第36話 「セーブポイント」
女神を殴った。
だが、何も変わらなかった。
住民たちは女神を信じ続ける。
だからユーマは別の方法を選んだ。
力ではなく。
情報で攻略する。
それはゲーマーとして何度もやってきたことだった。
それでは第36話をお楽しみください。
教会の前。
朝の光が白い壁を照らしていた。
ユーマは大きな扉を見上げる。
その横にはリリム。
そしてロキ。
三人とも無言だった。
さすがに今回は空気が重い。
ユーマが口を開く。
「じゃあ行ってくる。」
リリムは腕を組んだままだった。
機嫌が悪い。
昨日からずっとだ。
「・・・本当にやるの?」
「やる。」
即答だった。
リリムはため息を吐く。
何度止めても無駄だと分かっている。
だから余計に腹が立つ。
ユーマは笑った。
「大丈夫だ。」
「その言葉嫌い。」
即答だった。
ユーマは苦笑する。
リリムは少しだけ視線を逸らした。
そして小さく言う。
「必ず帰ってきて。」
ユーマは頷く。
「帰る。」
そして教会の扉を指差した。
「必ずこの扉から帰ってくる。」
その言葉を聞いても。
リリムの不安は消えない。
だから言った。
「帰って来なかったら。」
AK-1010を肩へ担ぐ。
「助けに行くから。」
ロキも頷く。
「俺もだ。」
ユーマは笑った。
「サンキュー。」
そして。
大きな扉へ手を掛ける。
ギィィ・・・。
ゆっくり開く。
白い光。
祈りの声。
香の匂い。
ユーマは一歩踏み出した。
ここから先は。
一人だった。
教会の中は静かだった。
住民たちが祈っている。
誰もユーマを止めない。
むしろ歓迎しているようだった。
女神のもとへ向かう前に。
ユーマは教会の奥へ進む。
小さな部屋。
そこにあるのは。
淡く輝く光。
セーブポイント。
セフィが現れた。
「本当にやるんですか?」
「やる。」
「怖くないんですか?」
ユーマは少し考えた。
そして笑った。
「怖い。」
本音だった。
怖くないわけがない。
だが。
怖いからやらない。
そんな選択肢は最初からなかった。
セフィは小さくため息を吐く。
「記録します。」
光が溢れる。
ユーマの身体を包む。
そして。
セーブ完了。
「記録完了です。」
ユーマは頷いた。
「よし。」
これで準備は終わりだ。
ユーマは女神のもとへ向かう。
礼拝堂。
そこには女神がいた。
相変わらずだった。
優しい笑顔。
穏やかな瞳。
誰もが信じる理由が分かる。
女神はユーマを見る。
そして微笑んだ。
「どうしましたか?」
ユーマは頭を掻く。
少しだけ演技を混ぜながら言う。
「考えたんです。」
「はい。」
「俺も導かれたい。」
女神の目が少しだけ細くなる。
嬉しそうだった。
「そうですか。」
「決心がついたのですね。」
ユーマは頷く。
「はい。」
女神は微笑んだ。
「ではこちらへ。」
奥の部屋へ案内される。
静かな部屋だった。
白い壁。
白い花。
甘い香り。
柔らかな光。
まるで天国みたいだった。
女神はユーマの向かいへ座る。
「怖いですか?」
ユーマは少し笑う。
「少し。」
本音だった。
女神も笑う。
「大丈夫ですよ。」
優しい声。
母親みたいな声。
「辛かったでしょう。」
ユーマは黙る。
ミアの顔が浮かぶ。
「悲しかったでしょう。」
またミアが浮かぶ。
笑顔。
髪飾り。
「苦しかったでしょう。」
ユーマは拳を握る。
女神は手を伸ばした。
そして。
ユーマの胸へ触れる。
温かい。
不思議と安心する。
身体の力が抜ける。
眠くなる。
何も考えなくて良くなる。
その時だった。
「・・・?」
違和感。
何かがおかしい。
身体じゃない。
もっと奥。
もっと深い場所。
何かが抜けていく。
ユーマは眉をひそめる。
「なんだ・・・?」
違和感はすぐに痛みへ変わった。
痛い。
痛い。
痛い。
胸じゃない。
頭でもない。
魂だった。
自分自身が引き裂かれていく。
そんな痛み。
ユーマの脳裏に映像が流れる。
子供の頃。
ゲームをしていた記憶。
友達。
家族。
アリス。
リリム。
全部。
全部。
引き抜かれていく。
無理やり。
引きちぎられていく。
「やめ・・・。」
女神は微笑んでいる。
「大丈夫です。」
「すぐ終わります。」
終わるか。
終わってたまるか。
ユーマは歯を食いしばる。
だが。
痛みはさらに強くなる。
記憶が消える。
感情が消える。
存在そのものが削られていく。
「あああああああああああああ!!」
絶叫。
喉が裂けるほど叫ぶ。
その瞬間だった。
女神の顔が歪む。
パキッ。
音がした。
顔が割れる。
笑顔が裂ける。
目が増える。
頬が裂ける。
黒い角。
巨大な翼。
人間ではない。
化け物。
それでも。
声だけは優しかった。
「安心してください。」
化け物は微笑む。
「もう悲しまなくて済みます。」
「苦しまなくて済みます。」
「私が救います。」
ユーマは震える。
痛みで。
恐怖で。
そして。
確信した。
「やっぱり・・・。」
息が苦しい。
視界が暗い。
意識が消える。
それでも。
最後の力で言った。
「お前が・・・番人か・・・。」
化け物は微笑んだ。
それが答えだった。
次の瞬間。
世界が真っ暗になった。
・・・
・・
・
ガバッ!!
ユーマは飛び起きた。
荒い呼吸。
全身汗だく。
心臓が暴れている。
「はぁっ・・・!」
「はぁっ・・・!」
教会だった。
セーブポイントの部屋。
生きている。
戻った。
セフィが飛び上がる。
「ぎゃああああ!!」
「死にましたね!?」
「死にましたよね!?」
ユーマはしばらく返事ができなかった。
手が震えている。
身体も震えている。
怖かった。
何度死んでも。
死は怖い。
慣れることなんてない。
しばらくして。
ユーマは笑った。
震える口元で。
それでも笑った。
「攻略法が分かった。」
セフィは頭を抱える。
「その前に死んでるんです!」
ユーマは立ち上がる。
教会の奥を見る。
女神。
いや。
番人。
ようやく正体を掴んだ。
ゲームならここからだ。
ボスの正体。
能力。
行動パターン。
全部分かった。
なら後は簡単だ。
攻略するだけだ。
第36話を読んでいただきありがとうございました!
ついに女神の正体が判明!
そしてユーマは死と引き換えに重要な情報を手に入れました。
次回、ラグナシア編最大の戦いが始まります――。
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またもうすぐ投票もおこないますので!




