152話 『天国地獄』
百万ゴールド。
ユーマ達は再び街を歩いていた。
「くっそぉ……。」
ユーマは頭を掻く。
「何やっても増えねぇ。」
レイ。
「この街そのものが敵だ。」
ロキ。
「運を支配されてる以上。」
「普通のギャンブルじゃ勝てない。」
リリム。
「もうどうするの?」
オヤジは少し考える。
そして。
ゆっくり口を開いた。
「……一つだけ。」
「ある。」
全員が振り向く。
ユーマ。
「本当か!?」
オヤジは頷く。
「だが。」
「おすすめはしねぇ。」
「いや。」
「絶対やめとけ。」
ユーマ。
「なんだよ。」
オヤジは重い足取りで歩き出す。
「ついて来い。」
しばらく歩く。
カジノの奥。
豪華な装飾も。
笑い声も。
次第に消えていく。
辿り着いた先は。
黒い鉄の扉。
入口には誰も近寄らない。
看板だけが静かに立っていた。
『天国地獄ゲーム』
ユーマ。
「なんだこれ?」
オヤジは息を吐く。
「このカジノ。」
「最高倍率のゲームだ。」
レイ。
「最高倍率?」
オヤジ。
「ああ。」
「参加費。」
「百万ゴールド。」
ユーマ。
「全部じゃねぇか。」
オヤジ。
「勝てば。」
「一千万ゴールド。」
全員の目が見開く。
リリム。
「い、一千万!?」
ロキ。
「一気に目標達成か。」
オヤジは静かに頷く。
「そうだ。」
「だが。」
「負ければ。」
少しだけ間を置く。
「死ぬ。」
沈黙。
誰も言葉を発しない。
オヤジは扉を見つめたまま続ける。
「ゲームは簡単だ。」
「拳銃が一丁。」
「弾は一発。」
「八つの薬室のうち。」
「一つだけ。」
「本物の弾が入っている。」
ユーマ。
「ロシアンルーレット……。」
オヤジ。
「自分で薬室を回す。」
「拳銃を。」
「自分の頭へ向ける。」
「そして。」
「引き金を引く。」
レイ。
「八分の七で生還。」
ロキ。
「八分の一で死亡。」
オヤジ。
「生き残れば。」
「一千万ゴールド。」
「外れを引けば。」
「そこで終わりだ。」
リリムは顔をしかめた。
「何その野蛮なゲーム。」
「頭が狂ってるわ。」
オヤジは小さく笑った。
「挑戦する奴も狂ってる。」
「だがな。」
黒い扉の向こうを指差す。
「もっと狂ってる奴らがいる。」
ユーマ。
「……?」
オヤジ。
「このゲームは。」
「中だけじゃねぇ。」
「外でも賭けが行われてる。」
リリム。
「外?」
オヤジ。
「ああ。」
「挑戦者が。」
「生きるか。」
「死ぬか。」
「それを客が賭ける。」
レイ。
「そんな……。」
オヤジ。
「死ぬ方に賭ければ。」
「倍率は百倍。」
「だから。」
「挑戦者が死ねば。」
「客は大喜び。」
「生き残れば。」
「舌打ちだ。」
ロキは眉をひそめる。
「狂ってるな。」
オヤジ。
「狂気の沙汰さ。」
「人の命すら。」
「ギャンブルの駒。」
「それが。」
「ゴールドラッシュだ。」
リリムは拳を握り締めた。
「最低。」
「こんな街……。」
「大嫌い。」
静かな沈黙が流れる。
ユーマは百万ゴールドの入った袋を見つめる。
あと一歩で。
番人への挑戦権。
レイが静かに言う。
「やめろ。」
ユーマ。
「……。」
レイ。
「さすがに。」
「これは運じゃ済まない。」
ロキも頷く。
「命を賭ける必要はない。」
リリムはユーマの腕を掴んだ。
「絶対ダメ。」
「こんなの。」
「ゲームじゃない。」
ユーマは何も答えなかった。
ただ。
黒い扉だけを見つめている。
その先には。
一千万ゴールド。
そして。
楽の番人。
オヤジは静かに言った。
「挑むか。」
「やめるか。」
「決めるのは。」
「あんた自身だ。」
ユーマはゆっくりと顔を上げた。
そして。
黒い扉へ向かって。
一歩。
踏み出した。




