第78話 『氷壁』
翌朝。
ユーマ達は温泉村を出発していた。
「世話になったなー!」
ユーマが手を振る。
温泉施設の前。
番台には例の老人が座っていた。
「おぉ。」
「もう行くんか。」
「北へ行く。」
ユーマが答える。
老人はニヤリと笑った。
「そうかそうか。」
「若いのぉ。」
「なんだよ。」
「いや別に。」
老人は楽しそうだった。
だが。
それ以上は何も言わない。
ユーマ達は首を傾げながらも歩き出した。
雪は昨日より強い。
白い雪原がどこまでも続いていた。
「寒い。」
リリムが呟く。
「寒いな。」
ユーマも同意する。
「寒い。」
ロキまで同意した。
全員寒かった。
しばらく歩く。
さらに歩く。
そして。
吹雪の向こう側に。
何かが見えた。
「ん?」
ユーマが目を細める。
最初は山だと思った。
だが違う。
近付く。
さらに近付く。
そして。
全員が言葉を失った。
「なんだ・・・これ。」
目の前には巨大な壁があった。
氷で出来た壁。
ただし。
普通の壁ではない。
見上げても終わりが見えない。
左右も見えない。
果てしなく続いている。
まるで世界を分断する壁だった。
「街じゃないのか?」
ユーマが言う。
セフィが頷く。
『地図ではこの先に第三の街があるはずよ。』
「なら入口は?」
探す。
右。
左。
歩く。
歩く。
歩く。
ない。
門もない。
通路もない。
入口そのものが存在しなかった。
沈黙。
そして。
ユーマが言った。
「壊すか。」
「壊すか。」
リリムも頷く。
「壊すか。」
ロキも頷いた。
満場一致だった。
まずはユーマ。
「風切り!!」
シュンッ!!
風の刃が飛ぶ。
氷壁へ直撃。
だが。
傷一つ付かない。
「は?」
ユーマが固まる。
「真・風切り!!」
巨大な風の斬撃。
ドォォォン!!
吹雪が巻き上がる。
結果。
無傷。
「おかしいだろ!!」
さらに。
「爆風破ぁぁぁ!!」
巨大な風の渦。
氷壁へ激突。
轟音。
雪煙。
視界が晴れる。
無傷。
「なんでだよ!!」
次はリリムだった。
「魔炎鳥!!」
巨大な炎の鳥が飛ぶ。
ドォォォォォン!!
爆発。
熱風。
雪が溶ける。
だが。
氷壁だけは残っていた。
傷一つない。
「は?」
リリムが固まる。
「いやいやいや。」
「おかしいでしょ!!」
さらに。
AK1010を構える。
バンッ!!
バンッ!!
バンッ!!
バンッ!!
銃弾が氷壁へ叩き込まれる。
だが。
全て弾かれた。
「銃効けよ!!」
リリムが叫ぶ。
次はロキ。
静かに前へ出る。
斧を構える。
「トール。」
ドゴォォォォォン!!
雷を纏った一撃。
氷壁へ直撃。
吹雪が弾け飛ぶ。
だが。
無傷。
ロキの眉が動く。
続けて。
「グングニル。」
ズガァァァァァン!!
巨大な雷槍が落ちる。
地面が揺れる。
雪が吹き飛ぶ。
だが。
無傷。
ロキは無言だった。
そして。
斧を持ち上げる。
ゴン。
殴る。
ゴン。
もう一回。
ゴン。
さらに殴る。
ユーマが叫んだ。
「原始的だな!!」
「うるさい。」
ゴン。
ゴン。
ゴン。
無傷。
「嘘だろ・・・。」
ユーマが呟く。
ここまで来ると意地だった。
「もう一回だ!!」
「爆風破!!」
ドォォォン!!
無傷。
「魔炎鳥!!」
ドォォォン!!
無傷。
「トール!!」
ドゴォォォン!!
無傷。
何度も。
何度も。
何度も。
攻撃する。
吹雪が舞う。
雪が飛ぶ。
轟音が響く。
だが。
氷壁だけは。
傷一つ付かない。
やがて。
全員息を切らしていた。
「はぁ・・・。」
「はぁ・・・。」
「・・・。」
沈黙。
目の前には。
相変わらず巨大な氷壁。
最初と何も変わっていない。
ユーマが言った。
「・・・。」
リリムが言った。
「・・・。」
ロキも言った。
「・・・。」
そして。
ユーマが呟く。
「帰るか。」
リリムが頷く。
「帰るか。」
ロキも頷いた。
「あぁ。」
完全敗北だった。
セフィが氷壁を見る。
『入れない。』
珍しく真面目な声だった。
『今の私達じゃ。』
吹雪が強くなる。
氷壁は何も語らない。
だが。
圧倒的だった。
ユーマ達は振り返る。
そして。
温泉村への道を歩き始めた。




