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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
金と欲望の街 ゴールドラッシュ編

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151話 『ゴールドの正体』

ルーレットを後にした一行。


所持金。


ゼロゴールド。


ユーマはその場に崩れ落ちた。


「終わった……。」


リリムもしゃがみ込む。


「また振り出しじゃん……。」


レイはため息をつく。


「一瞬だったな。」


ロキ。


「四百万が。」


「一瞬で消えた。」


セフィ。


「もう本当にお金がありませんね。」


ユーマは頭を抱えた。


「飯も食えねぇ……。」


「宿も泊まれねぇ……。」


「どうすりゃいいんだよ……。」


その時だった。


「あんたら。」


「またすっからかんか?」


聞き覚えのある声。


振り返ると。


ファイトベットで助けたオヤジが立っていた。


ユーマ。


「あ!」


「さっきのオヤジ!」


オヤジは豪快に笑う。


「よぉ!」


「また会ったな!」


ユーマ。


「どうしたんだ?」


オヤジは袋を見せる。


ジャラッ。


中には大量のゴールドコイン。


「実はな。」


「あれからも運が良くてよ。」


「勝ち続けた。」


「へへっ。」


「今じゃ百五十万ゴールド持ちだ。」


ユーマ達は目を丸くする。


さっきまで。


地下帝国寸前だった男。


それが。


たった数時間で。


別人のような笑顔になっていた。


オヤジは袋からコインを取り出す。


「ほら。」


ユーマへ差し出した。


「百万ゴールド。」


「さっきのお礼だ。」


ユーマ。


「え?」


オヤジ。


「あんたが勝ってくれなかったら。」


「俺は今頃地下帝国だった。」


「受け取ってくれ。」


ユーマは少し戸惑う。


「でもよ……。」


オヤジ。


「遠慮すんな。」


「命の恩人だからな。」


ユーマは笑った。


「じゃあ。」


「ありがたく!」


百万ゴールドを受け取る。


リリム。


「助かったぁ!」


レイ。


「命拾いしたな。」


ロキは静かにオヤジを見つめていた。


「人って。」


「こんな短時間で変わるもんなんだな。」


さっきまで絶望していた男。


今は胸を張って歩いている。


金とは。


それほどまでに人を変えるものだった。


ユーマはふと疑問を口にする。


「なぁ。」


「一つ聞いていいか?」


オヤジ。


「なんだ?」


ユーマ。


「この街じゃ。」


「ゴールドが必要なのは分かる。」


「飯食うにも。」


「宿泊まるにも。」


「全部金だ。」


「でもさ。」


「みんな必死過ぎねぇか?」


「あそこまで大金賭けたり。」


「負けたら人生終わったみたいになったり。」


「極端なんだよ。」


レイも頷く。


「俺も気になっていた。」


「少しずつ増やせばいい。」


「無理に大勝負する必要はないはずだ。」


オヤジは少し驚いた顔をした。


「お前ら……。」


「知らねぇのか?」


ユーマ。


「何を?」


オヤジは手に持ったゴールドコインを見つめる。


そして。


静かに言った。


「この。」


「ゴールドって通貨の仕組みを。」


全員が耳を傾ける。


オヤジ。


「これは。」


「ただの金じゃねぇ。」


「運そのものなんだ。」


ユーマ。


「運?」


オヤジは頷く。


「ゴールドを持てば持つほど。」


「運が良くなる。」


「ギャンブルにも勝ちやすくなる。」


「欲しいアイテムも手に入りやすい。」


「事故にも遭いにくい。」


「良い出会いにも恵まれる。」


「全てが。」


「上手く回る。」


ユーマ達は黙って聞いていた。


オヤジは続ける。


「例えば。」


「一千万ゴールド持ってる奴がいるとする。」


「道を歩けば。」


「宝くじを拾う。」


「転んでも怪我一つしねぇ。」


「ギャンブルも勝ちやすい。」


「運が。」


「勝手に味方する。」


リリム。


「そんなことまで?」


オヤジ。


「ああ。」


「逆に。」


「ゴールドが少なくなると。」


「運もなくなる。」


「ギャンブルは負ける。」


「道で転ぶ。」


「角に足をぶつける。」


「財布を落とす。」


「事故に遭う。」


「悪いことばかり続く。」


レイは腕を組む。


「つまり。」


「ゴールドそのものが。」


「運なんだな。」


オヤジ。


「そういうことだ。」


ロキもようやく理解した。


「だから。」


「借金してでも。」


「ゴールドを欲しがる。」


「運がなければ。」


「何をやっても勝てない。」


オヤジ。


「その通り。」


「だから金持ちは。」


「ますます金持ちになる。」


「運があるから。」


「さらに勝てる。」


「逆に。」


「負けた奴は。」


「運まで失う。」


「だから。」


「もっと負ける。」


「負の連鎖だ。」


ユーマは顔をしかめた。


「そんなのおかしいだろ。」


オヤジは苦笑する。


「おかしいさ。」


「でも。」


「この街じゃ。」


「それが普通なんだ。」


静かな沈黙が流れる。


ユーマは手の中の百万ゴールドを見つめた。


「じゃあ……。」


「楽の番人は。」


「どれだけ運を持ってんだ……。」


オヤジの表情が曇る。


「あいつは。」


「住民全員から運を集めてる。」


「十億ゴールド以上。」


「いや。」


「もっとかもしれねぇ。」


レイは静かに呟く。


「だから。」


「誰も勝てないのか。」


ロキはルーレットで跳ねたボールを思い出していた。


「あれは偶然じゃなかった。」


「最初から。」


「運そのものが。」


「楽の番人の味方をしていた。」


ユーマは拳を握る。


「なるほどな。」


「やっと分かった。」


「この街のボスが。」


「楽の番人って呼ばれてる理由が。」


その頃。


グランドカジノ最上階。


楽の番人は静かに笑っていた。


黄金のコインを一枚。


指先で弾く。


カラン……


コインは。


必ず表を向いて止まった。


「運とは。」


ワイングラスを傾ける。


「買うものですよ。」

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