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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
氷戦の街 グラディア編

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第126話 『友達を返せ』

闘技場は戦場になっていた。


フロストウォーリアー。


無数の氷兵。


そして。


悪魔の呪いによって生まれたゾンビ達。


氷と呪い。


二つの軍勢が激突する。


剣がぶつかる。


牙が食い込む。


氷が砕ける。


影が弾ける。


数はほぼ互角。


闘技場全体で大乱戦が起きていた。


ユーマも思わず叫ぶ。


「なんだよこれ!」


「決勝戦じゃねぇだろ!!」


リリム。


「軍隊同士の戦争ね・・・。」


ルアも呆れていた。


「規模がおかしいわ。」


その中心。


レイと悪魔だけは互いしか見ていなかった。


ドォォォォォン!!


氷と黒雷が激突する。


レイの剣。


悪魔の拳。


真正面からぶつかり合う。


互角。


悪魔が笑う。


「悪くねぇ。」


レイも笑う。


「お前もな。」


次の瞬間。


拳。


剣。


蹴り。


肘。


肩。


互いに距離を捨てた。


完全な肉弾戦。


ドゴォォォォォン!!


レイが吹き飛ぶ。


だが立つ。


悪魔も吹き飛ぶ。


だが立つ。


決着がつかない。


どちらも譲らない。


悪魔は楽しそうだった。


「いいぞ。」


「久しぶりだ。」


「こんなに楽しいのは。」


レイは肩で息をする。


全身傷だらけ。


血まみれ。


それでも前を見る。


悪魔の向こう側。


ロキを見ていた。


「またかよ・・・。」


悪魔。


「あ?」


レイの拳が震える。


「また友達を失うのかよ・・・。」


親友の顔が浮かぶ。


守れなかった。


助けられなかった。


後悔だけが残った。


だから。


レイは叫んだ。


「嫌だ。」


悪魔が眉をひそめる。


「何?」


レイ。


「もう嫌なんだよ!!」


地面を蹴る。


一直線。


そして。


全力で殴る。


「帰ってこいロキィィィィィ!!!!」


ブシィッ!!


拳が顔面へめり込む。


悪魔の身体が揺れる。


その瞬間だった。


一瞬だけ。


本当に一瞬だけ。


ロキの顔が現れた。


ユーマが目を見開く。


「今!」


レイも気付く。


「いる!!」


レイの瞳に光が戻る。


「まだいるじゃねぇか!!」


悪魔が叫ぶ。


「黙れ!!」


黒雷。


爆発。


だがレイは止まらない。


前へ出る。


さらに拳を振る。


「うぉぉぉぉぉぉ!!」


ブシッ!!


もう一発。


悪魔の顔が歪む。


ロキの顔が浮かぶ。


消える。


浮かぶ。


消える。


レイは叫ぶ。


「返せぇぇぇぇぇ!!」


悪魔が焦り始める。


「やめろ・・・。」


レイ。


「うるせぇ!!」


悪魔。


「やめろ!!」


レイ。


「友達返せぇぇぇぇぇ!!!!」


ドゴォォォォォォン!!


渾身の一撃。


その瞬間。


ドロッ――


悪魔の身体から。


黒い影が抜け落ちた。


悲鳴を上げながら。


まるで泥のように。


悪魔。


「やめろぉぉぉぉ!!」


「俺を追い出すなぁぁぁぁ!!」


影が地面へ落ちる。


ロキの身体から完全に分離した。


そして。


ロキが崩れ落ちる。


「がはっ・・・。」


静寂。


ロキが目を開く。


ぼやける視界。


最初に見えたのは。


レイだった。


「レイ・・・。」


レイ。


「ロキ!!」


ロキの意識が戻った。


ユーマ。


「戻った!」


リリム。


「やっとね。」


レイが影を指差す。


「ロキ!」


「それだ!!」


「そいつが悪魔だ!!」


黒い影が蠢く。


「待て・・・。」


「待て待て待て!!」


「ふざけるな!!」


ロキは立ち上がる。


そして。


胸元から魔導書を取り出した。


悪魔が初めて恐怖を見せる。


「やめろ。」


ロキ。


「・・・。」


「もう終わりだ。」


悪魔。


「やめろ!!」


「閉じ込めるな!!」


「俺を出せ!!」


ロキは魔導書を開く。


封印魔法陣。


黒い光。


悪魔が吸い込まれていく。


「待てぇぇぇぇぇぇ!!」


「俺を閉じ込めるなぁぁぁぁ!!」


ロキ。


「黙れ。」


魔導書を閉じる。


パタン。


静寂。


全てが止まった。


ゾンビ達が倒れる。


影が消える。


氷兵達も崩れる。


軍勢は消滅した。


闘技場に静けさが戻る。


ロキは魔導書を握る。


「もう好き勝手にはさせねぇ。」


ユーマが近づく。


「おかえり。」


ロキは苦笑した。


「悪い。」


そして。


レイを見る。


「レイ。」


レイ。


「ん?」


ロキ。


「助かった。」


レイは鼻で笑う。


「当たり前だ。」


ユーマ。


「マジで迷惑かけやがって。」


ロキ。


「すまん。」


ユーマ。


「後でぶん殴る。」


ロキ。


「許可する。」


久しぶりに笑いが起きた。


そして。


ロキは観客席最上段を見る。


怒の番人。


大男。


ずっと見続けていた男。


ロキは静かに言った。


「俺。」


「どうかしてた。」


誰も喋らない。


ロキは続ける。


「恨みで目の前が見えなくなってた。」


拳を握る。


そして。


番人を見る。


真っ直ぐ。


「だけどよ。」


「復讐はやめねぇ。」


番人の口元が少しだけ動く。


ロキ。


「これからは正々堂々と。」


「復讐させてもらうぜ。」


ニヤリ。


「大男。」


沈黙。


そして。


番人が初めて笑った。


「面白い。」


その一言だった。


ロキはケラノウスを構える。


レイも剣を抜く。


実況もようやく我に返る。


「け、決勝戦!!」


観客席が沸き上がる。


「待たせたな。」


ロキが笑う。


レイも笑う。


「いや。」


「今来たところだ。」


二人が向き合う。


友達として。


ライバルとして。


そして。


戦士として。


本当の決勝戦が始まる。

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