第23話 『癒しの楽園 ラグナシア』
死の森を突破し、ついに第一の街ラグナシアへ辿り着いたユーマたち。
そこは「癒しの楽園」と呼ばれる街。
美味しい食事。
優しい人々。
美しい街並み。
誰もが笑顔で暮らしている理想の街だった。
だが――。
ユーマたちはまだ知らない。
この街に潜む秘密を。
そして探し続けている「番人」が、すぐ近くにいることを。
それでは第23話をお楽しみください。
ラグナシアの門をくぐった瞬間。
俺は思わず立ち止まった。
「うわぁ・・・。」
思わず声が漏れる。
白い石畳がどこまでも続いている。
道の両脇には色鮮やかな花壇。
噴水の水は太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。
子供たちが笑いながら走り回る。
楽器を演奏する大道芸人。
露店で買い物を楽しむ人々。
ミスト村とは比べ物にならない。
ここは本当に別世界だった。
「すげぇな・・・。」
「田舎者。」
リリムは少し笑った。
最近分かった。
こいつ。
結構笑う。
そんな時だった。
風に乗って香ばしい匂いが流れてくる。
肉だ。
焼いた肉の匂い。
腹の奥を直接殴られたような衝撃だった。
「・・・。」
「・・・。」
俺とリリムは同時に振り返る。
そこには屋台。
巨大な鉄串に肉が何層にも刺さっている。
表面はこんがり焼けていた。
脂が滴り落ちる。
ジュゥゥゥゥッ!!
炭火が弾ける。
店主がナイフで肉を削ぐ。
薄く切られた肉はパンに挟まれ、香辛料と野菜が添えられる。
見ただけで分かる。
絶対うまいやつだ。
「食う?」
「食う。」
即決だった。
数分後。
俺たちはベンチに座っていた。
「うまっ!!」
思わず叫ぶ。
肉汁が口いっぱいに広がる。
香辛料の香り。
柔らかい肉。
パンとの相性も最高だった。
今まで食べた肉で一番うまい。
「うまい。」
リリムも珍しく目を丸くしている。
かなり気に入ったらしい。
「だろ!?」
「うん。」
店主が笑った。
「ラグナシア名物だからね!」
周囲を見る。
住民たちも同じ肉を食べている。
老人も。
子供も。
商人も。
みんな幸せそうだった。
中には三本目を食べている老人までいる。
「あんなに食えるもんなのか。」
俺が呟く。
店主は笑う。
「ラグナシアの肉は特別なんだよ。」
「へぇ。」
その時は深く考えなかった。
ただ美味かった。
それだけだった。
ギルドへ向かおうとした時。
セフィが肩の上に現れた。
「ユーマ。」
「なんだ?」
「残念なお知らせです。」
嫌な予感しかしない。
「今後は好きな場所でセーブできません。」
「・・・は?」
俺は足を止めた。
「どういうことだ?」
「ミスト村は初心者保護区域です。」
「ゲームみたいな言い方するな。」
「今後は街ごとに設置されているセーブポイントでしかセーブできません。」
「もっと早く言え!!」
セフィは平然としている。
「説明しようとしたら死の森へ突撃したのはユーマです。」
ぐうの音も出ない。
「ちなみに。」
セフィは街の中央を指差した。
白く大きな建物。
教会のような場所だ。
「あそこがラグナシアのセーブポイントです。」
「教会か。」
「はい。」
なるほど。
これからは気軽に死ねないってことだな。
俺は少しだけ身を引き締めた。
そして俺たちはギルドへ向かった。
ギルドは街の中心部近くにあった。
巨大な石造りの建物。
入口には剣と盾の紋章。
中には多くの冒険者が集まっている。
依頼書を見る者。
酒を飲む者。
武器を磨く者。
活気に溢れていた。
受付へ向かう。
そこには筋肉の塊みたいな男がいた。
受付じゃない。
どう見てもボスだ。
「冒険者か。」
男が言う。
「はい。」
「通行証は?」
「持ってません。」
男は頷いた。
「なら発行が必要だな。」
「お願いします。」
すると男は言った。
「三人パーティか?」
「二人です。」
俺が答える。
男は首を振った。
「発行できん。」
「え?」
「ラグナシア周辺で活動する冒険者は最低三人パーティ。」
「なんでです?」
「死ぬからだ。」
即答だった。
説得力がある。
「じゃあどうすれば?」
俺が聞く。
男はギルドの隅を指差した。
「あいつも一人だ。」
視線を向ける。
そこには一人の青年。
青い髪。
巨大な斧。
無愛想な顔。
黙って椅子に座っている。
男は言った。
「ロキ。」
青年が顔を上げた。
露骨に嫌そうだった。
「なんだ。」
「お前も一人だろ。」
「だから?」
「こいつら二人。」
ロキは俺たちを見る。
数秒。
見た。
それだけ。
「断る。」
即答だった。
「おい。」
思わずツッコむ。
ギルド長は慣れているらしい。
「お前も通行証欲しいんだろ。」
ロキは黙る。
図星らしい。
「立ち往生してるじゃねぇか。」
「余計なことを言うな。」
「パーティ組めなくて。」
「余計なことを言うな。」
リリムが小さく呟いた。
「友達いないんだ。」
「聞こえてる。」
初めてロキが反応した。
少し面白い。
ギルド長は笑う。
「別に一生組めとは言わん。」
「・・・。」
「ラグナシアにいる間だけだ。」
ロキは黙る。
リリムも黙る。
俺も黙る。
街を出たら解散。
それならまぁ・・・。
「俺は別にいい。」
俺が言う。
「私も。」
リリム。
最後にロキ。
深いため息を吐いた。
「・・・好きにしろ。」
ギルド長が机を叩く。
「決まりだな!」
こうして。
俺たちは。
全員不本意ながら。
三人パーティになった。
まだ知らない。
この街の本当の姿も。
これから出会う家族のことも。
そして。
探し続けることになる番人が。
もうすぐ近くにいることも。
第23話を読んでいただきありがとうございました!
ついにラグナシア編スタート!
そしてロキが仮加入!
次回はラグナシア観光と、新たな出会いが待っています!




