第18話 『失敗と風』
盗賊たちに捕らわれたリリム。
助けに来たユーマだったが、
盗賊の親玉は残酷な条件を突き付ける。
「持っているものを全部置いていけ。」
ユーマの選択は――。
それでは第18話をお楽しみください。
「分かった。」
ユーマは剣を下ろした。
親玉が笑う。
「賢いじゃねぇか。」
俺は鉄の剣を地面に置く。
食料を置く。
金を置く。
持っていたものを全て。
リリムが叫んだ。
「ユーマ!」
「大丈夫だ。」
俺は言った。
「約束したんだろ。」
親玉はニヤニヤしている。
気に入らない。
でも。
今はリリムが優先だ。
「全部置いた。」
「そうだな。」
「リリムを返せ。」
数秒の沈黙。
そして。
親玉は吹き出した。
「ぷっ。」
周りの盗賊たちも笑い始める。
「はははは!」
「こいつ本当に信じたぞ!」
嫌な汗が流れる。
まさか。
親玉は剣を抜いた。
「約束守るなんて言ったか?」
その瞬間だった。
剣が振り下ろされる。
リリムの胸を貫いた。
世界が止まった。
「え・・・。」
リリムの口から血が零れる。
「リリム・・・?」
返事はない。
身体が崩れ落ちる。
笑わない。
喋らない。
「燃えるよ?」も言わない。
「おい・・・。」
頭が真っ白になる。
次の瞬間。
背中に衝撃が走った。
盗賊の剣。
膝をつく。
もう一撃。
もう一撃。
視界が暗くなる。
倒れた先には。
リリムがいた。
動かない。
冷たい。
「なんで・・・。」
「なんでだよ・・・。」
世界が闇に沈んだ。
◇
「持ってるもん全部置いていけ。」
声が聞こえた。
俺はゆっくり目を開く。
目の前には。
盗賊の親玉。
縛られているリリム。
盗賊たち。
同じ光景。
同じ場所。
同じ言葉。
「・・・は?」
親玉が眉をひそめる。
「聞こえなかったか?」
俺は周囲を見る。
リリムがいる。
生きている。
血も流れていない。
「ユーマ?」
リリムが不思議そうに言う。
「どうしたの?」
その瞬間。
理解した。
戻ったんだ。
セーブポイントに。
最後にセーブした場所。
つまり。
盗賊のアジトへ辿り着いた時点に。
「そういうことか・・・。」
俺は小さく呟いた。
親玉は不機嫌そうに言う。
「おいガキ。」
「さっさと決めろ。」
「持ち物全部置いていくのか?」
俺は親玉を見る。
知っている。
こいつは嘘をつく。
渡しても殺す。
もう見た。
もう知っている。
ゲームなら同じミスはしない。
「断る。」
親玉の顔が変わった。
「なんだと?」
「断るって言った。」
リリムも驚いていた。
「え?」
「ユーマ?」
親玉は鼻で笑う。
「そうか。」
そして。
剣を振り上げた。
「じゃあこの女は死ぬな。」
知っている。
ここだ。
また同じ未来になる。
剣が振り下ろされる。
リリムまで遠い。
間に合わない。
足りない。
もっと速く。
もっと。
もっとだ。
ゲームなら。
こういう敵にはパターンがある。
こいつも同じだ。
剣を上げる。
一歩踏み込む。
首を狙う。
分かっている。
分かっているのに。
身体が追いつかない。
もっと速く。
もっと。
ガルドの声が頭をよぎる。
風を感じろ。
風を纏え。
風と共に動け。
もっと速く。
もっと――
その瞬間だった。
風が吹いた。
小屋の中なのに。
強い風。
世界が遅くなる。
違う。
俺が速くなった。
景色が流れる。
盗賊が止まって見える。
次の瞬間。
俺はリリムの前にいた。
キィィン!!
剣と剣がぶつかる。
親玉の一撃を受け止めた。
「なっ!?」
親玉が目を見開く。
俺も驚いていた。
今のはなんだ。
「ユーマ!!」
セフィが叫ぶ。
「今のです!」
「今の?」
「風歩です!!」
風歩。
ガルドが言っていた技。
俺は知らないうちに使っていた。
リリムも目を丸くしていた。
「なに今の。」
「俺にも分からん。」
「気持ち悪い速さだった。」
「褒めてる?」
「ちょっとだけ。」
珍しかった。
リリムが人を褒めるなんて。
俺は縄を切る。
リリムが立ち上がる。
肩を回す。
首を鳴らす。
そして盗賊たちを見る。
「さて。」
笑っていた。
いつもの小悪魔みたいな笑顔。
でも。
目だけは笑っていない。
「さっきから聞いてれば人を物みたいに扱って。」
火が灯る。
手のひらに。
赤い炎。
「燃えるよ?」
盗賊たちが後ずさる。
俺も剣を構えた。
今度は一人じゃない。
リリムがいる。
「ユーマ。」
「なんだ。」
「派手にやる?」
俺は笑った。
「派手にやろう。」
死の森の夜。
反撃が始まる。
第18話を読んでいただきありがとうございました!
ついにセーブ能力が本格的に物語へ介入!
そしてユーマは風歩を初習得しました!
さらに初のユーマ&リリム共闘も実現!
次回、第19話。
盗賊団との決着です!




