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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
氷戦の街 グラディア編

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第139話 『それぞれの道』

怒の番人バンは消えた。


光となって。


誰にも看取られることなく。


静かに。


だがその存在は。


確かにこの街へ残っていた。


翌日。


氷闘祭の会場には多くの住民達が集まっていた。


ユーマ達は出発の準備を進めている。


その時だった。


カン。


カン。


カン。


金属を叩く音。


ユーマが振り返る。


「なんだ?」


会場の中央。


住民達が集まっていた。


壊れた銅像。


怒の番人の銅像だった。


氷闘祭の戦いで崩れ落ちていたそれを。


住民達が修復していた。


老人。


若者。


子供。


皆が協力している。


レイは静かに見つめた。


ロキも腕を組む。


ユーマは思わず聞いた。


「直すのか?」


老人は振り返る。


そして笑った。


「あたりめぇだろ。」


ハンマーを振る。


「番人様だからな。」


ユーマは少し驚いた。


「でもよ。」


「街を支配してたんだぜ?」


老人は頷く。


「そうだな。」


否定しない。


別の男が言う。


「怖かったさ。」


若い戦士も笑った。


「毎日死ぬ気で鍛えさせられたしな。」


さらに別の住民。


「何度ぶっ飛ばされたことか。」


皆が笑う。


だが。


手は止まらない。


ユーマは首を傾げた。


「じゃあなんで。」


老人は空を見る。


少しだけ寂しそうに。


そして言った。


「恨んでるさ。」


静かな声だった。


「感謝もしてる。」


ユーマ。


「・・・。」


老人。


「複雑なんだよ。」


若い戦士が頷く。


「俺は番人様に憧れてた。」


別の男も笑う。


「俺も。」


「強かったからな。」


「漢だった。」


「最後まで街を守ったしな。」


誰も泣いていない。


誰も怒っていない。


ただ。


それぞれの想いを胸に。


銅像を修復していた。


その時。


職人の一人が言う。


「おい。」


「この傷どうする?」


銅像の背中。


大きな傷跡。


削れば消せる。


綺麗な銅像になる。


だが。


老人は首を振った。


「残せ。」


職人。


「いいのか?」


老人。


「ああ。」


静かに笑う。


「番人様らしい。」


誰も意味は知らない。


背中の傷の理由も。


ソフィアのことも。


知らない。


だが。


それでも残した。


やがて。


銅像は完成する。


堂々と立つ怒の番人。


その背中には。


大きな傷が残されていた。


レイはそれを見上げる。


そして。


小さく笑った。


「らしいな。」


ロキも頷く。


「だな。」


その時だった。


レイがユーマを見る。


少しだけ真面目な顔。


「ユーマ。」


ユーマ。


「ん?」


レイは頭を掻いた。


少し照れ臭そうに。


「俺も連れてってくれ。」


静寂。


そして。


ユーマは笑った。


「当たり前だろ。」


レイ。


「・・・。」


ユーマ。


「今さら何言ってんだ。」


肩を叩く。


「お前もう仲間だろ。」


レイは少しだけ目を逸らした。


照れ臭かった。


ロキが肩を組む。


「逃げんなよ。」


レイ。


「誰がだ。」


ロキ。


「ビビってたじゃねぇか。」


レイ。


「うるせぇ。」


二人は笑う。


セフィも微笑んだ。


こうして。


レイは正式に仲間となった。


その様子を見ていたルアが前へ出る。


「私は残るわ。」


レイ。


「姉貴。」


ルアは街を見渡した。


住民達。


壊れた建物。


まだ残る傷跡。


「今は番人がいない。」


「街の統制も取れてないし。」


「復興もしなきゃいけない。」


真面目な顔だった。


「だから私はここに残る。」


誰も反対しなかった。


正しい判断だったからだ。


ルアはレイを見る。


「死ぬんじゃないわよ。」


レイ。


「誰に言ってんだ。」


ルア。


「弟に。」


レイ。


「知ってる。」


二人は笑った。


そして。


ルアはリリムを見る。


リリムも睨み返す。


バチバチ。


火花が散る。


ユーマは嫌な予感しかしない。


ルア。


「あと。」


リリム。


「あ?」


ルア。


「ファイヤーガール。」


リリム。


「誰がファイヤーガールよ。」


ルアは腕を組む。


当然のように言った。


「ユーマに手出すんじゃないわよ。」


ユーマ。


「へ?」


リリム。


「は?」


ルアは平然としている。


「ユーマは私の将来の旦那になるんだから。」


静寂。


そして。


ブシュゥゥゥゥゥ!!


ユーマ。


「ぶはぁっ!!」


盛大な鼻血。


ロキ。


「出た。」


レイ。


「出たな。」


セフィ。


「出ましたね。」


ユーマ。


「なななななななな!?」


顔真っ赤。


ルア。


「何よ。」


ユーマ。


「何よじゃねぇよ!!」


ルア。


「嫌なの?」


ユーマ。


「そういう問題じゃねぇ!!」


ルア。


「じゃあ問題ないわね。」


ユーマ。


「あるわ!!」


その瞬間。


リリムの額に青筋が浮かんだ。


そして。


ボッコーーーーーン!!!


ユーマ。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


巨大なゲンコツ。


地面に頭から突き刺さる。


リリム。


「誰が渡すかぁぁぁぁぁ!!!」


ルア。


「面白いじゃない。」


ニヤリ。


完全に楽しんでいた。


ロキは腹を抱えて笑う。


レイも笑う。


セフィも苦笑い。


そして。


ユーマだけが地面に埋まっていた。


そんな騒がしい時間も終わる。


ユーマは立ち上がる。


懐から黄金のチケットを取り出した。


楽園ゴールドラッシュ。


第4の街。


そして。


楽の番人。


ユーマは空を見上げる。


「行くぞ。」


レイ。


「おう。」


ロキ。


「ああ。」


リリム。


「燃えてきた。」


セフィ。


「絶対また問題起きますね。」


誰も否定しなかった。


そして一行は歩き出す。


欲望と快楽の街。


楽園ゴールドラッシュへ。


新たな戦いが。


静かに始まろうとしていた。



【氷戦の街 グラディア編 完 】



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