第153話 『1発の引き金』
黒い鉄の扉。
その前で。
ユーマは迷わなかった。
「もちろん。」
「参加するだろ。」
全員が振り向く。
ユーマは笑った。
「俺がやる。」
リリム。
「何言ってんのよ!!」
「やめなさい!!」
「危険すぎる!!」
ユーマ。
「危険なのは分かってる。」
レイも真剣な表情だった。
「やめろ。」
「あまりにも無謀だ。」
「負けた時の代償が大き過ぎる。」
ユーマは拳を握る。
「でもよ。」
「これくらいしねぇと。」
「番人には届かない。」
沈黙。
誰も反論できなかった。
ロキは静かに魔導書を開く。
「なら。」
「俺がその拳銃を調べる。」
ユーマ。
「調べる?」
ロキ。
「ああ。」
「魔法で。」
「どこの薬室に弾が入ってるか。」
「探知してやる。」
オヤジは首を横に振った。
「無理だ。」
ロキ。
「……。」
オヤジ。
「このゲームだけは。」
「魔法。」
「スキル。」
「特殊能力。」
「全部無効になる。」
「純粋に。」
「運だけで決まる。」
レイ。
「徹底してるな……。」
オヤジ。
「だから。」
「誰も挑戦しねぇ。」
ユーマは黒い扉を見つめる。
「運だけ……か。」
静かに呟く。
「いや。」
少し笑った。
「俺なら勝てる。」
リリム。
「なんでそんなこと言えるのよ!!」
ユーマは振り返る。
「勝てるようになる。」
意味の分からない一言だった。
レイ。
「……?」
ロキ。
「どういう意味だ。」
ユーマはニヤッと笑うだけだった。
「秘密。」
そう言うと。
一人。
その場を離れる。
リリム。
「どこ行くのよ!」
ユーマ。
「すぐ戻る!」
誰も知らない。
ユーマだけの秘密。
街の外れ。
小さな石碑。
セーブポイント。
ユーマは石碑へ手を置いた。
光が身体を包む。
《セーブしました》
「よし。」
「これで準備完了。」
再び。
黒い扉へ戻る。
受付係が静かに言う。
「参加費。」
「百万ゴールド。」
ユーマは袋を置いた。
ジャラン。
受付係。
「確認しました。」
黒いケースが運ばれてくる。
中には。
銀色のリボルバー。
実況の声が会場へ響いた。
「さぁぁぁぁぁ!!」
「半年ぶりの挑戦者です!!」
「天国地獄ゲーム!!」
観客席は満席だった。
何百人もの人間が。
笑いながら見下ろしている。
「死ねぇぇぇ!!」
「百倍だ!!」
「頼むぞ!!」
「撃てぇぇぇぇ!!」
リリムはその光景を見て顔を青くした。
「最低……。」
「みんな。」
「人が死ぬのを楽しみにしてる……。」
ユーマは椅子へ座る。
目の前には拳銃。
受付係。
「それでは。」
「薬室を回してください。」
ガチャガチャガチャ……
ユーマはゆっくりとシリンダーを回した。
受付係。
「止めてください。」
カチッ。
シリンダーが止まる。
受付係。
「拳銃を。」
「頭へ。」
ユーマは拳銃を持ち上げる。
こめかみへ当てた。
会場中が静まり返る。
実況も息を呑む。
レイは拳を握る。
ロキは目を閉じた。
リリムは泣きそうな顔で叫ぶ。
「やめて!!」
「ユーマ!!」
ユーマは小さく笑う。
「大丈夫。」
そして。
迷うことなく。
引き金を引いた。
カチッ――
一瞬。
誰もが息を止める。
次の瞬間。
バァァァン!!!!!!
銃声が。
会場中へ響き渡った。
ユーマの身体は。
力なく椅子から崩れ落ちた。
真っ赤な血が。
床を染めていく。
リリム。
「ユーマァァァァァァ!!!!」




