第76話 『ゆったり温泉』
前回――
ローゼンベルクを旅立ったユーマ達。
道中のモンスター達を難なく倒しながら北へ進みます。
そして喜の番人との戦いによって、全員のレベルが25になっていることが判明!
しかし次第に寒さが厳しくなり、防寒着を求めて温泉村へ向かうことに。
それでは第76話をお楽しみください!
雪の降る道を歩き続けて数時間。
ようやくユーマ達は村へ辿り着いた。
「おぉ・・・。」
ユーマが思わず声を漏らす。
村のあちこちから白い湯気が上がっていた。
木造の家々。
雪景色。
そして温かな空気。
温泉村だった。
「生き返る・・・。」
「まだ死んでない。」
リリムが冷静に突っ込む。
「いやでも寒いだろ。」
「寒い。」
「寒いな。」
珍しくロキも同意した。
ユーマは驚く。
「お前でも寒いんだな。」
「俺を何だと思ってる。」
「熊。」
「殴るぞ。」
久しぶりに平和な会話だった。
三人は村へ入る。
まずは防寒着を買った。
厚手のコート。
毛皮の手袋。
防寒靴。
旅の資金は痛いが凍死よりはマシだ。
「暖かい・・・。」
ユーマは感動していた。
「文明最高。」
「今更か。」
リリムは呆れる。
ロキも新しい防寒着を着ていた。
だが。
見た目はほぼ変わらない。
「お前なんでそんな似合うんだよ。」
「知らん。」
そして。
買い物を終えた三人は村人に聞いた温泉へ向かった。
大きな温泉施設。
入り口には男湯と女湯の暖簾が掛かっている。
その前で。
リリムが立ち止まった。
そして。
ゆっくり振り返る。
嫌な予感がした。
「言っとくけど。」
「なんだよ。」
リリムは指を突き付けた。
「覗いたら燃やすからな。」
沈黙。
ユーマ。
ロキ。
顔を見合わせる。
そして。
「誰が覗くかよ!!」
ユーマが叫んだ。
「テメェのボディになんか興味ねぇ!!」
リリムの眉がピクリと動く。
「は?」
だがユーマは気付かない。
「どうせならもっとこう・・・。」
「お姉さんのナイスバディとかだろ!!」
ロキが静かに距離を取る。
危険を察知した。
リリムは無言。
笑顔。
怖い笑顔だった。
「へぇ。」
ユーマの背中に嫌な汗が流れる。
「いや待て。」
「今のは違くて――」
ボッ。
小さな炎が現れる。
「リリムさん?」
ボボッ。
炎が増える。
「ちょっと傷付いた。」
低い声だった。
「言葉では言えないけど。」
ユーマが後退る。
「待て。」
「だから――」
ゴォッ!!
炎が飛んだ。
「ぎゃあああああ!!」
ユーマが走る。
リリムが追う。
「待てコラ!!」
「待たねぇよ!!」
ロキは呆れたように二人を見る。
「馬鹿だな。」
そして。
何事もなかったように男湯へ向かった。
その先。
番台には一人の老人が座っていた。
白い髭。
小さな身体。
眠そうな目。
どこにでもいそうな老人だった。
「お?」
老人がロキを見る。
「旅人かの。」
「そうだ。」
すると老人はニヤリと笑った。
「温泉に入る前に。」
ロキが嫌な顔をする。
「一つ。」
さらに嫌な予感がする。
「わしの伝説話でも聞いていくか?」
その瞬間。
ユーマが炎から逃げながら飛び込んできた。
「いやいいです。」
即答だった。
「即答!?」
老人が立ち上がる。
「最近の若者は礼儀がなっとらん!」
「わしは昔な!」
「ドラゴンを素手で――」
じゃっぽーん。
ユーマが男湯へ飛び込んだ。
「ふぅぅぅぅぅ・・・。」
天国だった。
ロキも無言で入る。
じゃっぽーん。
「生き返るな。」
「だな。」
老人が入口で叫ぶ。
「おぬしらぁぁぁ!!」
「最後まで聞けぇぇぇ!!」
ユーマは聞いていなかった。
聞こえてはいた。
だが聞いていなかった。
温泉の勝ちだった。
一方その頃。
女湯。
じゃっぽーん。
「はぁ・・・。」
リリムは肩まで浸かる。
温かい。
気持ちいい。
旅の疲れが溶けていく。
「悪くない。」
そう呟いた。
首元を見る。
ナージャから受け継いだペンダント。
今も首に掛かっている。
ふと。
ローゼンベルクでの出来事を思い出した。
ナディア。
ジャック。
ナージャ。
喜の番人。
「・・・。」
少しだけ寂しくなる。
だが。
すぐに首を振った。
終わったことだ。
今は前へ進むだけ。
そして。
再び温泉に沈んだ。
その頃。
男湯。
「はぁぁぁ・・・。」
ユーマは完全に溶けていた。
ロキも珍しくリラックスしている。
「なぁ。」
ユーマが話しかける。
「なんだ。」
「お前そんな顔できたんだな。」
ロキが眉をひそめる。
「どういう意味だ。」
「もっと怖い顔しかできないのかと。」
「失礼な奴だな。」
二人は笑った。
すると。
ガラッ。
老人が入ってきた。
「聞く気になったか?」
「ならない。」
即答。
「なんでじゃ!!」
老人が叫ぶ。
「わしは昔な!」
「聞け。」
「巨大なドラゴンをだな!」
「聞け。」
「魔法で――」
ユーマはお湯に沈んだ。
ぶくぶくぶく。
老人が絶叫する。
「聞けぇぇぇぇぇ!!」
村中に響いた。
その日の夜。
宿で夕食を食べていたユーマ達。
すると近くの席の村人が笑った。
「また始まったな。」
「何がだ?」
ユーマが聞く。
村人は苦笑した。
「番台の爺さんだよ。」
「あぁ。」
納得した。
「あの人昔からああなんだ。」
「自分を大魔法使いだって言ってな。」
ユーマが吹き出す。
「やっぱり自称じゃねぇか。」
「ただのホラ吹きだろ。」
村人達も笑う。
だが。
セフィだけが固まっていた。
『え・・・。』
ユーマが振り返る。
「どうした?」
『いや・・・。』
『多分だけど。』
セフィは少し困った顔をした。
『本当よ。』
沈黙。
ユーマ。
リリム。
ロキ。
全員が固まった。
「・・・え?」
第76話を読んでいただきありがとうございました!
今回は完全に休憩回でした(笑)
ローゼンベルク編の激闘から一転。
温泉!
防寒着!
そしてリリムの火炎制裁!
平和な回もたまには必要ですね。




