第39話 『風の手』
前回の投票結果は――
① 住民達を救う方法を探す
② このまま哀の番人へ総攻撃
投票の結果、
① 住民達を救う方法を探す
となりました!
圧倒的な力を見せつける哀の番人。
しかしユーマ達は力任せではなく、住民達を救う方法を優先することを選びます。
果たしてその選択は正しかったのか――。
それでは第39話をお楽しみください!
「さぁ。」
哀の番人が翼を広げる。
街を覆うほど巨大な黒い翼。
無数の目。
無数の口。
そして。
空を埋め尽くす羽。
「救済を始めましょう。」
次の瞬間。
翼が放たれた。
ザザザザザザザザッ!!
雨だった。
いや。
槍の雨。
黒い翼が空から降り注ぐ。
家屋を貫く。
石畳を砕く。
住民達が悲鳴を上げた。
「助けてぇ!!」
「逃げろ!!」
「女神様ぁ!!」
まだ女神と呼ぶ者までいる。
狂っている。
だが。
それでも守らなければならない。
ユーマは周囲を見渡した。
そして見つける。
広場の隅。
幼い子供達。
三人。
足がすくんで動けない。
翼が迫る。
「危ねぇ!!」
ユーマは飛び出した。
風歩。
発動。
だが遅い。
身体が重い。
足が重い。
老化。
肉の副作用。
風歩の速度が明らかに落ちていた。
「くそっ・・・!」
それでも走る。
転びそうになりながら。
子供達の前へ飛び込む。
「風防!!」
ブォォォォォン!!
風の壁が現れる。
ドドドドドドドドド!!
黒い翼が突き刺さる。
火花が散る。
衝撃で地面が揺れる。
だが。
防いだ。
子供達は無傷だった。
「お兄ちゃん・・・。」
震える子供達。
ユーマは笑う。
「大丈夫だ。」
だが。
その直後。
別方向から悲鳴。
振り返る。
老人。
母親。
別の子供。
まだ大勢いる。
守れない。
今の風防では。
小さすぎる。
ユーマは歯を食いしばった。
「足りねぇ・・・。」
その時だった。
視界の先。
ロキ。
巨大な雷槌。
トール。
番人へ叩き込んだあの技。
ユーマは思う。
なんでだ。
なんであんなにデカい。
俺との差はなんだ。
雷を見る。
圧縮。
収束。
解放。
ロキは技を巨大化させていた。
その瞬間。
ユーマの中で何かが繋がる。
ゲーム。
スキル。
上位技。
進化。
全部同じだ。
「・・・そうか。」
セフィが隣へ現れる。
「気付きましたか?」
ユーマは笑う。
「できる。」
セフィも笑った。
「できます。」
ユーマは再び風防を発動する。
だが。
今度は違う。
もっと集中する。
もっと練る。
もっと広げる。
風を集める。
魔力を集める。
汗が流れる。
頭が痛い。
身体も悲鳴を上げる。
それでも。
止めない。
「広がれ・・・。」
風が唸る。
「もっとだ・・・!」
風が暴れる。
「まだ足りねぇ!!」
さらに魔力を注ぎ込む。
風防が震える。
形が崩れる。
壁だったものが。
変形する。
ユーマも驚いた。
「・・・え?」
風が集まる。
収束する。
圧縮される。
巨大化する。
そして。
形を成した。
それは。
手だった。
巨大な風の手。
右手。
左手。
二つの巨大な風の手が現れる。
まるで街を守るように。
住民達を包み込むように。
両側から広がった。
ドォォォォォォォォン!!!
広場を覆う。
通りを覆う。
住民達を守る。
降り注ぐ翼を弾く。
リリムが目を見開いた。
「なにそれ・・・。」
ロキも一瞬だけ振り返る。
「技が進化したか。」
ユーマは膝をついた。
苦しい。
維持するだけで限界だ。
だが。
守れている。
その時だった。
セフィの声。
「新スキルを確認。」
ユーマが顔を上げる。
「新スキル?」
セフィは微笑んだ。
「風防上位派生。」
「風の手。」
ユーマは笑った。
悪くない。
かなり気に入った。
その時だった。
ユーマは気付く。
空を舞う無数の光。
住民達から抜けた魂。
それらが。
風の手にぶつかっていた。
そして。
番人へ届いていない。
「・・・ん?」
もう一度見る。
魂。
風の手。
番人。
魂。
風の手。
番人。
届いていない。
ユーマの目が見開かれる。
「あっ。」
番人も気付いた。
そして。
初めて焦った。
「やめなさい。」
余裕がない。
完全に。
ユーマは立ち上がる。
確信した。
「そういうことか!!」
リリムが叫ぶ。
「何が!?」
ユーマは指を差した。
番人へ。
そして魂へ。
「あれだ!!」
「魂!!」
ロキが目を細める。
ユーマは叫んだ。
「住民と繋がってる!!」
「魂を吸ってるんだ!!」
リリムも理解する。
「回復・・・!」
「そう!」
ユーマは笑う。
「ボスの回復装置だ!!」
番人の顔が歪む。
図星だった。
ユーマは続ける。
「風の手が魂を遮断してる!」
「つまり!」
「もう回復できない!!」
番人が怒鳴る。
「やめなさい!!」
完全に余裕が消えた。
ロキが少し笑う。
「補給路か。」
ユーマは頷いた。
「そういうこと!」
ゲームで何度も見た。
無限回復ボス。
補給ライン。
回復装置。
攻略法はいつだって同じ。
切る。
それだけだ。
ユーマは風の手を維持する。
身体中が悲鳴を上げている。
だが解除しない。
解除した瞬間。
住民達は死ぬ。
ユーマは叫んだ。
「後は頼む!!」
リリムがAK-1010を構える。
口元が吊り上がる。
「任せなさい。」
ロキも斧を肩へ担ぐ。
「ようやく仕事したな。」
「うるせぇ!!」
ユーマは叫び返した。
だが。
少し嬉しかった。
番人を見る。
焦っている。
追い詰められている。
初めて。
勝ち筋が見えた。
リリムが前へ出る。
ロキも前へ出る。
哀の番人が翼を広げる。
二人が突撃する。
そして。
ラグナシアの運命を懸けた反撃が始まった。
第39話を読んでいただきありがとうございました!
ユーマの新スキル
【風の手】
が誕生!
さらに哀の番人の攻略法も判明しました!
回復を封じられた番人に対し、リリムとロキはどう攻めるのか――。




