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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
氷戦の街 グラディア編

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第127話 『戦士の誇り』

レイとロキ。


二人の決勝戦は凄まじいものだった。


氷。


雷。


剣。


斧。


互いに一歩も引かない。


レイが斬る。


ロキが受ける。


ロキが雷を放つ。


レイが氷で防ぐ。


観客達は息を呑んでいた。


誰も喋らない。


ただ見ている。


本物の戦いだった。


ユーマも拳を握る。


「すげぇ・・・。」


リリムも黙っている。


ルアも。


この試合だけは茶化せなかった。


ロキが笑う。


「いいな。」


レイも笑う。


「だろ?」


ロキ。


「こういうのが。」


レイ。


「決勝戦だ。」


ドォォォォォン!!


再び激突。


氷と雷が弾ける。


互角。


完全な互角だった。


どちらが勝ってもおかしくない。


だからこそ。


誰も気付かなかった。


闘技場の隅。


瓦礫の陰。


そこに一人の男がいたことを。


ゴエム。


ボロボロの姿。


顔を腫らし。


包帯だらけ。


しかし。


その目だけは憎しみに満ちていた。


「クソ・・・。」


「クソクソクソクソ!!」


震える手。


その中には。


小型の魔導銃。


ゴエムは歯を食いしばる。


「あいつらが・・・。」


「俺を馬鹿にしやがって・・・。」


レイ。


ロキ。


二人を見る。


憎い。


許せない。


ゴエムは引き金へ指をかけた。


「へっへっへ・・・。」


「ざまぁみやがれ・・・。」


ズキュン!!


魔弾が飛ぶ。


一直線。


レイへ。


ズキュン!!


もう一発。


ロキへ。


二人は反応できなかった。


戦いに集中していた。


魔弾が命中する。


レイ。


「がっ・・・!」


ロキ。


「っ!?」


二人の身体が崩れる。


ドサッ。


静寂。


観客席が凍り付く。


ユーマ。


「は・・・?」


リリム。


「え・・・?」


実況も固まる。


誰も理解できない。


ゴエムが飛び出した。


高笑いしながら。


「へーっへっへっへ!!」


「見たかぁぁぁ!!」


「俺の勝ちだ!!」


観客席がざわつく。


ゴエムは両手を広げる。


「最後に立ってるのは俺!!」


「俺が優勝だ!!」


実況は汗を流す。


「え・・・。」


「その場合・・・。」


「判定は・・・。」


誰も分からない。


氷闘祭史上初だった。


その瞬間。


ドォォォォォォォォン!!


闘技場が揺れた。


何かが着地した。


観客席が静まり返る。


全員が見上げる。


そこにいたのは。


怒の番人。


腕を組み。


無言で立っていた。


空気が変わる。


重い。


息が苦しい。


ゴエムも笑顔が消えた。


「ば・・・。」


「番人様・・・。」


番人は何も言わない。


ただ。


ゴエムを見る。


その目は。


怒りに満ちていた。


ゴエムは震えながら笑う。


「お、俺が優勝ですよね?」


「最後に立ってるの俺ですし・・・。」


沈黙。


番人が口を開いた。


「貴様。」


低い声。


それだけで空気が震える。


「戦士の戦いを。」


一歩。


前へ出る。


「冒涜したな。」


ゴエム。


「え?」


番人。


「卑怯な真似をし。」


「戦士達の誇りを踏みにじった。」


ゴエム。


「い、いや・・・。」


「勝ちは勝ちで・・・。」


番人。


「黙れ。」


ゴエムの身体が震える。


本能が叫んでいた。


逃げろと。


だが。


足が動かない。


番人の怒りが空間を支配していた。


「卑怯者が。」


「戦士を名乗るな。」


次の瞬間。


ドゴォォォォォォォン!!


拳。


たった一撃。


ゴエムの身体が吹き飛ぶ。


壁へ激突。


さらに突き破る。


そのまま遥か彼方へ消えた。


誰も追わない。


誰も心配しない。


完全沈黙。


番人は興味を失ったように視線を戻す。


その先。


倒れているレイ。


ロキ。


二人を見る。


そして。


さらに不機嫌そうな顔になった。


「チッ。」


観客席が震える。


ユーマ。


「なんだよ・・・。」


リリム。


「あれ以上怒るの・・・?」


番人は吐き捨てる。


「やっと。」


「面白くなったところだったものを。」


その声には本気の苛立ちがあった。


待ちに待った戦い。


その続きを奪われた。


ただそれだけで怒っていた。


番人はレイの前へ立つ。


そして。


ロキの前へ。


両手を掲げる。


ユーマ。


「なにする気だ?」


次の瞬間。


光。


柔らかな光が二人を包む。


傷が消えていく。


血が止まる。


折れた骨が戻る。


ユーマ。


「はぁぁぁ!?」


リリム。


「回復魔法!?」


ルア。


「使えたの・・・?」


番人は当然のように答える。


「使える。」


ユーマ。


「いや使えるんかい!!」


誰も突っ込まない。


レイとロキの呼吸が安定する。


命に別状はない。


番人は満足そうに頷いた。


そして。


振り返る。


「貴様ら。」


レイとロキへ向かって言う。


「後日。」


「ここへ来い。」


静寂。


番人は続ける。


「今の貴様らと戦っても意味がない。」


「俺が求めるのは。」


拳を握る。


「本気の戦いだ。」


その言葉には偽りがなかった。


レイが薄く目を開ける。


ロキも意識を取り戻しかける。


番人は背を向ける。


そして。


最後に一言だけ残した。


「強くなってから来い。」


そう言って歩き出す。


誰も止められない。


誰も声をかけられない。


怒の番人は去っていった。


静寂。


長い静寂。


実況が震える声でマイクを握る。


「えー・・・。」


誰も聞いていない。


実況は咳払いした。


そして。


叫ぶ。


『氷闘祭!!』


間。


『終了ォォォォォォォォ!!』


歓声はない。


拍手もない。


誰も予想しなかった結末だった。


決勝戦は決着がつかず。


優勝者もいない。


だが。


全員が理解していた。


本当の戦いは。


これから始まるのだと。

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