第130話 『漢の背中』
怒の闘技場。
空気が重い。
レイとロキは並んで立っていた。
その正面。
怒の番人。
腕を組み。
静かに二人を見下ろしている。
番人が口を開く。
「来たか。」
レイ。
「来たぞ。」
ロキ。
「待たせたな。」
番人はニヤリと笑った。
「良い目になった。」
そして拳を握る。
「では始めるか。」
次の瞬間。
ロキが飛び出した。
「雷神撃!!」
ケラノウスを振り抜く。
巨大な雷撃。
一直線に番人へ向かう。
だが。
番人は避けない。
拳を一つ。
前へ突き出した。
ドォォォォォォン!!
雷が砕け散る。
ロキ。
「なっ!?」
その瞬間。
番人が目の前にいた。
速い。
見えなかった。
ドゴォォォォォン!!
拳。
ロキの身体が吹き飛ぶ。
地面を転がる。
レイが叫ぶ。
「フロストウォーリアー!!」
魔法陣が展開される。
氷の兵士。
十体。
二十体。
三十体。
軍勢が番人へ襲い掛かる。
番人。
「邪魔だ。」
ドォォォォォン!!
拳を振る。
衝撃波。
フロストウォーリアーがまとめて吹き飛んだ。
レイ。
「はぁ!?」
観客席。
ユーマも頭を抱える。
「マジかよ・・・。」
リリム。
「軍隊を拳で消し飛ばしたわよ。」
ルア。
「規格外ね。」
番人はゆっくり歩く。
焦りはない。
余裕しかない。
ロキが立ち上がる。
血を吐きながら。
「化け物か・・・。」
番人。
「この程度か?」
レイが歯を食いしばる。
「まだだ!」
「フロストサーペント!!」
巨大な氷蛇が現れる。
咆哮。
番人へ噛みつく。
だが。
番人は蛇の首を掴んだ。
そのまま。
ブンッ!!
地面へ叩きつける。
ドゴォォォォォン!!
フロストサーペント消滅。
レイ。
「くそっ!」
番人。
「遅い。」
ドゴォォォォォン!!
番人の拳。
レイの腹へ直撃。
レイが吹き飛ぶ。
壁へ叩きつけられる。
観客席が静まり返る。
強い。
圧倒的だった。
二対一。
それでも勝負にならない。
番人は構える。
「終わりか?」
ロキが笑う。
血まみれで。
それでも。
「ふざけんな。」
ケラノウスを握る。
レイも立ち上がる。
剣を構える。
レイ。
「ユーマ。」
ロキ。
「ああ。」
ユーマが言っていた。
背中。
そこだけは見逃すな。
理由は分からない。
だが。
信じる。
レイが正面へ出る。
ロキも正面。
番人。
「ほう。」
二人は左右へ散った。
番人を挟む形。
番人の眉が僅かに動く。
ユーマは見逃さなかった。
「今の・・・。」
リリム。
「何かあった?」
ユーマ。
「いや。」
だが。
確かに反応した。
番人は構えを変える。
二人を視界に収めるように。
ロキが突っ込む。
「雷神撃!!」
レイも同時に走る。
番人。
「甘い。」
ドォォォォォォン!!
ロキの攻撃を受け止める。
しかし。
その瞬間。
レイが消えた。
番人の目が動く。
上。
レイは氷の足場を作っていた。
一段。
二段。
三段。
空へ。
番人の頭上。
そして。
背後へ。
番人の表情が変わった。
初めてだった。
余裕が消えたのは。
ロキが叫ぶ。
「やっぱりだ!!」
番人は振り返ろうとする。
だが。
遅い。
レイは空中で剣を握る。
両手で。
全魔力。
全体重。
全てを乗せる。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
番人の背中。
唯一傷のある場所。
そこへ向かって。
渾身の一撃を振り下ろした。




