


「なにより。」


「修羅の迷路の5年は。」


「こちらの世界の1年じゃ。」


沈黙。


「・・・え?」


「・・・は?」


「・・・ん?」


三人とも理解できなかった。


老人は当たり前のように言う。


「1年で5年分修行できる。」


ユーマが思わず呟いた。


「精神と時の部屋かよ。」


老人が反応する。


「なんじゃと?」


「え?」


「今なんと言った。」


「いや。」


「気にすんな。」


老人は首を傾げた。


「まぁよい。」


「とにかくじゃ。」


「ワシの魔法を使えば。」


「強くなる。」


少し間を置く。


「かもしれん。」


「かもしれん!?」


ユーマが突っ込む。


老人は肩をすくめた。


「絶対はない。」


「修行じゃからな。」


そして。


その顔から笑みが消えた。


「ただし。」


空気が変わる。


「危険もある。」


ユーマ達も真剣になる。


老人は静かに言った。


「修羅が認めるまで。」


「外へは出られん。」


「・・・。」


「レベルが足りなければ。」


「一生出られん。」


沈黙。


暖炉の火だけが揺れる。


「老いて死ぬ者もおる。」


ユーマ達は言葉を失った。


冗談ではなかった。


命を懸ける修行。


それが修羅の迷路。


老人はお茶を飲む。


ズズッ。


そして。


いつもの顔へ戻った。


「まぁ。」


「無理にとは言わん。」


「やりたい奴だけやればよい。」


静寂。


ユーマ達は顔を見合わせた。


そして。


誰からともなく。


笑った。


「面白そうじゃねぇか。」


ユーマが言う。


リリムが呆れる。


「馬鹿。」


だが。


口元は少し笑っていた。


ロキも頷く。


「あぁ。」


答えは決まっていた。


ユーマ達は。


ここで立ち止まるつもりなどなかった。

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