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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
女と男の街 ローゼンベルク編

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第64話 『遊びの時間』

前回――


喜の番人の過去が終わりを迎えました。


ナージャとの約束。


そして約束が果たされなかったことによる絶望。


男達への憎しみ。


虐殺。


喜の番人の誕生。


全てを語り終えた喜の番人は、一つの結論へ辿り着きます。


「今度こそ失わない。」


それでは第64話をお楽しみください!

「ユーマァァァ!!」


リリムの叫び声が夜の王城に響いた。


その声を聞いた瞬間だった。


ナディアが顔を上げる。


「今の声・・・!」


ユーマは既に走り出していた。


「リリムだ!!」


「おい待て!」


ロキが叫ぶ。


だが遅い。


ユーマは風のように廊下を駆け抜けていく。


「速すぎるだろあいつ!」


ロキも走る。


ナディアも後を追った。


「庭園だ!」


三人は王城の庭園へ飛び込んだ。


そして。


その光景を見て足を止める。


月明かりの下。


喜の番人がいた。


その腕の中には。


気を失ったリリム。


まるで大事な宝物を抱えるように。


静かに抱き上げていた。


ユーマの顔から血の気が消える。


「リリム・・・!」


喜の番人が振り返った。


そして。


不思議そうな顔をする。


「おや?」


優しく微笑む。


「君はリリムの友達かな?」


ユーマは剣を抜いた。


「てめぇ。」


喜の番人は首を傾げる。


「どうやってここまで来たんだい?」


「そんなことどうだっていい!」


ユーマは怒鳴った。


「俺の仲間を返せ!!」


庭園に声が響く。


だが。


喜の番人は困ったように笑った。


「返す?」


「そうだよ!」


「この子は君達の仲間じゃないよ。」


喜の番人は眠るリリムを見下ろす。


そして。


優しく髪を撫でた。


「僕の妻だからね。」


ユーマの額に青筋が浮かぶ。


「・・・殺す。」


「ん?」


「お前だけは絶対にぶっ飛ばす!!」


ユーマは剣を構えた。


その時。


ソフィが叫ぶ。


『気を付けてユーマ!』


『喜の番人!』


『レベル30よ!!』


空気が変わった。


ユーマの目が細くなる。


喜の番人は少し驚く。


「へぇ。」


「妖精が見えるんだ。」


ユーマは笑う。


「だからどうした。」


喜の番人は肩をすくめた。


「たかがレベル15の子供に。」


「何ができるかな?」


その瞬間だった。


地面が蠢く。


ドゴォッ!!


土を突き破り。


無数の触手が飛び出した。


「なっ!?」


ユーマへ襲い掛かる。


速い。


避けきれない。


触手が腕を掴む。


足を掴む。


身体を拘束する。


「ぐっ・・・!」


喜の番人は笑った。


「少し遊んであげよう。」


だが。


次の瞬間。


ザン!!


触手が切断された。


ユーマの身体が解放される。


「一人で突っ込むな馬鹿。」


ロキだった。


さらに。


ザシュ!!


別の触手も切り裂かれる。


ナディアだった。


「同感だ。」


ユーマは笑う。


「悪ぃ。」


喜の番人は目を丸くした。


「ん?」


その視線がナディアへ向く。


そして。


初めて表情が変わった。


「ナディア・・・?」


驚いている。


本当に驚いている。


「何故君がそいつらと一緒にいるんだ?」


ナディアは剣を構える。


「・・・。」


喜の番人は優しく手を差し出した。


「さぁ。」


「こっちへおいで。」


「君は私の大切な部下だ。」


地面が蠢く。


触手が伸びる。


ナディアへ。


だが。


ナディアは剣で叩き斬った。


「王様。」


静かな声だった。


「悲しいようです。」


喜の番人の笑顔が消える。


「地下牢を見ました。」


沈黙。


「私はもうあなたを慕えない。」


「・・・。」


「私は彼女達を守る。」


月明かりがナディアを照らす。


真っ直ぐだった。


迷いはない。


喜の番人は目を閉じる。


そして。


静かに言った。


「守る?」


次の瞬間。


感情が爆発した。


「守っているのは私だ!!」


庭園が震える。


空気が揺れる。


圧倒的な威圧感。


ユーマ達が息を飲む。


「私がいなければ!」


「皆不幸になる!!」


「それを見てきたのは君自身だろう!?」


ナディアは唇を噛む。


喜の番人は続ける。


「飢え。」


「争い。」


「暴力。」


「男達の欲望。」


「私は全部見てきた!」


「だから守っているんだ!」


ユーマが前に出た。


「じゃあ何だよ!!」


喜の番人が振り向く。


ユーマは叫んだ。


「油抜きとかいう気持ち悪いことさせて!」


「女達を吸収してたじゃねぇか!!」


「あぁ。」


喜の番人は納得したように頷く。


「あれかい。」


あまりにも自然だった。


まるで食事の話でもするように。


「僕と永遠に一緒になるための儀式だよ。」


ユーマ達は固まる。


喜の番人は続ける。


「油分が多いと吸収がうまくいかなくてね。」


「胸焼けしちゃうんだ。」


「ほら。」


「僕こう見えて体弱いし。」


沈黙。


ユーマの顔が引きつる。


「・・・は?」


喜の番人は本気だった。


冗談ではない。


本気で言っている。


それが分かるから余計に怖い。


ユーマは剣を握り締めた。


「ふざけんな。」


地面を蹴る。


一直線。


喜の番人へ。


「ふざけんなぁぁぁぁ!!」


剣が振り下ろされる。


だが。


喜の番人は片手で止めた。


あっさりと。


レベル差。


それだけだった。


喜の番人は不思議そうに言う。


「何故怒るんだい?」


ユーマの顔が歪む。


喜の番人は笑った。


「吸収すれば。」


「永遠に一緒だ。」


「皆もそれを望んでいる。」


「これは僕なりの愛だよ。」


ユーマは歯を食いしばる。


理解できない。


絶対に理解したくない。


喜の番人はリリムを抱き直した。


そして。


空いている手をゆっくり上げる。


地面が震える。


庭園全体が揺れる。


無数の触手が土を突き破った。


一本。


二本。


十本。


二十本。


数え切れない。


喜の番人は微笑む。


「さぁ。」


「遊びの時間だ。」


月明かりの下。


レベル30の王が笑った。

第64話を読んでいただきありがとうございました!


今回はローゼンベルク編のボス戦開幕回でした。


ついにユーマ達と喜の番人が正面から対峙します。


レベル15のユーマ。


レベル15のロキ。


レベル20のナディア。


対するはレベル30の喜の番人。


数字だけを見ると絶望的な差があります。


果たしてユーマ達はリリムを取り戻せるのか。


それではまた次回!

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