第124話 『仲間の声』
闘技場は混乱していた。
悲鳴。
怒号。
逃げ惑う観客達。
氷で出来た壁は崩れ。
地面は黒雷によって焼かれている。
もはや大会どころではなかった。
悪魔は笑う。
「ククク・・・。」
「いいな。」
「実にいい。」
その視線の先。
怒の番人。
ただ一人。
番人だけを見ている。
まるで他の全てが見えていないように。
ユーマは歯を食いしばった。
「ロキ!!」
叫ぶ。
だが反応はない。
悪魔が少しだけ振り返る。
赤い瞳。
そして。
笑う。
「誰だお前。」
ユーマの背筋が凍った。
ロキなら絶対言わない。
そんな言葉だった。
「・・・。」
ユーマは拳を握る。
リリムも医務室から飛び出してきていた。
身体はまだボロボロ。
だが立っている。
「最悪ね。」
その横にはルア。
こちらも魔力はほぼ空。
しかし真剣な顔だった。
レイが前へ出る。
剣を抜く。
「ロキ。」
悪魔が見る。
「お。」
「氷使い。」
「覚えてるぞ。」
レイ。
「身体を返せ。」
悪魔は笑う。
「嫌だ。」
即答だった。
「こいつ面白いんだよ。」
「怒り。」
「憎しみ。」
「復讐。」
「最高じゃねぇか。」
黒雷が弾ける。
レイは剣を構える。
「なら力ずくだ。」
悪魔。
「やってみろ。」
次の瞬間。
レイが動いた。
「フロストサーペント!」
巨大な氷蛇。
悪魔へ襲い掛かる。
だが。
黒雷が走る。
ドォォォォォン!!
氷蛇消滅。
一撃だった。
観客席が静まり返る。
レイの召喚獣が。
瞬殺された。
ユーマ。
「マジかよ・・・。」
悪魔は退屈そうに言う。
「弱い。」
「次。」
リリムが舌打ちした。
「気に入らないわね。」
Fire Eagleを抜く。
「魔炎弾。」
パンッ!!
爆発。
だが。
悪魔は避けない。
黒雷が勝手に弾く。
リリム。
「は?」
ルアも顔をしかめた。
「面倒ね。」
今までの敵とは違う。
攻撃が通じない。
いや。
攻撃する前から防がれている。
悪魔は笑う。
「終わりか?」
そして。
視線を再び怒の番人へ戻す。
「さて。」
「邪魔者も片付いた。」
一歩。
前へ進もうとする。
その時だった。
「待て。」
悪魔の足が止まる。
聞き慣れた声。
ロキだった。
悪魔が眉をひそめる。
「しつこいな。」
ロキの声。
『まだだ。』
『俺は負けてない。』
悪魔。
「黙れ。」
『俺の仲間に手を出すな。』
その瞬間。
ユーマ達が目を見開いた。
悪魔の身体が一瞬だけ止まる。
本当に一瞬。
だが確かに。
止まった。
ユーマ。
「今・・・。」
レイも気付いていた。
「いる。」
リリム。
「ロキ・・・。」
悪魔は不機嫌そうに舌打ちする。
「チッ。」
「だから嫌なんだよ。」
黒雷が荒れる。
身体の支配権を巡って。
ロキと悪魔が争っている。
悪魔が笑う。
「でもな。」
「もう遅い。」
「お前は俺だ。」
ロキ。
『違う。』
悪魔。
「違わない。」
『違う。』
黒雷が揺れる。
闘技場全体が震える。
ユーマは前へ出た。
そして叫ぶ。
「ロキ!!」
悪魔が睨む。
だがユーマは止まらない。
「聞こえてんだろ!!」
「戻ってこい!!」
闘技場に声が響く。
悪魔の表情が歪んだ。
初めてだった。
余裕が消えたのは。




