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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
氷戦の街 グラディア編

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第128話 『束の間の休息』

氷狼亭。


大会終了後。


全員は治療を受けていた。


レイも。


ロキも。


リリムも。


ルアも。


傷は癒えてきている。


だが。


空気は重かった。


誰もが分かっている。


次に待っているものを。


怒の番人。


グラディア最強の男。


優勝者達を何人も葬ってきた怪物。


沈黙の中。


最初に口を開いたのはレイだった。


「なぁ。」


全員がレイを見る。


レイは少し笑った。


自嘲気味に。


「俺。」


「実は怖かったんだ。」


静寂。


レイは続ける。


「番人と戦うことが。」


誰も喋らない。


レイは窓の外を見る。


遠く。


闘技場が見えた。


「親友が死んだ時さ。」


拳を握る。


「思ったんだよ。」


「死にたくねぇって。」


重い言葉だった。


「だから。」


「いつも二位だった。」


ロキが目を見開く。


リリムも。


ユーマも。


レイは苦笑した。


「勝てる気しなかったんだ。」


「番人に。」


長い沈黙。


そして。


レイは顔を上げた。


「でも。」


その瞳は真っ直ぐだった。


「今回は違う。」


ユーマを見る。


リリムを見る。


ロキを見る。


ルアを見る。


「お前らがいる。」


少し笑う。


「だから。」


「俺行くよ。」


静寂。


ロキも頷いた。


「俺も行く。」


全員が見る。


ロキは窓の外を見る。


その先。


怒の番人がいる方向へ。


「恨みは晴らしたい。」


声は静かだった。


以前のような怒りではない。


もっと落ち着いていた。


「いつもと違うのは。」


「一対一じゃない。」


レイを見る。


「二対一だ。」


レイも頷く。


「いつもよりは有利だな。」


ユーマ。


「いや。」


「それでも勝てる気しねぇぞ。」


レイ。


「俺も。」


ロキ。


「同感だ。」


二人とも笑った。


笑い事ではないのに。


笑うしかなかった。


今の実力差は。


誰が見ても明らかだった。


そこでユーマが身を乗り出す。


「だったらさ。」


全員が見る。


「もう全員でやっちまおうぜ。」


リリム。


「え?」


ユーマ。


「俺もいる。」


「リリムもいる。」


「ルアもいる。」


指を折りながら数える。


「今ならさ。」


「全員でかかれば勝てるかもしれねぇじゃん。」


リリムも頷く。


「私は賛成。」


ルアも腕を組む。


「私も。」


だが。


ロキは首を横に振った。


「そうだな。」


少し考える。


そして。


「だけど。」


静寂。


「清算だけはしっかりしたい。」


ロキは真っ直ぐ言った。


「個人のことに。」


「お前らを巻き込めない。」


レイも頷く。


「同意見だ。」


ユーマ。


「・・・。」


反論しようとして。


やめた。


二人の顔を見れば分かる。


もう決めている。


何を言っても変わらない。


だから。


ユーマは話題を変えた。


「セフィ。」


部屋の隅。


妖精がぴょこんと飛ぶ。


「いますよー。」


ユーマ。


「今回のセーブポイントは?」


セフィ。


「氷狼亭です。」


ユーマ。


「そうか。」


小さく頷く。


その顔を見て。


セフィだけが少し不思議そうな顔をした。


ユーマは笑う。


「わかった。」


そして。


レイとロキを見る。


「行ってこいよ。」


リリム。


「!?」


勢いよく立ち上がる。


「何言ってんの!?」


「仲間を見殺しにする気!?」


ユーマ。


「そんなつもりはねぇよ。」


頭を掻く。


「だけど。」


「もう言っても仕方ねぇだろ。」


レイもロキも。


決めている。


だから。


ユーマは笑った。


「死んだら。」


全員が見る。


「助けてやるよ。」


リリム。


「は?」


ルア。


「どういう意味?」


ユーマ。


「気合いだ。」


リリム。


「絶対違う。」


レイが吹き出した。


ロキも笑う。


そして。


ロキが言った。


「死ぬ前に助けろよ。」


レイ。


「それな。」


ユーマ。


「善処します。」


沈黙。


そして。


全員が笑った。


ははははは。


大きな笑い声が部屋に響く。


明日。


何が起きるか分からない。


死ぬかもしれない。


負けるかもしれない。


それでも。


今だけは。


ただの仲間だった。


束の間の休息。


嵐の前の。


静かな夜だった。

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