第131話 『氷龍』
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
レイが咆哮する。
全身の魔力を解放。
氷が集まる。
空気が震える。
闘技場全体が凍り付き始めた。
ロキが目を見開く。
「レイ・・・!」
レイ。
「これで終わりだ!!」
巨大な魔法陣。
今までで最大。
いや。
人生で最大の魔法だった。
レイは剣を天へ掲げる。
そして叫ぶ。
「フロストドラゴン!!!」
ゴォォォォォォォォォ!!
氷の龍が現れた。
巨大。
圧倒的。
闘技場を埋め尽くすほどの巨体。
観客席から悲鳴が上がる。
龍は咆哮した。
そして。
怒の番人へ突撃する。
番人は振り返る。
だが遅い。
レイは確信した。
取った。
勝った。
氷龍が。
怒の番人の背中へ直撃した。
ドゴォォォォォォォォォォォン!!!!!
爆発。
氷。
衝撃。
闘技場全体が揺れる。
誰も目を開けていられない。
ユーマが腕で顔を庇う。
「うおっ!?」
リリム。
「すご・・・。」
ルア。
「これ・・・。」
土煙が晴れる。
静寂。
誰も喋らない。
そして。
見えた。
怒の番人。
立っていた。
だが。
変化があった。
背中。
唯一の傷跡。
そこから。
血が滴っていた。
ポタッ。
ポタッ。
赤い血。
確かに傷付いている。
ロキが叫ぶ。
「効いた!!」
レイも息を切らしながら笑った。
「やっぱりだ・・・!」
だが。
番人は動かない。
ただ立っている。
血を流したまま。
背中を見せたまま。
まるで。
何かを思い出しているように。
何かを考えているように。
沈黙。
長い沈黙。
風だけが吹く。
そして。
番人が小さく呟いた。
「・・・見られたか。」
誰にも聞こえないほど小さな声。
次の瞬間。
番人が笑った。
「ククク・・・。」
ロキ。
「?」
レイ。
「なんだ・・・?」
番人。
「ここまでやってくれるとはな。」
その声に。
ユーマの背筋が凍った。
まずい。
何かが来る。
本能が警鐘を鳴らす。
番人がゆっくり振り返る。
そして。
両腕を広げた。
ドクン。
空気が震える。
ドクン。
大地が震える。
ドクン。
魔力が溢れ出す。
ロキ。
「なんだ・・・?」
レイ。
「おい・・・。」
番人の身体が変化し始める。
筋肉が膨張する。
骨が軋む。
そして。
白い毛。
全身を覆うように。
みるみるうちに。
白い毛皮が生えていく。
観客席がざわつく。
「な、なんだあれ・・・。」
「魔物・・・?」
「違う・・・。」
さらに。
背中。
そこだけは違った。
硬い。
まるでワニのような皮膚。
巨大な鱗。
鋼鉄以上の防御力を感じる。
番人は完全に別の存在になっていた。
巨大な白き獣。
雪男。
伝説の魔物そのものだった。
ユーマ。
「嘘だろ・・・。」
リリム。
「まだ変身残してたの・・・?」
ルアですら顔色が悪い。
「冗談でしょ・・・。」
番人がゆっくり顔を上げる。
赤い瞳。
獣の瞳。
そして。
咆哮した。
「ウオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」
その瞬間だった。
世界が凍る。
ゴォォォォォォォォォ!!
吹雪。
氷。
絶対零度。
闘技場が一瞬で白く染まった。
観客席。
壁。
地面。
空気。
全てが凍り付いていく。
観客達が悲鳴を上げる。
「た、助け・・・!」
「寒い・・・!」
「身体が・・・!」
レイが氷魔法を展開する。
ロキも雷の魔力を身体へ流す。
なんとか耐える。
だが。
それでも震えが止まらない。
ユーマ達も危なかった。
リリム。
「フレアブースト!!」
ルア。
「獄炎!!」
赤い炎。
黒い炎。
二つの炎が壁となる。
そのおかげで。
辛うじて凍結を免れた。
だが。
周囲を見る。
そこはもう。
闘技場ではなかった。
氷の世界。
白銀の地獄。
全てが凍り付いていた。
レイの額から汗が流れる。
ロキも息を呑む。
今までの番人は。
遊んでいた。
本気じゃなかった。
その事実だけが分かった。
番人は二人を見下ろす。
獣の姿で。
圧倒的な威圧感で。
そして。
ゆっくりと言った。
「ここからが本番だ。」
レイとロキは剣を握る。
だが。
初めてだった。
二人が。
恐怖を感じたのは。




