表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
ラグナシア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/38

第27話 『導かれる日』

ラグナシアへ来て数日。


ユーマたちは番人を探し続けていた。


だが――


平和。


とにかく平和だった。


事件もない。


魔物も出ない。


困っている人もいない。


本当にこの街に番人などいるのだろうか。


そんな疑問すら浮かび始めていた。


それでは第27話をお楽しみください。


ラグナシアへ来て数日が経った。


ユーマたちは今日も番人を探していた。


市場。


住宅街。


広場。


教会。


一通り見て回る。


だが。


何もない。


本当に何もない。


「なぁ。」


ユーマが言った。


「この街ほんとに番人いるのか?」


リリムも頷く。


「私も思った。」


「怪しい奴もいないし。」


「困ってる人もいない。」


本当にその通りだった。


街は平和そのもの。


住民は笑顔。


治安も良い。


喧嘩すら見ない。


ユーマはため息を吐いた。


「平和すぎるんだよなぁ。」


リリムが首を傾げる。


「平和じゃ駄目なの?」


「駄目じゃないけどさ。」


ユーマは腕を組む。


「普通こういう時ってイベント起きるじゃん。」


「イベント?」


「誘拐とか。」


「嫌。」


「魔物襲撃とか。」


「もっと嫌。」


「街崩壊とか。」


「最悪。」


リリムは呆れた顔をした。


ユーマは続ける。


「だってゲームならそうだろ?」


「序盤の街に着きました。」


「何も起きません。」


「終わり。」


「そんなゲームあるか?」


リリムは真顔だった。


「あるんじゃない?」


「ない。」


ユーマは断言した。


「しかも何も起きねぇからレベルも上がらねぇし。」


「それが普通。」


「普通じゃない。」


「普通。」


「普通じゃない。」


「普通。」


「お前最近オウム返し覚えた?」


「燃やすよ?」


「ごめんなさい。」


ロキは少し前を歩いていた。


話に参加する気はないらしい。


だが。


ユーマが聞く。


「ロキはどう思う?」


ロキは足を止めなかった。


「いる。」


短い返答だった。


「だからなんで分かるんだよ。」


「村長が言っていた。」


ロキが答える。


「番人は一つの街に一体。」


「必ず街を支配している。」


「だからいる。」


ユーマは頭を掻いた。


「でも支配されてるようには見えねぇぞ。」


「見えてないだけだ。」


ロキはそれだけ言った。


相変わらず愛想がない。


その時だった。


遠くから聞き慣れた声が聞こえた。


「お兄ちゃーーーん!!」


ユーマは振り返る。


いた。


ミアだった。


全力で走ってくる。


今日も元気だった。


「またいた。」


ユーマが言う。


「いた。」


リリムも言う。


ロキだけはため息を吐いた。


ミアは三人の前で止まる。


そして満面の笑みを浮かべた。


「今日はおばあちゃんの日なんだ!」


ユーマは首を傾げた。


「おばあちゃんの日?」


「うん!」


ミアは嬉しそうだった。


「おばあちゃんが導かれるの!」


その言葉を聞いた瞬間。


ユーマは少しだけ違和感を覚えた。


昨日も聞いた言葉。


導かれる。


だが。


結局意味は分からないままだった。


「それって何するんだ?」


ユーマが聞く。


ミアは不思議そうな顔をする。


「導かれるだけだよ?」


説明になっていない。


「だから何するんだ?」


「導かれるの!」


ますます分からない。


リリムも首を傾げている。


ロキだけは黙っていた。


「とにかく来て!」


ミアはユーマの腕を引っ張った。


「お祝いなんだから!」


「お祝い・・・?」


ますます意味が分からなかった。


教会へ向かう。


すると。


広場にはたくさんの人が集まっていた。


花が飾られている。


楽団までいる。


子供たちは走り回っている。


まるで祭りだった。


ユーマは周囲を見回す。


(なんだこれ。)


(葬式じゃないのか・・・?)


どう見ても違う。


誰も悲しそうじゃない。


むしろ。


みんな笑顔だった。


「あ!」


ミアが手を振った。


その先。


一人の老婆が立っていた。


杖をついている。


かなり高齢だ。


だが。


表情は穏やかだった。


「ミア。」


老婆が笑う。


ミアは駆け寄った。


「おばあちゃん!」


抱きつく。


老婆は優しく頭を撫でた。


「元気でね。」


「うん!」


「お父さんとお母さんの言うことを聞くんだよ。」


「うん!」


ミアは満面の笑みだった。


父親も母親もいる。


二人とも笑っている。


誰も泣いていない。


誰も別れを惜しんでいない。


それが逆に気味が悪かった。


その時だった。


人々が道を開く。


静かになる。


そこへ現れたのは。


女神だった。


白い服。


長い銀髪。


穏やかな笑顔。


住民たちが頭を下げる。


「女神様。」


「女神様。」


女神は優しく微笑んだ。


そして老婆の前へ立つ。


「お待ちしていました。」


老婆は頭を下げた。


「ありがとうございます。」


「長い間お疲れ様でした。」


「ようやく私の番です。」


二人は穏やかに話している。


まるで。


長年の友人のようだった。


女神は老婆へ手を差し伸べる。


「それでは。」


「導きましょう。」


老婆は嬉しそうに頷いた。


「はい。」


そして。


二人は教会の奥へ入っていく。


大きな扉が閉まる。


それで終わりだった。


ユーマは瞬きをした。


「・・・え?」


思わず声が漏れる。


「終わり?」


周囲から拍手が起きる。


歓声まで上がる。


「おめでとうございます!」


「良かったですね!」


「ついに導かれたんだ!」


誰も悲しんでいない。


ミアも笑顔だった。


父親も。


母親も。


みんな。


笑っていた。


ユーマだけが取り残される。


何かがおかしい。


でも。


何がおかしいのか分からない。


その夜。


ミアの家では少し豪華な食事が並んでいた。


肉料理。


スープ。


焼き立てのパン。


父親が笑う。


「今日は特別だからな。」


「お祝いですもんね。」


母親も嬉しそうだった。


ユーマは聞く。


「お祝いって。」


父親は当然のように答えた。


「母さんが導かれたんだ。」


「めでたい日だよ。」


母親も頷く。


「ええ。」


「私たちも嬉しいんです。」


ユーマは言葉に詰まった。


どうして。


そんなに嬉しそうなんだ。


どうして。


誰も悲しまないんだ。


その時だった。


母親が料理を見ながら笑った。


「今日はお母さんのおかげで豪華ですね。」


父親も笑う。


「そうだな。」


ユーマは顔を上げた。


「・・・おばあちゃんのおかげ?」


二人は当然のように頷いた。


「そうですよ。」


だが。


その意味だけは。


ユーマには分からなかった。


まだ。


分からなかった。

第27話を読んでいただきありがとうございました!


番人は見つからない。


街は平和。


それでも少しずつ積み上がる違和感。


「導かれる」とは何なのか。


ラグナシアの秘密が、少しずつ姿を見せ始めます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ