第15話 『燃やす少女』
前回、旅の途中でウルフに襲われたユーマ。
絶体絶命のその時、ギルドで見かけた謎の少女が現れた!
そして少女の武器は――銃。
それでは第15話をお楽しみください。
ユーマは間一髪助かった。
「誰かわかんねぇけど、ありがとう助かったよ!」
と銃声が聞こえた岩の方を見る。
「それじゃ死ぬわよ。」
岩の上から少女が言った。
俺は思わず叫んだ。
「ん?・・・あ!さっきギルドにいた奴だ!」
少女は少しだけ眉をひそめた。
「なに?初対面で。呼び方ひどくない?」
「わりぃ、だって名前知らないし。」
少女は納得したように頷く。
「私はリリム、覚えやすいでしょ?忘れたら燃やす。」
「初対面で脅すな。」
リリムは真顔だった。
冗談なのか本気なのか分からない。
たぶん本気だ。
「じゃああんたは?」
「ユーマ。」
「変わった名前ね、もっと勇者っぽい名前かと思った。」
「勇者っぽい名前ってなんだ。」
「レオンとか。」
危ない。
実は候補だった。
「まあいいや。」
リリムは頷いた。
「ユーマね。覚えた。」
俺は改めてリリムを見る。
赤い髪。
黒いフード。
そして肩には銃。
やっぱり異質だった。
「その銃すげぇな、初めて見たよ」
「結構便利よ。」
そう言いながら、リリムは軽く銃を回した。
慣れている。
相当使い込んでいるんだろう。
「そういえば。」
俺は聞いた。
「リリムも旅してるのか?」
「してる。」
「どこに向かってるんだ?」
「第一の街。」
ユーマは驚いた表情をした。
「なにその反応。」
「俺もだよ。」
リリムも少し驚いた顔をした。
「じゃあ目的地一緒なんだ。」
「そうだな、リリムも冒険者か。」
「まあそんな感じ。」
「そんな感じ?」
「そんな感じ。」
ふわふわしてるな。
「仲間はいないのか?」
そう聞くと、リリムは首を横に振った。
「いない。」
「一人で旅してるのか?危なくない?」
リリムは不思議そうな顔をした。
「危ないわよ。」
「ならやめろよ。」
「なんで?」
「なんでって!」
リリムは本気で分かっていない顔をしている。
「だって魔王倒しに行くんだし。」
俺は固まった。
「今なんて言った?」
「魔王倒しに行く。」
「さらっと言うな!」
リリムは首を傾げた。
「そんな変なこと言った?」
「変だろ!」
俺は思わず声を上げた。
「お前一人で魔王倒しに行くつもりなのか!?」
「今のところは。」
「無茶だろ!」
リリムは少し考える。
そして。
「でも倒したいし。」
「理由になってない。」
「私の中ではなってる。」
「なんでそんなに魔王倒したいんだ?」
そう聞いた瞬間だった。
リリムは少しだけ黙った。
初めてだった。
今までずっと喋っていたのに。
一瞬だけ。
空気が変わる。
俺は続きを待った。
だが。
リリムは視線を逸らした。
「秘密。」
「なんでだよ。」
「まだそんなに仲良くないでしょ。」
それはそうだった。
初対面だ。
「あんま質問しないで、燃やすよ?」
「最後に脅すな。」
「癖みたいなものよ。」
癖で脅すな。
「まあいいや。」
リリムが言った。
「それよりユーマ、地図ある?」
「ない。」
リリムが固まった。
本当に固まった。
数秒動かなかった。
「……え?ちょっと待って。」
リリムは俺を見る。
そして周囲を見る。
もう一回俺を見る。
「地図なしで旅に出たの?」
「出た。」
「第一の街行くんでしょ?」
「行く。」
「場所知らないのに?」
「なんとかなるかなって。」
リリムは額を押さえた。
「すごい。」
「褒めてる?」
「全然。」
即答だった。
「いや、ちょっと感動した。
そこまで何も考えずに旅立てる人初めて見た。」
「褒めてないな?」
「うん。」
やっぱり褒めてなかった。
リリムはポーチから紙を取り出した。
広げる。
地図だった。
俺は目を見開く。
「え!?地図あるの!?」
「あるわよ、ギルドで買えるし。」
「ギルドで買えるの!?」
リリムは少し笑った。
「まさか知らなかったの?」
「知らなかった!」
リリムは地図を広げる。
「ほら。」
指でなぞる。
「ここがミスト村。で、ここが第一の街。
普通なら抜けるのに三日くらい。」
「普通なら?」
「普通にこの森を抜けられたらね。」
嫌な言い方だった。
「どういう意味だ。」
リリムは地図の森を指差す。
「ここ、死の森って呼ばれてるの。」
「嫌な名前だな。」
リリムはさらっと言った。
「新人冒険者とか、勇者とか、盗賊とか、いっぱい死んでるんだって。」
そして俺を見る。
「まあ、あんたみたいな雑魚は結構危ないかも。」
「誰が雑魚だ。」
「さっき死にかけてたじゃない。」
ぐうの音も出ない。
「でも私はまだ生きてる。」
リリムは地図をしまう。
「じゃあ私は行くね。
雑魚のユーマくんは地図でも買っておいで。」
そう言って歩き出そうとする。
俺は慌てて呼び止めた。
「待て。」
「なによ?」
「第一の街までご一緒しても?」
リリムは少し考えた。
そして肩をすくめる。
「無理よ!雑魚だもん。」
その時だった。
ぐぅぅぅぅ。
リリムのお腹が鳴る。
本人は真顔。
俺も真顔。
セフィも真顔。
「……。」
「……。」
「今のは聞かなかったことにして。」
ユーマはにやつきながら
バックから食料を出した。
「そういえば、僕さっき出発したばかりで
食料もたくさんあるんですけど〜」
期待した目でリリムを見つめるユーマ。
リリムは少し考える。
そして真顔のまま言った。
「私の邪魔したら燃やすからね」
「とっとにかく、その食料を分けなさい、それが条件よ。」
ユーマはニタッと笑顔になり。
「もちろんですとも、お嬢様。」
「燃やすよ?燃やしまくるよ?」
2人の旅はまだ始まったばかりだ。
第15話を読んでいただきありがとうございました!
ついにリリムと同行開始!
次回から死の森の探索が本格スタートです!




