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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
氷戦の街 グラディア編

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第129話 『怒りの先』

「行ってくる。」


レイが立ち上がる。


ロキもケラノウスを肩に担いだ。


氷狼亭の空気は重い。


誰もが分かっている。


これから向かう相手がどれほど危険なのか。


ロキが笑う。


「死ぬ前に助けろよ。」


ユーマ。


「善処します。」


レイ。


「だから死ぬ前だ。」


ユーマ。


「努力します。」


ロキ。


「信用できねぇ。」


全員が笑った。


そして。


レイとロキは扉を開く。


「じゃあな。」


「おう。」


扉が閉まる。


静寂。


数秒後。


ユーマが立ち上がった。


リリム。


「どこ行くの?」


ユーマ。


「散歩。」


リリム。


「嘘ね。」


ルア。


「顔に書いてあるわ。」


ユーマは苦笑した。


そしてセフィを見る。


「セフィ。」


「セーブポイントは?」


セフィ。


「氷狼亭です。」


ユーマ。


「よし。」


リリムが怪訝そうな顔をする。


「何する気?」


ユーマはニヤッと笑った。


「ちょっと番人に会ってくる。」


「は?」


リリムが止めるより早く。


ユーマは飛び出していた。


カゼマサを腰に差し。


一直線に闘技場へ向かう。


「悪ぃなレイ。」


「悪ぃなロキ。」


「ちょっとだけ先に見てくるぜ。」


怒の闘技場。


巨大な闘技場の中央。


怒の番人は一人で立っていた。


まるで最初からそこにいたかのように。


腕を組み。


静かに。


そして圧倒的に。


ユーマが足を止める。


番人が目を開く。


「誰だ。」


ユーマ。


「挑戦者。」


番人。


「違うな。」


ユーマ。


「何がだよ。」


番人。


「お前じゃない。」


ユーマは笑う。


「まぁそうだろうな。」


カゼマサを抜く。


風が吹く。


番人は少しだけ興味を示した。


「帰れ。」


ユーマ。


「嫌だ。」


番人。


「なぜ。」


ユーマ。


「お前に断る権利はねぇ。」


番人。


「なんだと?」


ユーマ。


地面を蹴る。


一瞬で距離を詰める。


カゼマサを振る。


だが。


番人は動かなかった。


ドゴォォォォォォン!!


ユーマの視界が吹き飛んだ。


氷狼亭。


ガバッ!!


ユーマが飛び起きる。


「いてぇぇぇぇぇぇ!!」


セフィ。


「おかえりなさい。」


ユーマ。


「ただいま。」


そして再び飛び出す。


二回目。


死亡。


三回目。


死亡。


五回目。


死亡。


十回目。


死亡。


二十回目。


死亡。


勝負にならない。


本当に勝負にならない。


全て通じない。


カゼマサが当たっても。


傷一つ付かない。


ユーマは頭を抱えた。


「なんだこいつ・・・。」


鋼鉄の肉体。


化け物みたいな筋力。


さらに回復魔法。


欠点が見当たらない。


だが。


三十回目の戦闘で違和感に気付く。


「ん?」


ユーマは横へ回り込む。


番人も回る。


さらに回る。


番人も回る。


背中を見せない。


絶対に。


四十回目。


また背後へ回る。


番人は無理な体勢でも身体を捻る。


背中だけは見せない。


五十回目。


ユーマは確信した。


「おかしい。」


「なんでそこまで隠す?」


次の瞬間。


番人の顔色が変わった。


「見るな。」


ユーマ。


「え?」


番人。


「見るな。」


今までで一番低い声だった。


今までで一番怒っていた。


ユーマは咄嗟に背後へ飛ぶ。


そして。


見えた。


マントの隙間。


背中。


そこには。


大きな傷跡があった。


鋼鉄の肉体。


拳も剣も通さない身体。


なのに。


背中だけ。


深く抉れたような古傷。


しかも。


治っていない。


ユーマは息を呑む。


「傷・・・?」


次の瞬間。


ドゴォォォォォォン!!


死亡。


氷狼亭。


ガバッ!!


ユーマは天井を見上げた。


汗が止まらない。


「背中・・・。」


静かに呟く。


回復魔法を持つ男。


全身鋼鉄の男。


その男に唯一残る傷。


しかも。


見られることを異様に嫌がる。


偶然じゃない。


絶対に何かある。


ユーマは立ち上がった。


そして笑う。


「見つけたぜ。」


その時。


氷狼亭の扉が開く。


レイとロキだった。


二人は出発するところだった。


ユーマは二人を見る。


「待て。」


レイ。


「なんだ?」


ロキ。


「顔やべぇぞ。」


ユーマはニヤリと笑った。


「番人の弱点。」


「見つけたかもしれねぇ。」


二人の表情が変わった。


ユーマは真剣な顔になる。


「背中だ。」


「理由は分からねぇ。」


「でもあいつ。」


「背中だけは絶対に見せねぇ。」


そして。


「そこに唯一の傷がある。」


レイとロキは顔を見合わせた。


本当の番人戦が。


今始まろうとしていた。

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