第7話 『死ぬほど楽な修行』
前回の投票結果です!
① 死ぬほど過酷な剣術修行
② 死ぬほど楽な森の修行
投票の結果、
【② 死ぬほど楽な森の修行】
に決定しました!
楽な修行を選んだユーマ。
しかしガルドが用意した「楽」は、どうやら普通の人間が思う楽ではないようです――。
それでは第7話をお楽しみください。
「じゃあ始めるか。」
ガルドが立ち止まった。
気付けば村の外れまで来ている。
目の前には深い森。
昨日ゴブリンが現れた場所よりもさらに奥だ。
「で、何するんだ?」
俺は辺りを見回す。
訓練場らしきものは見当たらない。
木。
草。
森。
以上。
「簡単だ。」
ガルドは笑った。
嫌な予感しかしない。
「ここで一晩過ごせ。」
「へ?」
「縄で縛られてな。」
「待て。」
「ん?」
「待て。」
◇
十分後。
俺は木に縛り付けられていた。
「なんでだよ!!」
「楽だろ?」
ガルドが真顔で言う。
「剣振らなくていいぞ。」
「そういう問題じゃねぇ!」
アリスが笑いを堪えている。
セフィはもう隠そうともしていない。
「ちなみに。」
ガルドが森の奥を見る。
「この辺りはゴブリンが出る。」
「え?」
「結構出る。」
「え?」
「たまに群れもいる。」
「えぇ!?」
その時だった。
ガサガサ。
茂みが揺れる。
何かがいる。
俺は反射的に身構えた。
現れたのは三匹のゴブリンだった。
「出たぁ!!」
俺は叫ぶ。
しかしガルドは動かない。
ゴブリンたちは棍棒を構えて近づいてくる。
まずい。
普通にまずい。
ガルドがため息をついた。
「見てろ。」
次の瞬間だった。
姿が消えた。
そう見えた。
一歩。
それだけだった。
ザッ。
ゴブリンの首が飛ぶ。
もう一歩。
二匹目が倒れる。
三匹目が逃げ出そうとした瞬間。
ガルドの剣が振られた。
終了。
三秒もかかっていない。
俺は口を開けたまま固まった。
「え?」
「レベル3程度だ。」
ガルドが剣をしまう。
「雑魚だな。」
いやいやいや。
昨日俺をボコボコにしたんだけど?
セフィが肩の上で説明する。
「ちなみにガルドさん。」
「うん。」
「レベル42です。」
「先に言えよ!!」
俺は全力でツッコんだ。
ガルドは何事もなかったように歩き出す。
「じゃあ明日の朝な。」
「待て待て待て!」
「なんだ。」
「本当に置いていくの!?」
「修行だからな。」
「死ぬぞ!?」
「死なない。」
「根拠は!?」
「死んだら回収してやる。」
「根拠になってねぇ!」
アリスが近付いてくる。
少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「頑張って。」
「助けて。」
「無理。」
即答だった。
「なんで!?」
「ガルドさんが決めたことだから。」
「裏切り者!」
「頑張ってね。」
アリスは笑った。
その笑顔が少しだけ憎かった。
そして。
本当に全員帰った。
残されたのは俺だけ。
縄で縛られたまま。
森のど真ん中に。
「嘘だろ……。」
◇
昼。
まだ余裕だった。
風が気持ちいい。
鳥の鳴き声も聞こえる。
なんだ。
意外と楽じゃないか。
そう思った。
夕方。
少し後悔し始めた。
森が静かになった。
鳥の声が減る。
代わりに聞いたことのない鳴き声が増える。
なんか怖い。
普通に怖い。
◇
夜。
地獄だった。
真っ暗。
何も見えない。
本当に何も見えない。
木々の隙間から月明かりが少し見えるだけ。
風が吹く。
葉が揺れる。
何かが動く。
音がする。
でも見えない。
ガサッ。
「ひっ!」
音がする。
ガサガサ。
「セフィ?」
「はい。」
「いるよな?」
「いますよ。」
「帰るなよ?」
「帰りません。」
少し安心した。
遠くで遠吠えが聞こえた。
「今の何?」
「狼です。」
「魔物?」
「たぶん。」
「たぶん!?」
「大丈夫です。」
「本当か!?」
「ここまでは来ません。」
「本当か!?」
「たぶん。」
「お前その言葉好きだな!」
夜は長かった。
眠れない。
眠ろうとすると音がする。
音がすると目が覚める。
それの繰り返しだった。
何度も朝が来てほしいと思った。
何度も家に帰りたいと思った。
何度も日本が恋しくなった。
◇
そして。
ようやく朝が来た。
「おはよう。」
ガルドだった。
俺は泣きそうになった。
「遅ぇよ!」
「まだ一日だぞ。」
「一生に感じたわ!」
ガルドは縄を切る。
俺はその場に座り込んだ。
足が震えている。
体中が痛い。
最悪だ。
本当に最悪だ。
「どうだった?」
ガルドが聞く。
「地獄だった。」
「そうか。」
「二度とやりたくない。」
「そうか。」
「意味あったのか?」
ガルドは少しだけ笑った。
「生きてるだろ。」
「え?」
「それで十分だ。」
俺は首を傾げる。
ガルドは続けた。
「剣術は後から覚えられる。」
「うん。」
「魔法も覚えられる。」
「うん。」
「だが死んだら終わりだ。」
ガルドは森を見る。
「まず覚えろ。」
「?」
「生き残ることを。」
その言葉は妙に胸に響いた。
確かにそうだ。
強くなる前に。
戦う前に。
生き残らなきゃ意味がない。
ふとステータスを開く。
名前:ユーマ・カミサキ
レベル:2
「え?」
思わず声が漏れた。
「なんで上がってる?」
ガルドは笑った。
「経験したからだ。」
「戦ってないぞ?」
「生きることも経験だ。」
俺は少しだけ嬉しくなった。
たった1レベル。
それでも。
確実に前へ進んでいる。
ガルドが訓練場へ向かって歩き出す。
「じゃあ次だな。」
「次?」
「ああ。」
振り返る。
その顔は少しだけ楽しそうだった。
「次は剣術だ。」
⸻
【投票】
剣術修行で使う最初の武器は?
① 棍棒
② 枝
③ 竹刀
あなたならどれを選びますか?
第7話を読んでいただきありがとうございます!
ユーマはなんとか森での一夜を生き延び、レベル2になりました!
次回からいよいよ本格的な剣術修行が始まります。
① 棍棒
② 枝
③ 竹刀
ぜひコメントで投票してください!




