第43話 『恋人の村』
前回の投票結果は――
① 村へ立ち寄る
② そのまま進む
投票の結果、
① 村へ立ち寄る
となりました!
橋の手前にある小さな村。
ユーマ達は少し休憩していくことにします。
それでは第43話をお楽しみください!
「おぉー。」
ユーマは村を見渡した。
小さな村だった。
木造の家。
畑。
鶏。
井戸。
走り回る子供達。
何の変哲もない。
どこにでもありそうな村。
「平和そうね。」
リリムが呟く。
「こういうのでいいんだよ。」
ユーマは満足そうだった。
ラグナシアのような事件もない。
番人もいない。
人も食われていない。
最高だ。
「事件が起きそうな台詞だな。」
ロキがぼそりと言う。
「やめろ。」
ユーマは真顔になった。
縁起でもない。
その時だった。
「おやおや。」
後ろから声がした。
振り返る。
腰の曲がったおばあちゃんが立っていた。
白い髪。
優しい顔。
杖をついている。
「旅人さんかい?」
「そうです。」
ユーマが答える。
「ローゼンベルクへ?」
「はい。」
おばあちゃんは嬉しそうに笑った。
「それなら今日は休んでいきなさい。」
三人は顔を見合わせる。
「え?」
おばあちゃんは橋を指差した。
「この時期は川の流れが強くてねぇ。」
「夜に渡るのは危ないんじゃよ。」
ユーマは川を見る。
確かに流れが速い。
「なるほど。」
「泊まっていきな。」
「ありがとうございます。」
こうして。
三人は村に一泊することになった。
夕方。
おばあちゃんの家。
木造の小さな家だった。
食卓には温かいスープ。
焼きたてのパン。
シチュー。
ユーマは感動していた。
「うまっ!」
「落ち着いて食べな。」
「無理です。」
「無理かい。」
リリムが笑う。
ロキは黙々と食べていた。
食後。
おばあちゃんは立ち上がる。
「そうじゃ。」
「面白いものを見せてやろう。」
壁際へ歩く。
そこには一枚の古い絵が飾られていた。
「ん?」
ユーマが近付く。
絵には若い男女が描かれている。
男。
女。
そして。
二人の間に王様らしき人物。
王冠を被っている。
ユーマは首を傾げた。
「何だこれ。」
おばあちゃんは懐かしそうに目を細める。
「この村の始まりの話じゃよ。」
リリムが興味を示す。
「始まり?」
「そう。」
おばあちゃんは椅子に腰掛けた。
「昔々。」
「とても大きなお城から逃げてきた男女がおった。」
ユーマは適当に相槌を打つ。
「へぇ。」
「身分違いの恋だったそうじゃ。」
「ほぉ。」
「二人はこの村へ辿り着き。」
「ほぉ。」
「幸せに暮らした。」
「ほぉ。」
「そしてその子孫が今もこの村を守っておる。」
「ほぉ。」
リリムが肘で突く。
「ちゃんと聞きなさいよ。」
「聞いてる聞いてる。」
聞いていない。
ロキを見る。
寝ていた。
壁にもたれながら目を閉じている。
「こいつ寝てるぞ。」
「興味ない。」
ロキは目も開けない。
おばあちゃんは苦笑した。
「若いのぉ。」
話はさらに続いた。
恋人達がどうやって村を作ったか。
どんな畑を耕したか。
どんな家を建てたか。
ユーマは途中から記憶が曖昧だった。
気付けば夜。
気付けば朝だった。
翌朝。
村の入口。
三人は出発準備を終えていた。
「お世話になりました。」
ユーマが頭を下げる。
「ありがとう。」
リリムも微笑む。
ロキも軽く会釈した。
おばあちゃんは嬉しそうだった。
「気を付けて行くんじゃよ。」
そして。
ふとリリムを見る。
「お嬢ちゃん。」
「ん?」
「これを。」
小さな物を差し出した。
銀色のチャームだった。
小刀の形をしている。
指先ほどの大きさ。
かなり古い。
リリムは受け取った。
「何これ?」
「お守りさ。」
「お守り?」
「昔からこの村に伝わるものじゃ。」
リリムは不思議そうに眺める。
特別な物には見えない。
ただの飾りだ。
「ありがとう。」
「きっと。」
おばあちゃんが優しく言った。
「大事な時に助けてくれるよ。」
リリムが笑う。
「そうなの?」
「そうじゃ。」
おばあちゃんは少しだけ真面目な顔になった。
「だから。」
「見えないようにしまっておきな。」
「うん。」
リリムはポケットへ入れた。
ユーマが手を出す。
「俺には?」
「ないよ。」
即答だった。
「なんでだよ!」
「何となくじゃ。」
「理不尽!」
リリムが吹き出す。
ロキも鼻で笑った。
「当然だ。」
「お前も何なんだよ!」
平和だった。
本当に。
三人は村を後にする。
橋を渡る。
大河を越える。
そして。
丘を登ったその先。
「おぉ・・・。」
ユーマが立ち止まった。
巨大な白い城壁。
空へ届きそうなほど高い。
その内側には。
美しい街並みが見える。
そして。
中央には巨大な城。
朝日に照らされ輝いていた。
リリムも思わず声を漏らす。
「綺麗・・・。」
ロキは腕を組む。
「着いたな。」
ユーマは息を呑んだ。
ローゼンベルク。
どんな番人がいるんだ。
三人の新たな冒険が。
今。
始まろうとしていた。
第43話を読んでいただきありがとうございました!
今回は久しぶりの平和な回でした。
ゴーレムも倒し、村で一休み。
そしておばあちゃんから昔話とお守りを受け取ることに。
何やら意味深な村でしたが……気のせいかもしれませんね。
たぶん。
きっと。
おそらく。
さて、次回はいよいよ【ローゼンベルク編】本格スタート!
巨大な壁の向こうでユーマ達を待つものとは――。
それでは次回もお楽しみに!




