第150話 『運命さえ買われる』
ファイトベットを後にした一行。
所持金は。
200万ゴールド。
ユーマは袋を何度も振って笑っていた。
「よっしゃぁぁぁ!!」
「一気に200万ゴールドだ!!」
リリムも飛び跳ねる。
「すごーい!」
レイは冷静に計算する。
「目標まで。」
「あと800万ゴールド。」
ユーマはニヤリと笑う。
「この調子ならすぐだ!」
「あと四回勝ちゃ終わりだろ!」
その時だった。
「ユーマ様。」
後ろから黒服が歩いてきた。
ユーマ。
「ん?」
黒服は深々と頭を下げる。
「この度は。」
「ファイトベットでのご活躍。」
「誠におめでとうございます。」
ユーマ。
「へへっ。」
「だろ?」
黒服。
「つきましては。」
「ユーマ様は本日をもちまして。」
「新人リーグを卒業となります。」
ユーマ。
「……は?」
黒服。
「規定により。」
「今後、このリングへの参加はできません。」
ユーマ。
「はぁぁぁ!?」
「なんだそれ!!」
「勝ったら出場できねぇってどういうことだよ!!」
黒服は表情一つ変えない。
「ルールです。」
「ご了承下さい。」
ユーマ。
「ふざけんな!!」
「バリントンは何回も戦ってたじゃねぇか!!」
黒服。
「ルールです。」
それしか言わない。
ユーマ。
「くっそぉぉぉ!!」
リリム。
「絶対おかしい!」
レイ。
「腐ってるな。」
ロキ。
「勝たせたくない奴は追い出す。」
オヤジは苦笑した。
「だから言ったろ。」
「ここはゴールドラッシュだ。」
「金がルールなんだ。」
ユーマは舌打ちする。
「わかったよ。」
「他で稼げばいいんだろ。」
「ばーか。」
黒服は軽く頭を下げるだけだった。
「ご武運を。」
一行はその場を後にした。
しばらく歩くと。
巨大な円形のステージが見えてくる。
中央では。
大きなルーレットが回っていた。
カラカラカラ……
ボールが軽快な音を立てて転がっている。
ユーマ。
「次はこれか。」
ディーラーが笑顔で迎える。
「ルーレットへようこそ。」
「ルールは非常に簡単です。」
盤面を指差す。
「番号を当てれば四倍。」
「色を当てれば二倍。」
「以上です。」
ユーマ。
「簡単じゃねぇか。」
レイ。
「運だけの勝負だな。」
その時。
ロキが前へ出た。
「ここは俺に任せろ。」
ユーマ。
「お?」
ロキは静かに魔導書を開く。
ページがひとりでにめくれた。
誰にも見えないほど小さな黒い手が。
本の中からゆっくりと現れる。
実況。
「それでは!」
「ルーレットスタート!!」
カラカラカラ……
ボールが勢いよく回り始めた。
ロキは静かに呟く。
「黒。」
魔導書の小さな手が。
誰にも気付かれず。
スッ……
ボールを掴む。
そのまま。
黒のマスへ。
コトン。
ボールを置いた。
カラ……
ディーラー。
「黒!!」
「おめでとうございます!」
チャリン。
所持金は。
400万ゴールド。
ユーマ。
「よっしゃぁぁぁ!!」
リリム。
「ロキすごい!!」
レイ。
「さすがだ。」
ロキは小さく笑う。
「まだだ。」
「もう一回。」
ユーマ。
「よし!」
「全部黒だ!!」
400万ゴールド。
全額ベット。
実況。
「再びルーレットスタート!!」
カラカラカラ……
ボールが回る。
ロキは再び魔導書を開く。
黒い手が現れ。
ボールを掴む。
そして。
黒へ置いた。
コトン。
ユーマは笑う。
「勝った!!」
その瞬間だった。
ピョン。
ボールが。
まるで何かに弾かれたように。
一度だけ跳ねた。
全員の目が見開く。
黒から。
赤へ。
コロン。
ディーラー。
「赤。」
チャリン。
400万ゴールド。
全て没収。
静寂。
ユーマ。
「……は?」
リリム。
「え?」
レイ。
「今……。」
ロキはルーレットを睨みつけた。
「ありえない。」
ユーマ。
「今跳ねたよな!?」
ディーラーは笑顔のまま答える。
「ルーレットですから。」
ロキ。
「違う。」
「俺は確かに……。」
そこで言葉を止めた。
証拠がない。
観客達は何事もなかったように笑っている。
ユーマは拳を握り締めた。
「またかよ……。」
レイ。
「この街。」
「運まで買われてるのか。」
ロキは静かにルーレットを見つめていた。
「……何かいる。」
「誰かが。」
「運そのものを操ってる。」
その頃。
グランドカジノ最上階。
豪華なソファに座る楽の番人は。
ワイングラスを揺らしながら。
クスッと笑っていた。
「運も実力。」
「そうでしょう?」




