第21話 『攻略法』
死の森最後の試練。
レベル10の化け狸。
その能力は、相手が最も信頼する人物へ姿を変えること。
①戦う
②逃げる
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ですので作者の意向により①に決定!
ユーマとリリムは、この厄介な魔物を倒し、第一の街へ辿り着けるのか――。
それでは第21話をお楽しみください。
「戦う。」
俺は剣を握った。
リリムも銃を構える。
目の前には化け狸。
今はアリスの姿をしている。
嫌な予感しかしない。
「セフィ。」
「はい。」
「一応セーブだけしとけ。」
セフィは少し驚いた顔をした。
「珍しいですね。」
「嫌な予感がする。」
「分かりました。」
緑色の光が舞う。
「セーブ完了です。」
俺は息を吐いた。
ボス前セーブ。
ゲーマーの基本だ。
「行くぞ。」
化け狸が笑った。
アリスの顔で。
優しく。
まるで本物みたいに。
戦いは最悪だった。
アリスの姿をした化け狸へ剣を振るう。
だが。
どうしても一瞬躊躇してしまう。
その隙を狙われる。
巨大な爪。
吹き飛ばされる。
血を吐く。
立ち上がる。
また戦う。
また死ぬ。
何度も。
何度も。
何度も。
何度も死んだ。
20回は死んだだろうか。
だが、攻略法が見つからない。
化け狸は姿を変え続ける。
アリスになり。
巨大な熊になり。
大蛇になり。
またアリスになる。
リリムも苦戦していた。
化け狸は今度は俺の姿になっている。
「くっ・・・!」
リリムの銃が止まる。
撃てない。
一瞬でも迷えば終わる。
だが。
迷う。
俺と同じように。
「なんなんだよこいつ・・・。」
俺は荒く息を吐いた。
レベル10だから強いんじゃない。
能力が厄介すぎる。
その時だった。
ふと昔やったゲームを思い出した。
幻影系のボス。
変身系のモンスター。
そういう敵には必ず共通点があった。
本体を暴けばいい。
俺は記憶を辿る。
そして思い出した。
盗賊のアジトで見つけたアイテム。
「あ。」
閃光弾だ。
「そうか!」
俺は立ち上がる。
「リリム!」
「なによ!?」
「閃光弾撃てるか!?」
リリムはポーチを探る。
そして頷いた。
「一発だけある!」
「それだ!」
ようやく見つけた。
攻略法を。
再び化け狸へ向かう。
化け狸はアリスの姿になっていた。
「ユーマ。」
優しい声。
本物みたいな笑顔。
胸が痛くなる。
でも。
俺は剣を握った。
「ごめん。」
アリスを見る。
真っ直ぐ見る。
「アリスはそんな顔しない。」
化け狸が動いた。
巨大な爪が迫る。
避けない。
俺は前へ飛び込んだ。
胸を貫かれる。
激痛。
視界が揺れる。
それでも。
俺はその腕を掴んだ。
両手で。
全力で。
「捕まえた・・・!」
化け狸が暴れる。
離れようとする。
だが離さない。
絶対に。
「リリム!!」
俺は叫んだ。
「今だぁぁぁ!!」
リリムが銃を構える。
「任せて!」
銃声。
次の瞬間。
閃光弾が炸裂した。
轟音。
白い光が森を包む。
化け狸が悲鳴を上げた。
そして。
変身が解ける。
小さな狸の姿。
今しかない。
「風切り!!」
風の刃が直撃する。
化け狸は吹き飛んだ。
だが。
立ち上がる。
まだ終わらない。
「マジかよ!」
レベル10。
一撃じゃ足りない。
その時だった。
リリムが前へ出た。
炎が集まる。
銃口へ。
赤い炎。
黒い炎。
二つの炎が混ざり合う。
「魔炎鳥。」
銃声が響いた。
放たれた弾丸は巨大な炎の鳥へ姿を変える。
翼を広げ。
燃えながら空を駆ける。
そして。
化け狸へ突撃した。
ドォォォォォン!!
爆炎。
熱風。
衝撃波。
森が揺れる。
化け狸は地面を転がった。
だが。
まだ生きている。
膝をつきながら。
それでも立ち上がる。
「しぶとすぎるだろ・・・。」
俺は荒く息を吐いた。
その時。
燃え盛る炎を見て気付く。
火は風で大きくなる。
だったら。
「リリム!」
「なによ!」
「火を貸せ!」
「はぁ!?」
「いいから!」
リリムは一瞬だけ戸惑った。
だが。
すぐに手のひらへ炎を生み出す。
俺はその炎へ剣を向けた。
風を纏う。
もっと。
もっとだ。
風を集めろ。
「行くぞ!!」
リリムが笑った。
「燃えるよ!!」
炎が風へ乗る。
巨大な炎の刃になる。
俺は全力で剣を振り抜いた。
「これが!!」
風が唸る。
炎が荒れる。
「俺とリリムの!!」
化け狸が目を見開く。
「風切りだぁぁぁぁぁ!!」
巨大な炎の斬撃が森を切り裂く。
直撃。
轟音。
爆発。
そして静寂。
化け狸は倒れていた。
もう動かない。
完全に。
終わった。
「勝った・・・。」
俺はその場へ座り込む。
身体中が痛い。
でも。
笑いが止まらなかった。
リリムも隣へ座る。
「疲れた。」
「俺も。」
その時。
身体が光り始めた。
レベルアップ。
レベルアップ。
「おお!?」
レベル6から8へ。
二つも上がった。
リリムも驚いている。
「私も上がった。」
レベル9から10へ。
「やったな。」
「やった。」
俺たちは顔を見合わせた。
少しだけ笑う。
死の森で出会った二人。
最初はただの同行者だった。
でも今は違う。
確実に。
仲間になっていた。
「そういえば。」
俺はふと思い出した。
「なんだ?」
「あの化け狸。」
「うん。」
「リリムと戦う時、俺の姿になってたよな。」
リリムが少し固まった。
「・・・そうね。」
「なんでだろうな。」
その瞬間。
セフィが俺の肩へ飛んできた。
そして耳元で小さく囁く。
「化け狸は、一番信頼している相手に変身できるんですよ。」
「・・・え?」
俺の顔が熱くなる。
思わずリリムを見る。
リリムも真っ赤だった。
目が合う。
すぐ逸らす。
気まずい。
ものすごく気まずい。
沈黙。
数秒。
誰も何も言わない。
そして。
セフィがニヤニヤしながら言った。
「とりあえずセーブしておきますね。」
緑の光が舞う。
「セーブ完了です。」
「今するな!」
「燃やすわよ!!」
二人の声が綺麗に重なった。
セフィは楽しそうに笑っていた。
その頃。
死の森の奥。
十数匹の化け狸が群れを作っていた。
森を走り回り。
獲物を探している。
だが。
その前に一人の青年が立っていた。
青い髪。
鋭い目。
巨大な斧。
青年は化け狸たちを見る。
感情はない。
ただ静かに。
一言だけ呟いた。
「グングニル。」
空が光る。
次の瞬間。
轟音。
無数の雷が落ちた。
化け狸たちは悲鳴を上げる暇すらない。
一瞬で全滅した。
青年は振り返らない。
巨大な斧を肩へ担ぐ。
そして。
ただ前へ歩き出した。
まるで。
誰かを探しているように。
第21話を読んでいただきありがとうございました!
死の森の主・化け狸撃破!
そしてユーマとリリムの絆も少しだけ深まったようです。
さらに謎の青髪の青年も登場。




