第5話 『レベル1の勇者』
前回の投票結果です!
① 勇者になることを決意する
② もう一度村長の話を聞く
投票の結果、
【① 勇者になることを決意する】
に決定しました!
レベル1のユーマ。
初めて味わった無力さ。
そしてアリスの言葉。
彼が出した答えとは――。
それでは第5話をお楽しみください。
夕日が沈む。
空が赤く染まる。
俺は一人、村の外れに座っていた。
目の前には草原。
遠くには森。
そして。
数時間前にゴブリンが現れた場所。
「……。」
静かだった。
風の音だけが聞こえる。
◇
レベル3。
たったレベル3。
その事実が頭から離れなかった。
ゲームなら雑魚だ。
経験値稼ぎの相手だ。
チュートリアルで倒すような敵だ。
でも現実は違った。
何もできなかった。
子供を助けようとして。
吹き飛ばされて。
終わった。
もしアリスが来なかったら。
たぶん死んでいた。
◇
「まだ落ち込んでるんですか?」
セフィが隣に浮かぶ。
「うるさい。」
「勇者らしくありませんね。」
「だから勇者じゃない。」
「では何です?」
俺は答えられなかった。
ただの高校生。
ただのゲームオタク。
それだけだ。
◇
「でも。」
セフィが珍しく真面目な声を出した。
「逃げませんでしたよね。」
「え?」
「普通は逃げます。」
「……。」
「怖かったでしょう?」
怖かった。
今でも思い出すだけで手が震える。
「それでも飛び出した。」
セフィは肩をすくめた。
「私なら嫌です。」
「お前妖精だろ。」
「だからです。」
少しだけ笑ってしまった。
◇
その時だった。
「見つけた。」
アリスが歩いてきた。
両手を後ろで組んでいる。
「村中探したんだから。」
「ごめん。」
「本当に。」
怒っているようで。
少し安心したようにも見えた。
◇
アリスは俺の隣に座る。
しばらく沈黙。
風だけが二人の間を通り抜ける。
そして俺はふと思った。
「なあ。」
「ん?」
「なんでそんなに俺を応援するんだ?」
アリスがきょとんとした顔をする。
「なんでって?」
「俺、今日会ったばっかりだぞ。」
レベル1。
戦えない。
モンスターにも勝てない。
勇者なんて呼ばれているけど実力はゼロ。
それなのにアリスは最初から俺を信じている。
少し不思議だった。
◇
アリスは夕日を見つめた。
しばらく黙る。
そして静かに話し始めた。
「実はね。」
「うん。」
「今までにも勇者はいたの。」
「え?」
俺は驚いた。
勇者って俺が初めてじゃないのか。
「何人も。」
アリスは頷く。
「この村にも来た。」
「へぇ。」
「みんな強かったよ。」
剣が上手い人。
魔法が得意な人。
レベルが高い人。
たくさんいたらしい。
「村のみんなも期待した。」
アリスは少し寂しそうに笑う。
「今度こそ魔王を倒してくれるって。」
◇
風が吹いた。
長い金髪が揺れる。
「でも。」
アリスは小さく呟いた。
「誰も倒せなかった。」
その言葉に重みがあった。
俺は何も言えない。
◇
「なのに。」
アリスが俺を見る。
「ユーマは違う気がする。」
「俺が?」
「うん。」
「どこが。」
即答だった。
本当に分からない。
今日はボコボコにされているのに。
◇
アリスは少し困った顔をした。
「うーん。」
「うん。」
「なんて言えばいいんだろ。」
「そこ大事なところだぞ。」
「特別というか。」
「うん。」
「なんか違うというか。」
「うん。」
「なんというか。」
「うん。」
「……。」
「……。」
◇
「分からない!」
アリスが両手を上げた。
「おい!」
思わずツッコむ。
「そこまで言っといて!?」
「だって本当にそうなんだもん!」
アリスは少し頬を膨らませた。
そして笑う。
「村娘の勘かな!」
「なんだそれ。」
「結構当たるんだから。」
「信用していいのか?」
「たぶん!」
「たぶんかよ!」
◇
二人で笑った。
理由なんて分からない。
でも。
アリスがそう言ってくれるなら。
もう少しだけ頑張ってみよう。
そんな気がした。
◇
「決めた?」
アリスが聞く。
「何を?」
「勇者になるかどうか。」
真っ直ぐな目だった。
逃げられない。
◇
俺は空を見る。
異世界。
レベル。
モンスター。
魔王。
全部ゲームみたいだ。
でも。
痛みだけは本物だった。
恐怖も本物だった。
だからこそ。
「なるよ。」
自然と口から出た。
「勇者になる。」
アリスが驚く。
俺は続けた。
「正直怖い。」
「うん。」
「魔王なんて無理だと思う。」
「うん。」
「でも。」
拳を握る。
「今日みたいなことがまた起きた時。」
「……。」
「何もできないのは嫌だ。」
◇
アリスは少し黙る。
そして。
「そっか。」
笑った。
優しい笑顔だった。
「じゃあ応援する。」
「ありがとう。」
「でも。」
アリスは立ち上がる。
「まずはレベル1を卒業しようね。」
「ぐっ。」
痛いところを突かれた。
◇
そのまま二人で村へ戻る。
気付けば夜になっていた。
村長の家にはまだ灯りがついている。
「行くか。」
俺は深呼吸した。
そして扉を叩く。
「村長。」
「おお!」
中から声が響いた。
「ユーマ君か!」
◇
部屋へ入る。
村長は嬉しそうだった。
「答えは決まったかの?」
「ああ。」
俺は頷く。
「魔王を倒す。」
村長の目が見開かれる。
「おお……!」
「ただし。」
俺は指を立てた。
「今じゃない。」
「うむ。」
「レベル1だから。」
「うむ。」
「まず強くなる。」
「うむ。」
話が早い人で助かる。
◇
村長は机の下から一本の巻物を取り出した。
古びた羊皮紙。
そこには地図が描かれていた。
「これは?」
「世界地図じゃ。」
広げる。
ミスト村。
第一の街。
第二の街。
第三の街。
第四の街。
王都。
そして魔王城。
一直線に並んでいた。
◇
「魔王城へ向かうには。」
村長が言う。
「五つの関門を越えねばならん。」
「関門?」
「そうじゃ、各街には魔王が配置した番人がいるんじゃ。」
「そいつらを倒していけばいいんだな。」
「そうじゃ。ただし強敵ぞ?」
◇
セフィが肩の上で頷く。
「いわゆるジムリーダーてきな感じです。」
「便利な説明だな。」
「でしょ?」
「褒めてない。」
◇
村長は続ける。
「各地には強力な番人。」
「うん。」
「さらに魔王軍四天王。」
「うん。」
「最後に魔王。」
「うん。」
「世界最強の存在じゃ。」
「うん。」
「今のお主では勝てん。」
「知ってる。」
◇
村長は笑った。
「だが。」
「?」
「レベル1だからこそ可能性がある。」
俺は少し驚いた。
「どういう意味だ?」
「レベルとは経験じゃ。」
「経験。」
「誰も最初から強くはない。」
村長は頷く。
「積み重ねるのじゃ。」
◇
その言葉は妙に響いた。
ゲームと同じだった。
スライムを倒す。
レベルが上がる。
強くなる。
また進む。
その繰り返しだ。
魔王だって最初から倒せるわけじゃない。
一歩ずつ。
前に進むしかない。
◇
「よし。」
俺は立ち上がった。
「まずはレベル上げだ。」
セフィが笑う。
アリスも笑う。
村長も笑う。
そして俺は思った。
異世界最初の目標は決まった。
魔王討伐。
その前に――
レベル1卒業だ。
⸻
【投票】
冒険の準備を始めるユーマ。
次回、最初に向かう場所は?
① 武器屋
② 冒険者ギルド
あなたならどちらを選びますか?
第5話を読んでいただきありがとうございました!
ついにユーマが勇者になることを決意しました。
そしてアリスがユーマを信じる理由も少しだけ明らかになりました。
次回は冒険者としての第一歩です!
① 武器屋
② 冒険者ギルド
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