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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
女と男の街 ローゼンベルク編

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第65話 『圧倒的な力』

前回――


喜の番人とついに対峙したユーマ達。


レベル30の番人に対し、ユーマ、ロキ、ナディアはリリム奪還のため剣を向けます。


果たしてリリムを取り戻すことはできるのか。


それでは第65話をお楽しみください!

「さぁ。」


「遊びの時間だ。」


月明かりの庭園。


無数の触手が地面を突き破った。


一本。


二本。


十本。


二十本。


まるで生き物のように蠢く。


その中心。


喜の番人はリリムを抱いたまま微笑んでいた。


ユーマは剣を構える。


「リリムを返せ。」


「嫌だよ。」


即答だった。


「この子は僕の妻だからね。」


ユーマの額に青筋が浮かぶ。


「ふざけんな。」


「ふざけてないよ。」


喜の番人は本気だった。


それが余計に腹立たしい。


『ユーマ!』


ソフィが叫ぶ。


『来るわよ!』


次の瞬間。


触手が襲い掛かった。


ドゴォッ!!


ユーマは横へ飛ぶ。


石畳が砕ける。


ロキも斧で弾き飛ばす。


ナディアは剣で切り裂いた。


だが。


数が多すぎる。


「邪魔だぁ!!」


ユーマは剣を振り上げる。


全身の魔力を込めた。


風が集まる。


唸る。


そして。


「真・風斬りぃぃぃ!!」


巨大な風の刃が放たれた。


庭園を横断する。


触手をまとめて切断。


一本。


十本。


二十本。


吹き飛ぶ。


そして。


リリムを囲っていた檻に穴が開いた。


ユーマの顔が上がる。


「見えた!」


その隙を逃さない。


ナディアが手を突き出した。


「風の手!!」


巨大な風の腕が現れる。


一直線。


眠るリリムへ伸びる。


あと少し。


あと少しで届く。


だが。


喜の番人が初めて手を動かした。


パチン。


指を鳴らす。


触手が地面から噴き出した。


風の手を飲み込む。


粉々に砕く。


ナディアの顔が変わった。


「なっ・・・!」


「危なかった。」


喜の番人は笑った。


「本当に。」


その時だった。


ロキが飛び出す。


「だったらこれだ!!」


斧を大きく振りかぶる。


雷が集まる。


空気が震える。


「トール!!」


轟音。


巨大な一撃が喜の番人へ叩き込まれた。


ドォォォン!!


庭園が揺れる。


石畳が砕ける。


土煙が舞う。


ユーマが叫ぶ。


「やったか!?」


煙の向こう。


静かな声が聞こえた。


「驚いた。」


土煙が晴れる。


そこには。


立ったままの喜の番人。


触手が壁となり。


攻撃を受け止めていた。


服は少し破れている。


だが。


それだけだった。


ロキが顔を引きつらせる。


「おいおい・・・。」


喜の番人は少しだけ感心したように言う。


「レベル15でそこまで使えるのか。」


「大したものだ。」


「褒めてんじゃねぇ!!」


ユーマが再び突っ込む。


ロキも走る。


ナディアも続く。


三方向から同時攻撃。


剣。


斧。


剣。


連撃。


連撃。


連撃。


だが。


届かない。


喜の番人は片手で受ける。


触手で弾く。


避ける。


全て見えている。


レベル差。


それだけだった。


ユーマは歯を食いしばる。


「何でだ・・・!」


喜の番人は優しく答えた。


「レベルだよ。」


残酷なほど単純だった。


「レベル15。」


「レベル15。」


「レベル20。」


喜の番人は微笑む。


「良いチームだ。」


「でも。」


「私には届かない。」


次の瞬間だった。


触手が爆発的に増殖する。


庭園全体を埋め尽くした。


「しまっ!」


ユーマが叫ぶ。


遅い。


触手が身体を打つ。


吹き飛ぶ。


ロキも。


ナディアも。


まとめて。


ドォォン!!


三人が地面を転がった。


立ち上がれない。


身体が言うことを聞かない。


喜の番人は静かにリリムを抱き直す。


まるで花嫁を抱くように。


「待て・・・。」


ユーマが絞り出す。


「待てよ・・・。」


喜の番人は振り返らない。


「結婚式の日取りを考えなくては。」


「やめろ・・・。」


「忙しくなりそうだ。」


「待てぇぇぇぇぇ!!」


ユーマの叫びが響く。


だが。


喜の番人は止まらない。


触手が渦を巻く。


巨大な繭となる。


リリムと喜の番人を包み込む。


光が溢れる。


そして。


消えた。


庭園に静寂が戻る。


ユーマは地面を殴った。


一度。


二度。


三度。


拳から血が流れる。


それでも止めない。


「くそ・・・。」


「くそぉ・・・。」


また守れなかった。


また届かなかった。


ロキが壁にもたれながら笑う。


「落ち込むのは後だ。」


ナディアもゆっくり立ち上がる。


傷だらけだった。


それでも目は死んでいない。


「まだ終わっていない。」


ユーマは拳を握る。


そうだ。


終わっていない。


絶対に終わらせない。


リリムを取り戻す。


そのためなら。


何だってやる。

第65話を読んでいただきありがとうございました!


ローゼンベルク編初のボス戦。


結果はユーマ達の敗北でした。


リリムも連れ去られ、状況は最悪です。


ですが、まだ終わりではありません。


反撃の準備が始まります。


それではまた次回!

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