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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
女と男の街 ローゼンベルク編

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第54話 『油抜き』

ユーマ達は王城の探索を開始。


リンリンとランランが作った地図を頼りに調査を進めます。


そしてユーマのゲーム知識によって発見された隠し通路。


その先に待っていたのは、レベル15のゴーレム達でした。


ゴーレムを撃破した一行。


さらに奥へ進むと、そこには衝撃の光景が広がっていて――。


それでは第54話をお楽しみください!

地下の部屋。


そこにあったのは。


牢屋だった。


鉄格子が並び、その奥に女性達が座っている。


一人。


二人。


十人以上。


皆、美しい服を着ていた。


だが。


痩せている。


頬はこけ、腕は細い。


それでも。


彼女達は笑っていた。


アリスが息を呑む。


「あなた・・・。」


牢の中の女性が顔を上げる。


アリスは震える声で言った。


「去年の交流会にいたわよね?」


女性は目を見開いた。


「アリス様・・・?」


「覚えていてくださったんですね。」


アリスの顔から血の気が引く。


去年ここへ来た女性。


王城で幸せに暮らしているはずの女性。


それがなぜ。


地下の牢にいるのか。


ユーマは鉄格子へ近付いた。


「何でここにいるんだ?」


女性は穏やかに笑った。


「油抜きです。」


「油抜き?」


「はい。」


女性は細い腕を見る。


「食事を抜くんです。」


「一ヶ月以上。」


ユーマの顔が歪む。


「一ヶ月以上・・・?」


「綺麗になるためです。」


女性は嬉しそうだった。


「余分なものを落として。」


「もっと美しくなって。」


「王様に認めてもらうんです。」


リンリンとランランも言葉を失っていた。


アリスが聞く。


「そんなことをして、何になるの?」


女性は笑う。


「王様と一つになれるんです。」


ユーマの眉が動く。


「一つ?」


「はい。」


「王様はそう言っていました。」


「永遠に一緒にいられるって。」


牢の中の女性達も頷く。


「私も早く一つになりたい。」


「王様に選ばれたい。」


「もっと頑張らなきゃ。」


異常だった。


明らかに異常だった。


ユーマは鉄格子を掴む。


「出ろ。」


女性達が一斉に顔を上げる。


「ここから出す。」


「そんなの間違ってる。」


剣に手を掛けた瞬間。


「やめて!!」


叫ばれた。


ユーマは固まる。


牢の中の女性達が怯えた顔で首を振る。


「やめて!」


「王様に嫌われる!」


「もう少しなの!」


「もう少しで選ばれるの!」


ユーマは言葉を失う。


助けようとしているのに。


彼女達は嫌がっている。


その時だった。


コツ。


コツ。


コツ。


足音。


全員の身体が強張る。


ロキが低く言う。


「隠れろ。」


ユーマ達は急いで物陰へ隠れた。


足音が近付く。


そして。


喜の番人が現れた。


先ほどまでの交流会とは少し違う。


柔らかな笑顔。


穏やかな足取り。


まるで大切な人に会いに来たようだった。


牢の中の女性達が一斉に顔を輝かせる。


「王様・・・!」


「王様!」


「会いに来てくださったんですね!」


喜の番人は優しく手を振った。


「やあ。」


「みんな元気にしていたかな?」


女性達は涙を浮かべて頷く。


「はい!」


「もちろんです!」


「王様のために頑張っています!」


喜の番人は満足そうに微笑んだ。


「交流会は楽しいねぇ。」


「美しい女性達がたくさん来ている。」


「華やかで。」


「賑やかで。」


「とても素晴らしい。」


そこで少しだけ目を細めた。


「でも。」


「たくさんの女性を見ていたら。」


「君達に会いたくなってしまってね。」


牢の中から歓喜の声が上がる。


「王様・・・!」


「嬉しい・・・!」


喜の番人はゆっくり鉄格子の前を歩く。


「やっぱりここは落ち着くよ。」


「君達は本当に美しい。」


「私の自慢だ。」


ユーマは物陰で拳を握った。


ロキは無言で斧に手を添える。


アリスは震えていた。


リンリンとランランも言葉を失っている。


喜の番人は一人の女性の前で足を止めた。


さっき話してくれた女性だった。


「ああ。」


「君。」


女性は目を見開く。


「はい・・・。」


喜の番人は優しく微笑む。


「順調だね。」


「油もかなり落ちた。」


「以前よりずっと綺麗になっている。」


女性の目から涙がこぼれる。


「本当ですか・・・?」


「本当だよ。」


喜の番人は鉄格子越しに頬へ触れた。


「とても美しい。」


女性は泣きながら笑った。


「ありがとうございます・・・!」


「ありがとうございます、王様・・・!」


喜の番人は鍵を取り出す。


牢が開く。


ギィ・・・。


女性が震える足で外へ出る。


他の女性達は羨ましそうに見つめていた。


「いいな・・・。」


「羨ましい・・・。」


「私も早く選ばれたい・・・。」


喜の番人は両手を広げる。


「そろそろ。」


「僕と一つになれるね。」


女性は涙を流しながら頷く。


「はい・・・!」


「はい・・・!」


喜の番人は優しく言った。


「さぁ。」


「おいで。」


女性は迷わず飛び込んだ。


喜の番人の胸へ。


その腕の中へ。


喜の番人は女性を抱きしめる。


まるで恋人を抱くように。


まるで宝物を包むように。


そして。


耳元で囁いた。


「愛しているよ。」


女性は幸せそうに笑う。


「私もです・・・。」


「王様・・・。」


次の瞬間。


女性の身体が淡く光り始めた。


「・・・!?」


ユーマは息を呑む。


女性の指先が。


髪が。


腕が。


少しずつ光の粒へ変わっていく。


痛がっていない。


苦しんでいない。


むしろ。


幸せそうだった。


「王様・・・。」


「やっと・・・。」


「一つに・・・。」


女性の身体が崩れていく。


光になって。


喜の番人の胸へ吸い込まれていく。


アリスが口元を押さえた。


リンリンが震える手で武器を握る。


ランランも目を見開く。


ロキは静かに殺気を強めた。


やがて。


女性は完全に消えた。


そこには何も残らない。


服も。


声も。


身体も。


何も。


喜の番人は目を閉じる。


しばらく余韻に浸るように。


そして。


優しく微笑んだ。


「うん。」


「良い子だった。」


牢の中の女性達は拍手していた。


「おめでとう!」


「素敵・・・!」


「羨ましい・・・!」


「次は私も!」


地獄だった。


喜の番人は彼女達に向き直る。


「君達も頑張りなさい。」


「そうすれば。」


穏やかに笑う。


「私と一つになれる。」


「永遠に一緒だ。」


女性達は涙を浮かべて頷く。


喜の番人は満足そうに背を向けた。


そして。


何事もなかったように通路を去っていく。


足音が遠ざかる。


誰も動けなかった。


アリスは震える声で呟いた。


「何・・・。」


「今の・・・。」


ユーマは拳を握る。


爪が食い込むほど強く。


華やかな王城。


美しい交流会。


優しい王様。


その裏側にあったもの。


それは。


愛という名の狂気だった。



第54話を読んでいただきありがとうございました!


今まで優しく見えていた喜の番人。


その本当の狂気が少しだけ見え始めました。


本気で愛し、本気で幸せにしているつもりです。


だからこそ恐ろしい。


そしてユーマ達も、ついに王城の秘密へ辿り着きました。


ここから物語はさらに核心へ近付いていきます。


それでは次回もお楽しみに!

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