第66話 『必ず取り返す』
喜の番人との戦いに敗れたユーマ達。
全力を尽くしたものの、レベル30という圧倒的な壁は高く、リリムは連れ去られてしまいました。
傷だらけとなったユーマ達。
果たして反撃の手段はあるのでしょうか。
それでは第66話をお楽しみください!
喜の番人との戦いから数時間後。
ユーマ達は男街へ連れて来られていた。
暴動を起こした罪。
王城への侵入。
そして喜の番人への反逆。
本来なら即処刑。
だが。
処刑の日程が決まるまでは労働を命じられた。
当然。
男街から出ることも許されない。
ユーマは木箱の上に腰を下ろした。
身体中が痛い。
喜の番人との戦いで受けた傷は想像以上だった。
ロキも壁にもたれて座っている。
ナディアは少し離れた場所で俯いていた。
そんな時だった。
「ユーマ!」
聞き慣れた声が響く。
振り向く。
ジャックだった。
ユーマの姿を見るなり駆け寄ってくる。
「大丈夫か!?」
「まぁな。」
ユーマは苦笑した。
「見ての通りボロボロだけど。」
ジャックは少し安心したように笑う。
だが。
次の瞬間。
表情が変わった。
「エマは!?」
真剣な顔。
「エマは見つかったのか!?」
ユーマは黙った。
そして。
首を横に振る。
ジャックの顔から血の気が引いた。
「そんな・・・。」
力なく膝をつく。
「エマ・・・。」
その姿を見て。
ユーマも胸が痛んだ。
リリムを守れなかった。
エマも見つけられなかった。
何もできなかった。
その時だった。
ジャックの視線が動く。
離れた場所。
ナディアを見る。
そして。
顔が歪んだ。
「お前・・・!」
立ち上がる。
怒りのまま歩き出す。
「お前らのせいだろ!!」
男街の男達も気付く。
「女騎士だ!」
「王様の側近じゃねぇか!」
「こいつか!」
一気に人が集まる。
ナディアは顔を上げた。
ジャックが叫ぶ。
「エマはどこだ!!」
「返せよ!!」
「お前らが連れて行ったんだろ!!」
周囲の男達も声を上げる。
「俺の妻を返せ!」
「娘を返せ!」
「幼馴染を返せ!」
「姉ちゃんを返せ!」
怒号が飛び交う。
ナディアは何も言わない。
ただ。
ゆっくり頭を下げた。
「・・・すまない。」
男達が黙る。
ナディアはさらに頭を下げた。
「今まで悪かった。」
震える声。
「私は女性達を守っているつもりだった。」
「王様が正しいと思っていた。」
「それが正義だと信じていた。」
顔を上げない。
ずっと。
頭を下げたまま。
「でも違った。」
「私は間違っていた。」
静かな声だった。
「だから誓う。」
「もう男だからという理由で差別しない。」
「もう二度と。」
「同じ過ちは繰り返さない。」
だが。
男達の怒りは収まらなかった。
「だから何だ!」
「謝って済む話か!?」
「俺の妻は帰ってくるのか!?」
「娘は!?」
「幼馴染は!?」
怒号が飛ぶ。
ナディアは動かない。
ただ。
頭を下げ続けた。
「・・・すまない。」
「ごめんなさい。」
「本当に・・・。」
その姿を見ていたユーマが立ち上がる。
「もうその辺にしとけ。」
男達が振り返る。
「何だと?」
ユーマはナディアを見る。
そして男達を見る。
「気持ちは分かる。」
「俺だってリリムを連れて行かれた。」
「腹立つし。」
「ぶん殴りたい気持ちも分かる。」
男達は黙る。
ユーマは続けた。
「でもな。」
「ナディアも騙されてた被害者だ。」
「今ここで責めたところで。」
「誰も帰ってこねぇぞ。」
静寂。
誰も反論できない。
だが。
一人の男が叫んだ。
「じゃあどうしろって言うんだよ!!」
その声に。
皆の感情が乗る。
「妻は帰ってこねぇ!」
「娘もだ!」
「エマも捕まったままだ!」
「どうしろって言うんだ!!」
ユーマは黙っていた。
そして。
静かに口を開く。
「取り返す。」
男達が止まる。
「・・・あ?」
ユーマは拳を握った。
「エマも。」
「リリムも。」
「捕まってる女達も。」
「全員だ。」
ジャックが顔を上げる。
ユーマは続けた。
「文句言い合ってる場合じゃねぇ。」
「全員で力を合わせるしかない。」
「それしか方法はねぇ。」
男達は黙る。
ユーマは皆を見る。
一人ずつ。
真っ直ぐに。
「諦めるか?」
誰も答えない。
「俺は諦めねぇ。」
拳を強く握る。
「絶対取り返す。」
ジャックが立ち上がった。
「・・・俺もだ。」
「エマを助ける。」
ロキも笑う。
「仕方ねぇ。」
「最後まで付き合ってやる。」
ナディアも顔を上げた。
目にはまだ涙が残っている。
それでも。
迷いはなかった。
「私も戦う。」
男街に静寂が訪れる。
誰も何も言わない。
だが。
先程までの空気とは違っていた。
ユーマはゆっくりと拳を前に突き出した。
「取り返すぞ。」
その言葉だけが。
男街に静かに響いた。
第66話を読んでいただきありがとうございました!
今回は戦いではなく、敗北の後のお話でした。
特にナディアは今まで信じてきたものを否定し、自らの過ちを認めることになります。
簡単に許されることではありません。
それでも前へ進まなければならない。
そんな回でした。
そしてユーマ達もようやく反撃のために動き始めます。
次回からは作戦会議。
リリム奪還へ向けて物語が動き出します。




