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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
女と男の街 ローゼンベルク編

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第50話 『番人は悪か』

前回――


喜の番人に呼び出されたリリム。


なぜ自分が選ばれたのかを聞かされます。


そして交流会の開催も発表されました。


一方、男街ではユーマが王城へ潜入するための作戦を思いつきます。


それでは第50話をお楽しみください!

ユーマはニヤリと笑った。


「城に入る方法を思いついた。」


ジャックが身を乗り出す。


「本当か!?」


「ああ。」


ロキは嫌な予感しかしない顔をした。


「聞くだけ聞く。」


ユーマは指を一本立てる。


「交流会には各地の姫とか村の代表が来るんだろ?」


ジャックが頷く。


「そう聞いた。」


「つまり。」


ユーマは笑う。


「その誰か一組になりすませばいい。」


沈黙。


ジャックは少し考えた。


「どうやって?」


ユーマは即答した。


「襲う。」


さらに沈黙。


ロキが一歩下がった。


「帰るぞ。」


「待て待て待て!」


ユーマは慌てる。


「ガチで襲うんじゃない!」


「ちょっと驚かせるだけ!」


「帰ってもらうだけ!」


ジャックは眉をひそめる。


「それは襲撃じゃないのか?」


「かわいい襲撃だ!」


「何だそれ。」


ユーマは胸を張った。


「お化けの仮面をかぶる。」


ロキとジャックが同時に固まった。


「・・・。」


「・・・。」


ユーマは不安になる。


「あれ?」


「思ったより反応悪いな。」


ロキは冷たく言う。


「馬鹿だな。」


ジャックも頷いた。


「馬鹿だと思う。」


「お前まで!?」


だが、方法としては単純だった。


交流会に来る姫の馬車を途中で脅かす。


姫には帰ってもらう。


そして、その一枠にユーマ達が入り込む。


雑。


かなり雑。


だが。


雑な作戦ほど通る時は通る。


ユーマはそう信じていた。


「で。」


ジャックが恐る恐る聞く。


「誰が姫役をやるんだ?」


ユーマは自分を指差した。


「俺。」


ジャックは笑いを堪えた。


ロキは無言で斧に手を置いた。


「殺すぞ。」


「まだ何もしてねぇ!」


「する前に止める。」


「お前は女執事役な。」


ロキの空気が凍った。


ジャックが腹を抱えて笑い出す。


「ははははは!」


「悪い!」


「想像したら無理だ!」


ロキはジャックを見る。


「笑うな。」


ジャックは涙を拭う。


「すまん。」


「でも無理だ。」


ユーマは真剣だった。


「いいか。」


「リリムは城の中。」


「交流会は城に入れるチャンス。」


「ここしかない。」


ロキはしばらく黙った。


そして。


深くため息を吐いた。


「最悪だ。」


「でもやるしかないだろ?」


「・・・。」


ロキは答えない。


だが否定もしなかった。


それはつまり。


乗るということだった。


その頃。


王城。


リリムはナディアに連れられて、城内を歩いていた。


長い廊下。


高い天井。


薔薇の絵。


磨かれた床。


何もかもが綺麗だった。


だが。


綺麗すぎる。


リリムにはそれが落ち着かなかった。


ナディアが口を開く。


「一つ聞いていいか。」


「何。」


「なぜそこまで王を嫌う。」


リリムは即答した。


「番人だからよ。」


ナディアは足を止めた。


「番人だから嫌いなのか?」


「そう。」


「番人は悪か?」


リリムは少しだけ言葉に詰まる。


ナディアは続けた。


「王は女性達を幸せにしている。」


「安全な部屋。」


「美しい服。」


「温かい食事。」


「誰にも傷付けられない生活。」


「それを与えている。」


リリムは黙る。


ナディアの声は真剣だった。


「男の中には女性を傷付ける者もいる。」


「捨てる者もいる。」


「殴る者もいる。」


「踏みにじる者もいる。」


ナディアは真っ直ぐリリムを見る。


「それに比べれば。」


「王は神のように優しい。」


リリムは窓の外を見る。


庭園では女性達が笑っている。


紅茶を飲み。


花を眺め。


美しい服を着て。


本当に幸せそうだった。


リリムは小さく呟く。


「確かに。」


ナディアの目が少しだけ柔らかくなる。


「そうだろう。」


「一理ある。」


リリムは認めた。


「みんな幸せそう。」


実際そうだった。


少なくとも。


この城の中だけを見れば。


ナディアは少しだけ笑う。


「分かってくれて嬉しい。」


だが。


リリムは続けた。


「でも。」


ナディアの表情が止まる。


リリムは言う。


「あいつは信用できない。」


「理由は?」


リリムは少し考えた。


ユーマなら何と言うだろう。


そう思って。


小さく笑った。


「ゲーマーの勘。」


ナディアは首を傾げた。


「何だそれは。」


「さぁ。」


「私にもよく分からない。」


ナディアはため息を吐く。


「変な女だ。」


「よく言われる。」


リリムはそう答えた。


その頃。


王城の別の廊下。


リンリンとランランは壁に張り付いていた。


二人とも黒い布を頭から被っている。


本人達は隠れているつもりだった。


だが。


どう見ても怪しい。


「右よし。」


リンリンが囁く。


「左よし。」


ランランも囁く。


「武器庫まであと少し。」


「伝説武器まであと少し。」


二人は真剣だった。


本当に真剣だった。


そこへ。


女性兵士が現れた。


「何をしている。」


二人は固まる。


三秒。


五秒。


リンリンが答えた。


「散歩。」


ランランも答えた。


「黒い散歩。」


「黒い散歩とは何だ。」


沈黙。


リンリンが小声で言う。


「ランラン。」


「何。」


「作戦失敗。」


「早いね。」


女性兵士が剣に手を掛ける。


その瞬間。


リリムが廊下の角から現れた。


「あんたら。」


リンリンとランランは同時に振り返る。


「リリム!」


「助かった!」


リリムは頭を抱えた。


「何してんの。」


「武器庫!」


「探索!」


「帰りなさい!」


「見たら帰る!」


「絶対帰らないやつじゃん。」


ナディアは呆然としていた。


「知り合いか?」


リリムは嫌そうに頷く。


「残念ながら。」


リンリンとランランは胸を張った。


「武器仲間!」


「武器友達!」


「違う。」


リリムは即否定した。


ナディアはため息を吐いた。


「王城内で勝手に動くな。」


リンリンとランランはしょんぼりする。


だが。


反省している顔ではなかった。


絶対またやる。


リリムには分かった。


一方。


男街。


ユーマ達は作戦の準備を進めていた。


用意したのは。


お化けの仮面。


白い布。


ボロい馬車。


そして。


なぜか大量の煙玉。


ジャックが仮面を見つめる。


「これで本当に怖がるか?」


仮面は丸い目。


大きな口。


全然怖くない。


むしろ少し可愛い。


ユーマは胸を張る。


「怖いだろ。」


ロキが即答する。


「怖くない。」


ジャックも即答した。


「怖くない。」


ユーマはショックを受けた。


「え?」


「可愛い。」


「どこが!?」


「全部だ。」


ロキは仮面を手に取り、無表情で言った。


「これを被るのか。」


「そうだ。」


「殺すぞ。」


「だから何で毎回殺そうとするんだよ!」


ジャックは笑っていた。


久しぶりに。


本当に楽しそうに。


それを見て、ユーマは少し安心した。


ジャックにも笑える瞬間がある。


それは悪いことじゃない。


だが。


作戦は作戦だ。


ユーマは仮面を握る。


「交流会まであと少し。」


「ここで城に入る。」


「リリムを助ける。」


「そして。」


ユーマはローゼンベルクの城を見上げた。


「王の正体を暴く。」


ロキは斧を肩に担ぐ。


「女装はしない。」


「する。」


「しない。」


「する。」


ジャックがまた笑った。


「悪い。」


「やっぱり無理だ。」


ユーマは真剣に言った。


「笑ってる場合じゃない。」


「俺達の勝負服だぞ。」


ロキの殺気が膨れ上がった。


「やはり殺す。」


「まだ早い!」


こうして。


最低で。


最悪で。


たぶん少しだけ可愛い潜入作戦が始まろうとしていた。



第50話を読んでいただきありがとうございました!


今回はそれぞれの準備回でした。


ナディアの考え。


リンリンとランランの暴走。


そしてユーマのとんでもない潜入作戦。


交流会まであと少し。


次回もお楽しみに!

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