第140話 『ゴールドラッシュ圏内』
グラディアを出発して数日。
ユーマ達は街道を進んでいた。
目的地は第4の街。
楽園ゴールドラッシュ。
「腹減ったなぁ。」
ユーマが空を見上げながら言う。
リリムも頷く。
「私も。」
セフィが前方を指差した。
「あ。」
「村がありますよ。」
街道沿いの小さな村だった。
大きくもなく。
特別栄えているわけでもない。
だが人の行き来は多い。
ユーマ達は村へ入った。
すると。
違和感に気付く。
店先。
看板。
宿屋。
八百屋。
武器屋。
どこを見ても同じ文字が書かれていた。
『ゴールド使用可能』
『ゴールド払い限定』
『ゴールド歓迎』
ユーマが首を傾げる。
「ゴールド?」
セフィが説明する。
「ゴールドラッシュ圏内ですね。」
「この辺りから通貨が変わります。」
ロキ。
「通貨?」
セフィ。
「ゴールドコインです。」
「この地域ではGは使えません。」
ユーマ。
「マジかよ。」
レイ。
「じゃあ換金するしかないな。」
一行は換金所へ向かった。
窓口の男が無愛想に言う。
「換金か。」
「金額は?」
ユーマ達は所持金をかき集める。
全員分。
合わせて五千G。
男は計算する。
「五百ゴールドだな。」
ユーマ。
「安っ!!」
男。
「嫌なら帰れ。」
ユーマ。
「いや換えるけどさ・・・。」
こうして。
五千Gは五百ゴールドになった。
ユーマは袋を見つめる。
「まぁ。」
「飯くらいは食えるだろ。」
一行は食堂へ向かった。
店に入る。
メニューを見る。
そして。
全員固まった。
ラーメン 5000ゴールド
チャーハン 6000ゴールド
餃子 3000ゴールド
ユーマ。
「は?」
店主。
「ご注文は?」
ユーマ。
「いや待て待て待て。」
「ラーメン5000ゴールド!?」
店主。
「安い方だが?」
ユーマ。
「安くねぇよ!!」
リリム。
「破産するんだけど。」
レイ。
「一杯も食えねぇな。」
ロキ。
「終わったな。」
その時だった。
「おやおや。」
後ろから声がした。
振り返る。
小柄な老婆だった。
「若いの。」
「ゴールドが無いのかい?」
ユーマ。
「まぁな。」
老婆はニヤリと笑う。
「増やさないかい?」
ユーマ。
「増やす?」
老婆。
「簡単なゲームさ。」
「ジャンケン。」
「勝ったら十倍。」
「五百ゴールドが五千ゴールドになる。」
ユーマの目が輝く。
「マジか!!」
セフィ。
「怪しいです。」
レイ。
「怪しいな。」
ロキ。
「怪しい。」
リリム。
「怪しい。」
ユーマ。
「お前ら疑いすぎだろ。」
老婆は笑う。
「じゃあ準備しようか。」
「荷物は邪魔だろう?」
「このベンチに置いておきな。」
ユーマ。
「なるほど。」
セフィ。
「なるほどじゃありません。」
だが。
結局全員荷物を置いた。
老婆。
「では。」
「最初はグー。」
ユーマ。
「ジャンケンポン!!」
ユーマはグー。
老婆はチョキ。
ユーマの勝ちだった。
「よっしゃぁぁぁぁ!!」
拳を突き上げる。
「五千ゴールドだ!!」
老婆は苦笑した。
「本当に勝つとはねぇ。」
「ちょっと待ってな。」
「金を取ってくる。」
老婆は五百ゴールドを持ち。
歩いていった。
五分。
待つ。
十分。
まだ来ない。
二十分。
来ない。
三十分。
ユーマ。
「遅くね?」
レイ。
「遅いな。」
ロキ。
「・・・。」
リリム。
「ねぇ。」
セフィ。
「嫌な予感しかしません。」
ユーマ達はベンチを見る。
沈黙。
荷物が無かった。
ユーマ。
「・・・。」
レイ。
「・・・。」
ロキ。
「・・・。」
セフィ。
「・・・。」
リリム。
「やられた。」
ユーマ。
「あのババアァァァァァ!!!!!」
村中を探した。
だが見つからない。
住民に聞いても。
誰も知らないと言う。
完全に逃げられた。
その時だった。
ロキが突然立ち止まる。
「見つけた。」
ユーマ。
「え?」
ロキはニヤリと笑った。
「馬鹿共が。」
魔導の書を開く。
黒い魔法陣が浮かび上がる。
「魔導の書よ。」
「我らを導け。」
魔法陣が回転する。
一本の光が伸びた。
森の方角。
ロキ。
「こっちだ。」
数分後。
村外れの廃屋。
そこに老婆達はいた。
盗賊のアジトだった。
中では荷物を漁っている。
「金目のもんがねぇな。」
「貧乏人だったか。」
「ハズレだな。」
その時だった。
「うぎゃぁぁぁぁ!!」
一人の盗賊が悲鳴を上げる。
首を掴まれていた。
地面から伸びた黒い手。
別の盗賊も。
ツルに絡め取られている。
次々拘束されていた。
老婆。
「なんだいこれ!?」
そこへ。
ドアが蹴破られる。
ドォォォン!!
ユーマ。
「見つけたぞぉぉぉ!!」
盗賊達。
「げっ!!」
ロキは鼻で笑う。
「盗難防止魔法だ。」
「俺の魔導書を盗む馬鹿がいると思ってな。」
盗賊達は全員捕まった。
荷物も戻ってきた。
ユーマは老婆を睨む。
「まんまと騙しやがって。」
老婆は開き直る。
「へっ。」
「ここはゴールドラッシュ圏内だよ。」
「金のためなら何でもやる。」
「それが当たり前さ。」
ユーマ。
「だからって盗むか?」
老婆。
「盗む。」
即答だった。
「生きるためだからね。」
老婆は笑う。
「お前ら。」
「お人好しすぎるんだよ。」
「ゴールドラッシュに入ったらもっと騙される。」
「裏切りなんて日常茶飯事。」
「人を信じる方が悪いのさ。」
ユーマは鼻で笑った。
「へっ。」
「うるせぇ。」
荷物を背負う。
「行こうぜ。」
一行は歩き出した。
すると。
老婆が声を掛けた。
「おーい。」
ユーマ。
「なんだ?」
老婆。
「ゴールドラッシュへ行くなら。」
「こっちの道だよ。」
道を指差す。
ユーマ。
「お。」
「サンキュー。」
レイ。
「珍しく親切だな。」
ロキ。
「信用していいのか?」
ユーマ。
「今度は大丈夫だろ。」
セフィ。
「不安です。」
そして数時間後。
ユーマ達は歩き続けた。
夕方。
ユーマが立ち止まる。
「・・・なぁ。」
レイ。
「どうした。」
ユーマ。
「この木。」
ロキ。
「・・・。」
セフィ。
「・・・。」
リリム。
「・・・。」
目の前には。
昼に見た木があった。
完全に同じ場所。
沈黙。
ユーマの顔が引きつる。
そして。
天へ向かって叫んだ。
「あのババアァァァァァァァァァ!!!!!」
遠く離れたアジトでは。
老婆と盗賊達が大笑いしていた。
「けーっけっけっけっ!!」
「本当に馬鹿だったな!!」
「ゴールドラッシュじゃ三日も生きられねぇぞ!!」
笑い声だけが森に響いていた。




