第56話 『忠誠と正義』
前回――
王城の地下で、ついにジャックの恋人エマを発見したユーマ達。
しかしエマは喜の番人に心を奪われ、ジャックのことさえ忘れかけていました。
さらにリンリンとランランは武器庫探しのため別行動へ。
地下を後にしたユーマ達でしたが、そこで待っていたのは王城の護衛隊長ナディア。
ついに正面衝突の時が訪れます。
それでは第56話をお楽しみください!
「貴様ら。」
冷たい声が廊下に響く。
ユーマ達の身体が止まった。
振り返る。
そこにはナディアが立っていた。
腕を組み。
鋭い目でこちらを睨んでいる。
ナディアはゆっくり歩み寄った。
「最初から怪しいと思っていた。」
「不自然な服装。」
「不自然な行動。」
「何か隠しているな。」
ユーマは鼻で笑う。
「あぁ。」
「隠してるぜ。」
ナディアの目が細くなる。
ユーマはドレスの裾を掴んだ。
「今はこんな格好してる場合じゃねぇ。」
バサッ!
ドレスを脱ぎ捨てる。
カツラを取る。
そして。
本来の姿を現した。
ユーマ。
続いてロキも変装を解く。
ナディアは固まった。
数秒。
理解が追い付かない。
そして。
「・・・は?」
さらに数秒。
そして。
「男!?」
廊下に声が響いた。
「男が混じっている!?」
ユーマは耳を押さえた。
「うるせぇ。」
ナディアは剣を抜く。
「ここは神聖な場所だ!」
「男が立ち入っていい場所ではない!」
「処刑だ!」
殺気が溢れる。
アリスが慌てて前へ出る。
「待ちなさい!」
「話を――」
「黙れ!」
ナディアは一喝した。
「私は王様を守る。」
「それが使命だ。」
ユーマも剣を抜く。
「上等だ。」
ナディアの目を睨む。
「腐った王の仲間は。」
「腐ってるに違いねぇ。」
ナディアの眉が動く。
セフィがふわりと現れた。
「気を付けて。」
「レベル20。」
ユーマは剣を握る。
「20か。」
「番人レベルじゃねぇか。」
ナディアが地面を蹴る。
一瞬で距離を詰めた。
速い。
ユーマも剣を振る。
金属音。
ガキィン!!
剣と剣がぶつかる。
重い。
ユーマは奥歯を噛む。
ナディアも驚いていた。
この男。
思った以上に強い。
再び剣を構える。
そして。
二人が飛び出そうとした瞬間。
「やめなさい!!」
聞き覚えのある声。
全員が振り返る。
廊下の奥。
そこに立っていたのは。
リリムだった。
純白のドレス。
整えられた赤い髪。
普段とは別人のような姿。
ユーマは思わず固まった。
「・・・リリム?」
リリムは眉をひそめる。
「何よ。」
ユーマは指を差した。
「誰だお前。」
「殺すわよ。」
いつものリリムだった。
ユーマは少し安心した。
ナディアは驚いた顔をしていた。
「リリム!」
「離れろ!」
「そいつらは男だぞ!」
リリムは即答した。
「知ってる。」
「仲間よ。」
ナディアが固まる。
「・・・は?」
「仲間。」
「大事な仲間。」
世界観が崩壊したような顔だった。
ユーマは前へ出る。
「リリム。」
「騙されるな。」
リリムが眉をひそめる。
「何の話?」
ユーマは怒りを抑えながら言った。
「こいつら隠してやがる。」
ナディアが睨む。
「隠す?」
「何をだ。」
ユーマは叫んだ。
「地下牢だよ!」
ナディアの表情が変わる。
「何・・・?」
「たくさんの女が閉じ込められてる!」
「油抜きとかいう意味分かんねぇことさせられて!」
「番人がそいつらを取り込んでるんだよ!」
リリムが目を見開く。
「取り込む・・・?」
ユーマは頷く。
「あぁ。」
「あの野郎。」
「女を抱きしめて。」
「自分の中へ取り込んだ。」
ナディアが怒鳴る。
「嘘だ!!」
廊下に響く声。
「王様がそんなことする訳ない!!」
ユーマも怒鳴り返す。
「見たんだよ!」
「この目で!」
ナディアは首を振る。
「嘘だ!」
「妄想だ!」
「王様はそんな人じゃない!」
ユーマはため息を吐いた。
そして言う。
「じゃあ来い。」
「見せてやる。」
数分後。
再び地下。
牢屋の前。
ナディアは立ち尽くしていた。
そこには。
女性達。
痩せ細った身体。
油抜き。
全て本物だった。
ナディアの顔色が変わる。
「な・・・。」
「何故・・・。」
牢の女性達が気付く。
「あら?」
「ナディア様?」
ナディアは鉄格子へ近付く。
「君達・・・。」
「何をしている。」
女性は不思議そうな顔をした。
「油抜きです。」
「王様のために。」
ナディアは言葉を失う。
「何故そんなことを・・・。」
女性は笑う。
「だって。」
「王様と一つになれるんです。」
ナディアが後退る。
一歩。
また一歩。
頭が追い付かない。
王は優しい。
王は正しい。
王は女性達を守っている。
そう信じていた。
だが。
目の前の光景は何だ。
ユーマが静かに言う。
「まだ信じるか?」
ナディアは答えない。
答えられない。
拳を握る。
そして小さく呟く。
「違う・・・。」
誰に言っているのか。
自分にも分からなかった。
「何か理由がある・・・。」
「王様には・・・。」
牢の女性が笑う。
「王様は優しいんです。」
別の女性も頷く。
「私達は幸せなんです。」
さらに別の女性。
「王様は私達を愛してくれます。」
ナディアの顔が歪む。
正義。
忠誠。
その二つがぶつかっていた。
ユーマは何も言わない。
ロキも黙っている。
アリスも見守るだけだった。
今戦っているのは。
ナディア自身だから。
地下牢に沈黙が落ちる。
そして。
ナディアはゆっくり顔を上げた。
その瞳は。
大きく揺れていた。
第56話を読んでいただきありがとうございました!
今回はナディア回でした。
王への忠誠。
女性達を守りたいという正義。
その二つが初めてぶつかった瞬間です。
今までナディアは王を信じてきました。
だからこそ、目の前の現実を簡単には受け入れられません。
そしてユーマ達も、ようやくリリムと合流。
少しずつですが、王城の真実が共有され始めました。
次回はナディアがどんな答えを出すのか。
そして喜の番人にどう向き合うのか。
物語はさらに核心へ近付いていきます。




