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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
氷戦の街 グラディア編

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第125話 『決勝戦』

悪魔の表情が歪む。


ほんの一瞬。


本当に一瞬だけだった。


だが。


確かに余裕が消えた。


「・・・チッ。」


悪魔が舌打ちする。


ユーマは見逃さなかった。


「いるんだな。」


悪魔。


「黙れ。」


ユーマ。


「ロキ。」


「聞こえてるんだろ。」


悪魔。


「黙れと言っている。」


黒雷が弾ける。


だが。


先程までと違う。


苛立っている。


焦っている。


何かを隠そうとしている。


ユーマは確信した。


「ロキ!!」


「お前まだそこにいるんだな!!」


その瞬間。


悪魔の身体が一瞬だけ震えた。


レイも気付く。


リリムも。


ルアも。


悪魔の中で。


ロキが抵抗している。


悪魔が叫ぶ。


「うるせぇぇぇぇぇ!!」


ドォォォォォォン!!


黒雷が爆発する。


地面が砕ける。


観客席から悲鳴。


そして。


悪魔の足元から。


黒い影が溢れ出した。


ドロドロと。


生き物のように。


無数に。


ユーマは顔をしかめる。


「なんだそれ・・・。」


悪魔が笑う。


今度は不気味に。


怒りを隠すように。


「見せてやるよ。」


「俺の力をな。」


無数の影が地面を這う。


ユーマへ向かう。


速い。


ユーマは咄嗟に飛び退いた。


「うおっ!?」


影はユーマを外れる。


そのまま近くにいた戦士へ。


「え?」


影が足に触れる。


その瞬間だった。


戦士の身体が震える。


「が・・・。」


目が黒く染まる。


皮膚が変色する。


理性が消える。


「ぐるるる・・・。」


観客席が凍り付いた。


「な、なんだ!?」


「おい!!」


「どうした!?」


悪魔は楽しそうに笑う。


「へっへっへ。」


「悪魔の力はな。」


影がさらに増える。


「呪いだ。」


黒い影が闘技場中へ広がる。


「相手をゾンビ化させ。」


「俺の思い通りに操れる。」


ゾンビ化した戦士がゆっくり立ち上がる。


目に意思はない。


ただ。


悪魔の命令を待つだけ。


ユーマ。


「最悪じゃねぇか・・・。」


悪魔は両手を広げる。


「呪ってやるぅぅぅぅぅ!!」


ドバッ!!


影が爆発的に増殖した。


観客。


戦士。


大会関係者。


次々と呪われていく。


悲鳴。


怒号。


混乱。


闘技場は地獄と化した。


「助けてくれ!!」


「来るなぁぁぁ!!」


「うわぁぁぁぁ!!」


ユーマは歯を食いしばる。


「ロキぃぃぃぃ!!」


だが。


悪魔は笑うだけだった。


「いいぞ。」


「もっと呪われろ。」


「もっとだ。」


その時だった。


ユーマが地面を蹴る。


一直線。


悪魔へ。


レイ。


「ユーマ!?」


ユーマ。


「しゃーねぇ!!」


悪魔。


「あ?」


ユーマ。


「ロキ!!」


「我慢しろよ!!」


次の瞬間。


ボッコォォォォォォォン!!


拳。


渾身の右ストレート。


悪魔の顔面へ直撃した。


悪魔の身体が吹き飛ぶ。


地面を何度も転がる。


観客席が静まり返る。


ユーマも拳を押さえる。


「っつぅ・・・。」


「硬ぇ・・・。」


悪魔はゆっくり起き上がる。


口元から血が流れていた。


そして。


笑った。


「てめぇ・・・。」


「呪ってやる。」


黒い影がさらに溢れ出す。


ユーマへ向かう。


ユーマは避ける。


だが。


影は周囲の人間へ当たる。


「ぎゃあああ!!」


「うわぁぁぁ!!」


次々とゾンビ化していく。


悪魔は両手を広げた。


「呪ってやるぅぅぅぅ!!」


「全員!!」


闘技場は完全なパニックになった。


その時。


レイが前へ出る。


ユーマ。


「レイ!」


「協力してロキ止めんぞ!」


レイ。


「ユーマ。」


静かな声だった。


「手出すな。」


ユーマ。


「は?」


レイはロキを見る。


「ロキは俺がやる。」


ユーマ。


「何言ってんだ!!」


「相手見ただろ!?」


レイは拳を握る。


そして。


ゆっくりと言った。


「ここで俺がやることに意味がある。」


ユーマ。


「意味?」


レイの瞳が揺れる。


親友の顔が浮かんでいた。


救えなかった友。


失った友。


あの日の後悔。


「今度は。」


レイはロキを見る。


「友を見捨てたくねぇんだ。」


ユーマは黙った。


レイは前へ出る。


そして叫んだ。


「姉貴!!」


ルアが振り返る。


「なに!?」


レイ。


「棄権してくれよ!!」


ルア。


「え!?」


「今それどころじゃないでしょ!!」


レイ。


「棄権してくれ!!」


闘技場中へ声が響く。


「ロキと決勝戦だ!!」


静寂。


ルアは弟を見る。


そして。


小さく笑った。


「ほんと。」


「損な性格ね。」


ルアは手を挙げる。


「棄権するわ。」


実況が叫ぶ。


『ルア選手棄権!!』


『よって決勝進出はレイ!!』


続けて。


『そして準々決勝最終試合勝者!!』


闘技場中央。


倒れているグラン。


『ロキィィィィィ!!』


こうして決勝戦は決まった。


レイ。


そしてロキ。


いや。


悪魔。


レイは剣を抜く。


悪魔は笑う。


「決勝?」


黒雷が弾ける。


「違う。」


「処刑だ。」


レイの周囲に魔法陣が広がる。


フロストタイガー。


フロストサーペント。


フロストウォーリアー。


次々と召喚される氷の軍勢。


レイは静かに剣先を向けた。


「迎えに来たぞ。」


悪魔は口元を吊り上げる。


「来いよ。」


「親友気取り。」


決勝戦の幕が上がった。

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