第51話 「純白のドレス」
前回――
ナディアとの会話の中で、リリムは「番人は本当に悪なのか」と少し考えさせられることになります。
一方ユーマ達は交流会へ潜入するための作戦を決行。
女装という、とんでもない方法で王城への侵入を目指すのでした。
それでは第51話をお楽しみください!
交流会当日。
ローゼンベルクの城内は朝から慌ただしかった。
大広間。
食堂。
廊下。
どこも女性達で溢れている。
喜の番人は上機嫌だった。
「皆、おはよう。」
女性達が頭を下げる。
「今日は待ちに待った交流会だ。」
歓声。
「各地から素晴らしい女性達が集まる。」
「楽しもうじゃないか。」
さらに歓声。
喜の番人は笑顔のまま続ける。
「朝食を食べたら。」
「一番お気に入りのドレスへ着替えるんだよ。」
女性達は大盛り上がりだった。
だが。
リリムだけは違う。
パンを食べながら無言。
全く乗り気ではない。
ナディアが横を見る。
「楽しみじゃないのか。」
「全然。」
即答だった。
「そうか。」
ナディアは少しだけ笑った。
⸻
朝食後。
フィッティングルーム。
侍女達が大騒ぎしていた。
「これがいい!」
「いやこちらです!」
「絶対こっち!」
ドレスが次々と運ばれてくる。
青。
赤。
白。
黒。
金。
リリムは椅子に座ったまま。
「どれでもいい・・・。」
完全にやる気がない。
侍女達は頭を抱えた。
その時だった。
扉が開く。
ナディアが入ってくる。
その手には大きな箱。
侍女達が振り返る。
「ナディア様?」
ナディアは静かに言った。
「王様からの伝達だ。」
部屋が静まる。
「リリムにはこれを着せろと。」
箱が開かれた。
全員が息を呑む。
純白。
それはドレスだった。
だが普通のドレスではない。
まるで花嫁。
繊細な刺繍。
宝石。
長いヴェール。
誰が見ても特別だと分かる。
侍女達が震える。
「綺麗・・・。」
「こんなの見たことない・・・。」
リリムは嫌な予感しかしなかった。
数十分後。
扉が開く。
そして。
リリムが姿を現した。
沈黙。
誰も喋れない。
眩しい。
そう表現するしかなかった。
純白のドレス。
純白に反した真っ赤な髪。
整った顔立ち。
まるで絵画から出てきたようだった。
侍女達は言葉を失う。
ナディアも固まった。
リリムが眉をひそめる。
「何よ。」
誰も答えない。
「そんな見るな。」
それでも視線は止まらなかった。
リリムはため息を吐く。
「動きにくい・・・。」
全てが台無しだった。
⸻
一方その頃。
街の外。
ユーマ達は作戦を開始していた。
目標。
パルム村から来る交流会用の馬車。
ユーマは白い仮面を被る。
ロキも被る。
ジャックも被る。
三人とも怪しい。
「本当にやるのか。」
ジャックが言う。
「もちろん。」
ユーマは胸を張った。
「完璧な作戦だ。」
ロキは呆れている。
「どこがだ。」
馬車が近付いてくる。
ユーマが手を上げた。
「煙幕!」
煙玉。
ボンッ!!
白煙が広がる。
続いて。
人魂っぽい灯り。
さらに。
白い布。
風で揺れる。
ユーマが低い声を出す。
「たーすーけーてー・・・。」
沈黙。
数秒後。
馬車の中から悲鳴。
「ぎゃああああああ!!」
「幽霊よーーー!!」
「帰るわよーーー!!」
馬車は全力で方向転換した。
ユーマ達は見送る。
沈黙。
ジャックが言う。
「成功したな。」
ロキも頷く。
「成功したな。」
ユーマは胸を張った。
「言っただろ。」
「完璧だ。」
⸻
そして。
女装タイム。
数十分後。
ジャーン!!
ユーマが登場する。
ドレス姿。
メイク。
カツラ。
本人だけ満足そうだった。
くるりと回る。
「どうだ?」
沈黙。
「な?」
沈黙。
「な?」
ジャックが正直に言った。
「ひどいな。」
「何でだよ!?」
どう見ても男だった。
肩幅。
歩き方。
表情。
全部男だった。
だが本人は気付いていない。
ジャックも着替えていた。
こちらは御者風の服装。
「なんで俺まで・・・。」
「似合ってんじゃん。」
「嬉しくねぇ。」
そして最後。
ロキ。
カーテンが開く。
黒い執事服。
白手袋。
長身。
整った姿勢。
完璧だった。
沈黙。
ユーマが呟く。
「似合ってる・・・。」
ジャックも頷く。
「似合ってる・・・。」
ロキの額に青筋が浮く。
「殺すぞ。」
「何でだよ!」
「お前より似合ってるからだ。」
「それ俺が悪いの!?」
その時だった。
別の馬車が横に停まる。
豪華な馬車。
紋章。
そして。
扉が開く。
一人の少女が降りてくる。
金色の髪。
美しいドレス。
ユーマは目を見開いた。
「アリス・・・?」
アリスも固まる。
数秒。
見つめ合う。
そして。
アリスが言った。
「ユーマ?」
ユーマは即答した。
「ちっ違いますわ。」
「ユーマだ。」
即バレだった。
事情説明。
数分後。
アリスは頭を抱えていた。
「馬鹿なの?」
「多分。」
「多分じゃない。」
アリスはため息を吐く。
「リリムを助けたい。」
「ジャックの恋人も探したい。」
ユーマは真剣だった。
アリスも理解する。
そして。
「はぁ・・・。」
もう一度ため息。
「仕方ないわね。」
その時だった。
御者席から声がする。
「本当に仕方ないな。」
ユーマが振り返る。
そこにいたのは。
大剣を背負った男。
ガルドだった。
「ガルドのおっさん!」
「だれがおっさんだ!」
ガルドはユーマを見る。
上から下まで。
じっくり。
そして一言。
「何だその格好。」
ユーマは目を逸らした。
「事情があって。」
「聞きたくない。」
即答だった。
ジャックが吹き出す。
ガルドは頭を抱える。
「本当にお前は面倒事ばかり起こす。」
「助けてくれよ。」
「断る。」
即答だった。
だが。
アリスが小さく笑う。
「ガルド。」
ガルドは空を見る。
「はぁ・・・。」
長いため息。
「今回だけだぞ。」
そして。
門前。
門番が通行証を確認していた。
ユーマ達の番。
門番がユーマを見る。
じー・・・。
上から下まで。
じー・・・。
嫌な汗が流れる。
「んー・・・?」
怪しまれている。
ユーマは必死だった。
「パ、パルム村から来ましたんでございますわ。」
声が変だった。
門番はさらに怪しむ。
「んーーー?」
その時。
ロキが前へ出る。
完璧な執事の礼。
「姫様に何か?」
門番が固まる。
ロキは続ける。
「その美しさに圧倒されたのであれば理解できますが。」
ユーマは吹きそうになった。
お前ノリノリじゃねぇか。
その時だった。
アリスが前へ出る。
優雅に微笑む。
「まあ。」
「ユーマ姫ではありませんか。」
ユーマは死にたくなった。
アリスは続ける。
「お久しぶりですわ。」
門番の顔色が変わる。
「あっ!」
「アリス様!!」
即敬礼。
「これは失礼いたしました!」
アリスは微笑む。
「私の知人です。」
「通して差し上げて。」
「はっ!!」
門が開く。
ユーマ達は無事通過した。
門を抜けた瞬間。
ユーマは膝をつく。
「助かった・・・。」
アリスは笑った。
「あとで全部聞かせなさい。」
ユーマは小さく頷く。
そして。
ついに。
交流会の舞台。
王城へ足を踏み入れた。
第51話を読んでいただきありがとうございました!
今回は交流会開幕!
リリムは過去最高レベルに着飾らされ、
ユーマは過去最低レベルの女装を披露しました。
そして久しぶりのアリスとガルドの再登場。
さらにユーマ姫も爆誕です。
無事に王城へ潜入できたユーマ達。
次回はいよいよ交流会本番です!




