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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
女と男の街 ローゼンベルク編

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第57話 『二人のプリンセス』

前回――


ユーマ達は地下牢で喜の番人の真実を知りました。


さらにジャックの恋人エマとも再会しますが、エマは既に王へ心を奪われていました。


そして地下牢を出たユーマ達の前に現れたナディア。


王への忠誠と、自らの正義の間で揺れる彼女は――。


それでは第57話をお楽しみください!

地下牢を後にした後。


ナディアは長い沈黙の末、口を開いた。


「・・・一日だ。」


ユーマが眉をひそめる。


「何?」


「一日だけ時間をくれ。」


ナディアは拳を握る。


「私自身の目で確かめる。」


「私自身の頭で考える。」


「そして答えを出す。」


ユーマはしばらく睨んでいた。


だが。


リリムが静かに言う。


「待ってやりな。」


ナディアはリリムを見る。


リリムも真っ直ぐ見返した。


「信じてたんだろ。」


「だったら簡単には切り替えられねぇ。」


ナディアは何も言わなかった。


やがて。


小さく頷く。


「交流会はまだ終わっていない。」


「今夜は夜のパーティー。」


「明日も二日目がある。」


「今騒げば全員捕まる。」


ユーマは舌打ちする。


気に入らない。


だが。


言っていることは正しい。


ナディアは続けた。


「リリム。」


「アリス。」


「お前達は部屋へ戻れ。」


二人は頷く。


「ユーマ。」


「ロキ。」


「お前達は私が匿う。」


ユーマが笑った。


「信用していいのか?」


ナディアは即答した。


「していない。」


「逃げたら斬る。」


「だろうな。」




その夜。


リリムの部屋。


交流会の夜会が始まり。


城の外は賑やかだった。


だが二人は外へ出られない。


リリムは椅子へ座っていた。


アリスは窓際。


しばらく沈黙。


先に口を開いたのはリリムだった。


「しかし驚いたな。」


アリスが振り返る。


「何が?」


「ユーマにこんか綺麗な知り合いがいたなんて。」


アリスは少し固まった。


「綺麗?」


「綺麗だろ。」


リリムは不思議そうだった。


「自覚ねぇのか?」


アリスは目を逸らす。


「そんなことないよ。」


「あるある。」


リリムは笑う。


「ユーマにはもったいねぇ。」


アリスも少し笑った。


「それは同意。」


二人は同時に吹き出した。


少し空気が和らぐ。


リリムは椅子にもたれた。


「あいつ無茶するからなぁ。」


アリスは頷く。


「昔からだよ。」


「そうなのか?」


「うん。」


リリムは笑う。


「盗賊と戦った時もそうだった。」


アリスが首を傾げる。


「盗賊?」


「ああ。」


「一人で突っ込んで死にかけた。」


アリスは苦笑した。


「それはユーマっぽい。」


リリムはさらに続ける。


「ラグナシアで番人と戦った時も。」


アリスは固まる。


「番人と!?」


「ん?」


「いや。」


「続けて。」


リリムは気付かない。


「番人相手に向かって行くんだぞ?」


「馬鹿だろ。」


「でも止まらねぇ。」


「結局最後まで前に出てた。」


アリスは静かに聞いていた。


知らない話だった。


リリムは止まらない。


「あとはゴーレムに囲まれた時とか。」


「化け狸を倒した時とか。」


「ソウルイーターの群れの時とか。」


次々に出てくる。


アリスの知らない話。


アリスの知らないユーマ。


リリムは楽しそうに話している。


悪気なんて一つもない。


だから余計に刺さった。


「でもな。」


リリムは少し笑った。


「あいつ変わったよ。」


アリスが顔を上げる。


「そうかな。」


「強くなった。」


即答だった。


「頼れるし。」


「昔は知らねぇけど。」


「今のユーマはすげぇぞ。」


アリスは何も言えなかった。


窓の外では花火のような光が見える。


夜会は盛り上がっているのだろう。


だが。


アリスの心は妙に静かだった。


私はユーマのことを知っていると思っていた。


ずっとそう思っていた。


小さい頃から一緒だった。


泣き虫だった頃も。


弱かった頃も。


全部知っている。


そう思っていた。


だけど。


今日聞いた話は。


ほとんど知らないことばかりだった。


盗賊。


番人。


洞窟。


ゴーレム。


知らない。


何も知らない。


今のユーマを知っているのは。


私じゃなくて。


リリムの方だった。


アリスは小さく笑う。


誰にも聞こえないくらい小さく。


「何だろうね・・・。」


リリムが首を傾げる。


「ん?」


「ううん。」


アリスは首を振った。


「何でもない。」


そう言ったが。


胸の奥に残った小さなモヤモヤは。


消えてくれなかった。



第57話を読んでいただきありがとうございました!


今回は少し戦いや陰謀から離れた息抜き回でした。


ただ、物語としては意外と大事な回でもあります。


アリスが知っているユーマ。


リリムが知っているユーマ。


同じ人物なのに、それぞれが見てきたユーマは全く違うものでした。


そしてナディアは一日の猶予を求めます。


王への忠誠か。


自分の正義か。


その答えはまだ出ていません。


交流会もいよいよ二日目へ。


ローゼンベルク編は少しずつ後半戦へ入っていきます。


それではまた次回!

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