第17話 『人攫い』
死の森で初めての夜を迎えたユーマたち。
昼間は賑やかだったリリムも、夜になるとどこか静かだった。
だが。
死の森はモンスターだけが危険な場所ではなかった――。
それでは第17話をお楽しみください
夜。
死の森は静かだった。
静かすぎるほどに。
俺は小さな焚き火の前で横になっていた。
セフィは俺の肩の上で眠っている。
少し離れた場所では。
リリムが見張りをしていた。
「先に寝ていいわよ。」
そう言われたのを覚えている。
そして。
気付けば眠っていた。
◇
ガサッ。
何か音がした。
俺はゆっくり目を開く。
辺りは真っ暗だった。
焚き火もほとんど消えかかっている。
「ん……。」
寝返りを打つ。
その時だった。
違和感を覚えた。
静かすぎる。
いや。
違う。
いつも聞こえるものが聞こえない。
「……リリム?」
返事はなかった。
俺は体を起こす。
周囲を見回す。
いない。
焚き火の近くにも。
木の陰にも。
どこにも。
「リリム?」
少し大きな声で呼ぶ。
返事はない。
セフィも目を覚ました。
「どうしました?」
「リリムがいない。」
セフィは周囲を見る。
そして少し表情を変えた。
「本当ですね。」
「トイレか?」
「30分以上ですか?」
「……。」
言われてみればそうだった。
妙な胸騒ぎがする。
俺は立ち上がる。
その時だった。
地面に何かが落ちているのを見つけた。
赤い髪。
正確には。
赤い髪を留めていた小さな紐だった。
「これ。」
俺は拾い上げる。
リリムのものだ。
間違いない。
「ユーマ。」
セフィが言う。
「争った跡があります。」
見る。
草が踏み荒らされている。
足跡もある。
一つじゃない。
複数。
「……まさか。」
胸騒ぎが確信に変わる。
「攫われた。」
俺は鉄の剣を握った。
◇
その頃。
死の森の奥。
古びた小屋。
「だから言ったじゃない。」
リリムは椅子に縛られていた。
手も足も縄で固定されている。
目の前には男たち。
いかにも盗賊。
そんな連中が五人。
「大人しくしてろ。」
「嫌。」
即答だった。
盗賊が眉をひそめる。
「状況分かってるか?」
「分かってる。」
「なら黙れ。」
リリムは少し考えた。
そして。
「燃えるよ?」
盗賊たちは顔を見合わせた。
「なんだこいつ。」
「知らねぇ。」
リリムは真顔だった。
「本当に燃える。」
「黙れ。」
「後で後悔する。」
「黙れ。」
「燃える。」
「黙れって!」
盗賊が怒鳴った。
リリムは少し不満そうだった。
そして。
ボッ。
小さな火が手のひらに現れる。
「うおっ!?」
盗賊たちが飛び退いた。
「ほら。」
「消せ!」
「燃えるよ?」
「だから消せ!」
小屋の中は一瞬で大騒ぎになった。
だが。
所詮は小さな火。
縄を焼き切るには時間が足りない。
その前に盗賊たちに取り押さえられた。
「このガキ!」
「熱い!」
「だから言ったのに。」
反省する気はなさそうだった。
◇
一方その頃。
俺は足跡を追っていた。
森の中を走る。
息が切れる。
でも止まれない。
「ユーマ。」
セフィが言う。
「かなりの人数です。」
「分かってる。」
「危険です。」
「分かってる!」
俺は叫ぶ。
分かっている。
レベル5だ。
相手が盗賊なら大人だ。
勝てる保証なんてない。
でも。
足は止まらなかった。
「面倒な奴だと思ってたんだけどな。」
思わず呟く。
「燃やすよしか言わねぇし。」
「そうですね。」
「うるさいし。」
「そうですね。」
「でも。」
俺は前を見る。
「放っとけねぇだろ。」
セフィは少しだけ笑った。
◇
やがて。
森の奥に小屋が見えた。
明かりが漏れている。
人の声も聞こえる。
俺は物陰に身を隠した。
窓から中を見る。
いた。
リリムだ。
縛られている。
しかも。
めちゃくちゃ暴れている。
「燃えるよ?」
「黙れ!」
「だから燃えるって言ってるの。」
「だから黙れ!」
元気そうだった。
少し安心した。
少しだけ。
◇
その時だった。
ガサッ。
俺の足元で枝が折れる。
しまった。
全員の視線がこちらを向いた。
沈黙。
数秒。
そして。
「お客様だ。」
大柄な男が立ち上がった。
盗賊の親玉らしい。
男はニヤリと笑う。
「なるほど。」
「……。」
「仲間を助けに来たってわけか。」
俺は剣を握る。
親玉はリリムの髪を掴んだ。
「返してほしいか?」
「離せ。」
「簡単だ。」
男は笑う。
「持ってるもん全部置いていけ。」
俺は黙る。
親玉は続けた。
「武器。」
「金。」
「食料。」
「全部だ。」
「そしたら返してやる。」
リリムが言う。
「信じちゃダメ。」
「黙れ。」
頭を叩かれる。
「痛い。」
「黙ってろ。」
リリムは睨み返す。
「燃やすよ?」
「黙れって言ってるだろ!」
小屋の中に怒鳴り声が響いた。
俺は剣を握る。
どうする。
持ち物を渡すのか。
それとも――。
【投票】
① 持ち物を差し出す
② 差し出さない
あなたならどうする?
第17話を読んでいただきありがとうございました!
死の森の夜。
モンスターではなく、人攫いが現れました。
そしてまさかのリリム誘拐!
……されたにも関わらず、相変わらず「燃えるよ?」を連発するリリムでした。
一方のユーマも、自分では気付いていませんが、思った以上にリリムのことを心配している様子。
果たしてユーマはリリムを助け出せるのでしょうか?
そして盗賊の要求に対する答えは――?
次回、第18話。
ユーマの選択が運命を分ける!
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