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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
氷戦の街 グラディア編

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第119話 『紅蓮と獄炎』

「でも。」


黒炎が揺れる。


空気が変わる。


ルアは静かに微笑んだ。


「まだ甘い。」


ドォォォォォォン!!


黒炎が爆発する。


観客席が震える。


ユーマは思わず身を乗り出した。


「おい・・・。」


「今まで本気じゃなかったのかよ。」


レイも目を細める。


「ここからだな。」



ルアは腰へ手を伸ばした。


そして。


一本の黒い扇子を取り出す。


ユーマ。


「ん?」


「扇子?」


観客席もざわつく。


「あれ武器か?」


「ただの扇子だろ?」


「何する気だ?」


ルアは何も答えない。


ただ。


ゆっくりと扇子を開いた。


パサッ――


その瞬間だった。


黒炎が吹き上がる。


まるで火山の噴火。


闘技場の温度が一気に上昇した。


実況。


『な、なんだぁぁぁ!?』


『黒炎がさらに増えたぁぁぁ!!』


リリムの表情が変わる。


「それ・・・。」


ルア。


「ここからよ。」


そして。


扇子を一振りした。


ドォォォォォォン!!


巨大な黒炎の波。


リリムは咄嗟に飛び退く。


だが。


避けきれない。


ドガァァァァァン!!


爆風。


熱風。


リリムが吹き飛ばされる。


地面を転がる。


ユーマ。


「リリム!」


リリムは立ち上がる。


腕に火傷。


服も焦げていた。


ルアは優雅に扇子を揺らす。


「どうしたの?」


「さっきまでの勢いは?」


リリムは舌打ちした。


「チッ。」



ルアが再び扇子を振る。


「獄炎刃。」


黒炎が刃となって飛ぶ。


ドドドドドッ!!


リリムは走る。


避ける。


避ける。


避ける。


しかし。


一発が肩を掠めた。


血が飛ぶ。


観客席がざわつく。


「押されてる!」


「ルア優勢だ!」


「さっきまでと全然違うぞ!」



リリムはFire Eagleを抜く。


「魔炎弾!!」


パンッ!


パンッ!


パンッ!


連射。


しかし。


ルアは扇子を振るだけ。


黒炎が盾になる。


全て相殺。


ルア。


「綺麗だけど。」


「雑ね。」


リリム。


「うるさい。」



ルアの攻撃は止まらない。


「獄炎嵐。」


扇子が舞う。


黒炎の竜巻。


ドォォォォォォン!!


リリムが飲み込まれる。


観客席が悲鳴を上げる。


ユーマ。


「まずい!」


だが。


炎の中から飛び出してくる。


リリムだった。


ボロボロ。


肩で息をしている。


それでも笑っていた。


ルア。


「まだ立つの?」


リリム。


「当たり前でしょ。」


「誰に負けてると思ってんの。」


ルア。


「私。」


リリム。


「だからよ。」



二人の視線がぶつかる。


火花が散る。


ルアは少しだけ笑った。


「気に食わないのよね。」


リリム。


「奇遇。」


「あんたも。」


「気に食わない。」


観客席。


ユーマ。


「なんなんだあいつら。」


レイ。


「知らん。」



そして。


ルアが本気の魔力を放つ。


黒炎が渦を巻く。


闘技場全体を包み込むほど。


実況。


『ルア選手!!』


『最大出力だぁぁぁぁ!!』


リリムは息を吐いた。


そして。


背中へ手を回す。


ユーマが目を見開く。


「おい・・・。」


「まさか。」


リリムが背負っていた大型ライフル。


AK2020。


今まで一度も使わなかった武器。


それを前へ構える。


観客席がざわつく。


「なんだあれ?」


「初めて見るぞ。」


「ライフル?」


ルアの目も細くなる。


「それ。」


「初めて見るわね。」


リリムは笑う。


傷だらけの顔で。


いつものように。


「切り札は。」


AK2020を構える。


「最後まで取っとくものでしょ。」


ユーマ。


「リリム・・・。」


レイ。


「なるほど。」



フレアブースト。


最大出力。


炎がAK2020へ流れ込む。


銃身が真っ赤に染まる。


空気が震える。


観客席も静まり返った。


誰もが感じていた。


危険だと。


この一撃は。


危険すぎると。


リリム。


「魔炎砲――」


炎が収束する。


AK2020の先端へ。


巨大な太陽のように。


「滅式。」


ドォォォォォォォォォォン!!!


撃ち出された。


巨大な紅蓮の砲撃。


一直線。


ルアへ。


観客席から悲鳴。


ルアの目が見開かれる。


初めてだった。


本気で危険を感じたのは。


「っ!!」


全力回避。


ドォォォォォォォン!!


砲撃が闘技場を貫く。


壁が消し飛ぶ。


氷が蒸発する。


会場の一部が完全に消えていた。


沈黙。


誰も声が出ない。


ルアは遠くで立っていた。


髪の一部が焼けている。


頬から血が流れる。


ルアは小さく息を吐いた。


そして。


笑った。


「危なかった・・・。」


「当たってたら死んでたわね。」


観客席が大爆発する。


「なんだ今の!?」


「化け物かよ!!」


「リリムやばすぎる!!」


ユーマ。


「うおぉぉぉぉ!!」


「すげぇぇぇ!!」



だが。


まだ終わらない。


ルアは扇子を掲げる。


黒炎が集まる。


「じゃあ。」


「私も。」


空気が震える。


獄炎。


最大出力。


闘技場を覆うほどの黒炎。


ユーマ。


「おいおい・・・。」


「これ試合だよな・・・?」


レイ。


「その認識は捨てろ。」


リリムは最後の力で立ち上がる。


AK2020。


残弾。


あと一発。


最後の一発。


リリムは笑う。


「次は。」


「外さない。」


ルアも笑う。


「来なさい。」


紅蓮。


黒炎。


二人が同時に放った。


「魔炎砲――滅式!!」


「獄炎――最大出力!!」


ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!


世界が白く染まる。


衝撃波。


熱風。


氷の闘技場が溶け始める。


観客席まで熱気が届く。


実況は机の下へ逃げ込んでいた。


ユーマ。


「熱っ!!」


レイは召喚獣で防御する。


ルアの黒炎。


リリムの紅蓮。


互いにぶつかり合う。


押す。


押し返す。


さらに押す。


そして――


爆発。


全てを飲み込む大爆発。


煙。


静寂。


誰も動けない。


観客席も息を呑む。


やがて。


煙が晴れていく。


そこにいたのは。


倒れているリリム。


AK2020も限界だった。


魔力も尽きた。


もう立てない。


そして。


その目の前。


ルア。


膝をついている。


全身傷だらけ。


髪も焼けている。


だが。


立ち上がった。


ルアは息を整える。


そして。


リリムを見る。


「私の勝ちね。」


リリムは悔しそうに笑った。


「次は・・・。」


「勝つ。」


ルアも笑う。


「楽しみにしてる。」


実況が立ち上がる。


『勝者ァァァァァァ!!』


『ルアァァァァァァ!!』


観客席が揺れる。


だが。


その歓声の中。


誰もが思っていた。


勝者はルア。


しかし。


リリムもまた。


本物の強者だったと。

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