第120話 『怒の番人の一番弟子』
『勝者ァァァァァァ!!』
『ルアァァァァァァ!!』
歓声が響く。
闘技場が揺れる。
だが。
戦った本人達にはそんな声は届いていなかった。
ユーマは観客席から飛び降りた。
真っ先に向かったのは。
倒れているリリム。
「おい!」
「リリム!」
リリムは仰向けのまま目を開く。
そして。
面倒くさそうに言った。
「うるさい・・・。」
ユーマ。
「大丈夫か!?」
リリム。
「大丈夫じゃない。」
「魔力空っぽ。」
ユーマ。
「だよな。」
リリムは少し笑った。
「・・・。」
そして。
小さく呟く。
「勝ったみたいな顔するな。」
ユーマは一瞬キョトンとした。
そして笑う。
「いや。」
「めちゃくちゃ強かったぞ。」
リリム。
「・・・。」
少しだけ目を逸らす。
「当たり前でしょ。」
だが。
その耳は少し赤かった。
その時。
ドサッ。
別の音がした。
ユーマ達が振り返る。
そこには。
ルア。
勝者であるはずのルアが膝をついていた。
観客席もざわつく。
「おい!」
「ルアも限界か!?」
ルアは額の汗を拭く。
「はぁ・・・。」
大きく息を吐く。
そして。
苦笑した。
「魔力・・・。」
「ほとんど空っぽね。」
ユーマ。
「お前も大丈夫か?」
ルアは笑った。
「誰に言ってるの?」
いつもの余裕。
だが。
立ち上がろうとして。
ふらつく。
ユーマ。
「あ。」
咄嗟に肩を支える。
ルアが少し目を見開いた。
そして。
クスッと笑う。
「エスコートしてくれるの?」
ユーマ。
「別にそういうんじゃ――」
ボッ。
炎。
ユーマ。
「熱っ!?」
振り返る。
リリム。
指先から炎。
ニコッ。
「燃やすわよ。」
ユーマ。
「なんで!?」
観客席から笑いが起きる。
ルアも笑った。
「ふふ。」
「やっぱり面白いわね。」
医療班がやってくる。
リリム。
ルア。
二人は医務室へ運ばれていった。
準決勝進出。
だが。
代償も大きかった。
実況が叫ぶ。
『さぁ!!』
『準々決勝第三試合!!』
『開始だぁぁぁぁ!!』
歓声。
闘技場へ現れたのは。
レイ。
そして。
対戦相手。
獣戦士ガルガ。
二メートルを超える巨体。
熊のような筋肉。
巨大な斧。
観客席がざわつく。
「ガルガか。」
「強ぇぞ。」
「レイでも苦戦するか?」
実況。
『試合開始ィィィィィ!!』
ゴング。
ガルガが突進する。
地面が揺れる。
だが。
レイは動かない。
「フロストタイガー。」
氷の虎。
飛び出す。
ガルガへ噛みつく。
「邪魔だぁ!!」
ガルガが吹き飛ばす。
だが。
その隙。
「フロストサーペント。」
巨大な氷蛇。
ガルガの足へ巻き付く。
「なっ!?」
動きが止まる。
その瞬間。
レイ。
「フロストウォーリアー。」
魔法陣。
十体。
二十体。
三十体。
氷兵が現れる。
ユーマ。
「またそれかよ!!」
リリムがいたら絶対突っ込んでいた。
観客席も苦笑する。
「出た。」
「軍隊。」
「レイのいつものやつ。」
レイ。
「行け。」
ドドドドドドド!!
ガルガ。
埋まる。
実況。
『見えないぃぃぃぃ!!』
数秒後。
氷兵が退く。
そこには。
大の字で倒れるガルガ。
実況。
『勝者ァァァァァ!!』
『レイィィィィィ!!』
歓声。
レイは剣を納めた。
いつも通り。
何も変わらない。
そのまま控室へ戻ろうとする。
だが。
実況が再び叫んだ。
『さぁぁぁ!!』
『準々決勝最終試合!!』
会場の空気が変わる。
歓声が少し小さくなる。
理由は簡単だった。
ロキ。
悪魔契約。
あの暴走を全員が見ている。
実況。
『予選最速突破!!』
『番人へ牙を向く男!!』
『ロキィィィィィ!!』
歓声。
だが。
どこか緊張も混じる。
ロキが闘技場へ現れた。
表情はない。
ただ静か。
ケラノウスを握っている。
そして。
対戦相手が現れる。
実況。
『対するはぁぁぁ!!』
『怒の番人第一弟子!!』
『グラン!!』
歓声。
大男。
全身傷だらけ。
歴戦の戦士。
その目は鋭い。
グランはロキを見る。
そして。
鼻で笑った。
「お前か。」
ロキは答えない。
グラン。
「師匠はお前なんかに会わない。」
静寂。
観客席がざわつく。
グランは続ける。
「俺を倒せなきゃ。」
「その資格すらねぇ。」
ロキ。
無言。
ケラノウスを握る。
バチッ。
黒い雷が漏れた。
ほんの少し。
だが。
レイの表情が変わる。
「・・・。」
ユーマ。
「どうした?」
レイ。
「まずいな。」
ロキはグランだけを見ていた。
いや。
違う。
その向こう。
怒の番人だけを。
見ていた。




