第49話 『求める女性』
前回――
王城へ招かれたリリム。
豪華な部屋。
豪華な食事。
豪華な生活。
誰もが憧れるような環境でした。
しかしリリムにとっては窮屈なだけ。
さらに相棒とも言える銃まで没収されてしまいます。
そして王城で出会った護衛の女性、ナディア。
彼女は王を信じ、王城の住人達を守ることに誇りを持っていました。
そんな中。
ついに喜の番人から直接呼び出しを受けたリリム。
果たして何を語るのか――。
それでは第49話をお楽しみください!
巨大な扉が開く。
リリムはゆっくりと中へ入った。
広い。
とにかく広い。
赤い絨毯。
巨大な窓。
天井には豪華なシャンデリア。
そして。
部屋の奥。
椅子に腰掛ける男。
喜の番人だった。
「よく来てくれた。」
優雅な笑み。
まるで旧友でも迎えるような口調だった。
リリムは警戒したまま立つ。
「何の用?」
単刀直入だった。
喜の番人は笑う。
「せっかちな女性は嫌われるよ。」
「別に好かれたくない。」
即答。
喜の番人はさらに笑った。
怒る様子はない。
むしろ楽しそうだった。
「君は面白い。」
「そう。」
「だから選んだ。」
リリムの眉が動く。
「選んだ?」
喜の番人は立ち上がる。
窓の外。
ローゼンベルクを見下ろした。
「君がこの街へ来た日。」
「私は城から見ていた。」
リリムは黙って聞く。
「美しい女性だった。」
「強い女性だった。」
「誰にも媚びない女性だった。」
喜の番人は振り返る。
「私の理想だ。」
リリムは顔をしかめた。
嫌な予感しかしない。
そして。
喜の番人は微笑む。
「ここで永遠に暮らしたまえ。」
沈黙。
数秒。
リリムは聞き返した。
「・・・は?」
「王城で暮らすんだ。」
「君は選ばれた。」
「最高の生活。」
「最高の食事。」
「最高の環境。」
「何一つ不自由はない。」
喜の番人は両手を広げる。
「素晴らしいだろう?」
リリムは即答した。
「全然。」
笑顔が少しだけ固まる。
本当に少しだけ。
だがすぐ戻った。
「なぜだい?」
「窮屈だから。」
「自由がない。」
「銃も取られた。」
「知らない奴ばっかり。」
「帰りたい。」
リリムは本音を並べる。
喜の番人はしばらく黙った。
そして。
「やはり面白い。」
そう言った。
リリムは本気で殴りたくなった。
だが。
銃がない。
今この場で暴れても勝てる保証はない。
それどころか。
この城には兵士もいる。
ナディアもいる。
無茶はできない。
喜の番人は席へ戻る。
「今日は疲れただろう。」
「ゆっくり休みたまえ。」
「良い夢を。」
「夢見たくない。」
「そうか。」
それでも喜の番人は笑っていた。
最後まで。
リリムは一礼すらせず部屋を出る。
扉が閉まる。
その瞬間。
「疲れた・・・。」
思わず漏れた。
ナディアが壁にもたれている。
「終わったか。」
「終わった。」
「どうだった。」
リリムは即答した。
「変な奴。」
ナディアの眉が動く。
「不敬だぞ。」
「事実よ。」
「事実でも言うな。」
リリムは肩をすくめた。
そのまま部屋へ戻る。
ベッドへ飛び込む。
ふかふかだった。
だが全く落ち着かない。
「何なのよあいつ・・・。」
その時だった。
ガタッ。
音がした。
リリムが起き上がる。
「?」
ガタガタ。
ベッドの下。
嫌な予感がする。
ゆっくり覗き込んだ。
そこには。
「・・・。」
「・・・。」
リンリン。
ランラン。
二人がいた。
沈黙。
数秒。
リンリンが言う。
「見つかった。」
ランランも言う。
「見つかった。」
リリムは叫んだ。
「アンタら何やってんの!?」
リンリンが胸を張る。
「潜入!」
ランランも胸を張る。
「武器庫!」
「帰れぇぇぇぇ!!」
王城にリリムの叫び声が響いた。
翌朝。
リリムは寝不足だった。
原因は明白である。
朝食会場。
長いテーブル。
美しい住人が揃ってる。
豪華な料理。
焼きたてのパン。
スープ。
果物。
肉料理。
朝から異常だった。
喜の番人は上機嫌で席に着く。
「おはよう。みんな。」
「おはよう。」
全く元気はない。
ナディアは横に立っていた。
喜の番人は気にしない。
「食事はどうかな?」
「普通。」
「部屋は?」
「広い。」
「城は?」
「長い。」
ナディアが吹き出しそうになった。
慌てて咳払いする。
喜の番人は楽しそうだった。
「君は本当に面白い。」
「それ昨日も聞いた。」
朝食が始まる。
しばらくして。
喜の番人が話し始めた。
「数日後。」
「交流会を開催する。」
周囲の女性達がざわつく。
リリムは首を傾げた。
「交流会?」
「そう。」
喜の番人は優雅に紅茶を飲む。
「各地の王女。」
「村長の娘。」
「有力者の令嬢。」
「様々な女性達が集まる。」
「ローゼンベルクの素晴らしさを知ってもらうための会だ。」
リリムは興味なさそうだった。
「へぇ。」
「君にも参加してもらうよ。リリム。」
「は!?なんでワタシが!?」
即答。
ナディアが頭を抱えた。
喜の番人は笑う。
「参加する。」
「嫌。」
「参加する。」
「嫌。」
「参加する。」
ナディアが小さく吹き出した。
喜の番人も笑う。
結局。
王も執事と同じだった。
そして。
喜の番人は少し声を落とした。
「一つだけ。」
「何。」
「私が喜の番人であることは内緒にしてくれ。」
リリムは固まる。
「何で?」
「嫌われてしまうからね。」
リリムは即答した。
「もう嫌われてると思う。」
ナディアが盛大にむせた。
喜の番人は数秒黙る。
そして。
大笑いした。
「ははははは!」
本当に楽しそうだった。
リリムはますます意味が分からなくなった。
朝食後。
鐘が鳴る。
カーン。
カーン。
カーン。
街中へ響く音。
喜の番人のスピーチの時間だった。
王城のバルコニー。
喜の番人が姿を現す。
歓声。
拍手。
熱狂。
いつも通りだった。
男街では。
ユーマが朝食のパンをかじっていた。
ジャックもいる。
ロキもいる。
そして。
喜の番人が話し始める。
「皆さん。」
歓声。
「ごきげんよう。」
さらに歓声。
ユーマはすでに嫌そうな顔だった。
喜の番人は続ける。
「本日は素晴らしい報告がある。」
女街がざわつく。
「新たな王城の住人が決定した。」
歓声。
「その名は。」
少し間。
そして。
「リリム嬢。」
ユーマ。
「ブッ!!」
盛大にパンを吹いた。
ジャックが驚く。
「どうした!?」
ユーマは立ち上がる。
「リリムだ!!」
ロキも空を見る。
「ああ。」
確かに聞こえた。
喜の番人は続ける。
「さらに数日後。」
「交流会を開催する。」
歓声。
「各地より多くのプリンセスなどの来賓が訪れる。」
「最高の料理でもてなそう。」
そして。
男街を見下ろした。
「男達よ。」
空気が変わる。
「しっかり働くように。」
「豪勢な料理を用意するのだから。」
男街は静まり返った。
ユーマは呆れた顔になる。
そして一言。
「交流会ってなんだよ、番人のくせしやがって。」
ジャックが教える
「たまにやってるんだよ。各街や村のプリンセス、娘などを呼ぶパーティーだ。この街を自慢するためにしてる。」
ロキも頷く。
「外面はいいようだな。」
そして。
ユーマは考える。
交流会。
各地の来賓。
女性だけ。
リリムは王城。
点と点が繋がった。
「・・・。」
ロキが見る。
「何だ。」
ユーマはニヤリと笑った。
「城に入る方法。」
「思いついた。」
第49話を読んでいただきありがとうございました!
今回は喜の番人との初めての本格的な会話でした。
「強くて、美しくて、誰にも媚びない女性。」
だからリリムを選んだ。
言葉だけ聞けば褒め言葉なのですが、どこか怖い。
そんな喜の番人らしい回になったかなと思います。
そして。
まさかのリンリン&ランラン。
武器庫のためだけに王城へ潜入。
もはや武器への執念が異常です。
作者も書きながら、
「こいつら絶対帰らないな」
と思いました。
次回もお楽しみに!




