第112話 『大地の魔法使い』
『第三試合終了ォォォォ!!』
実況の声が響く。
観客席から拍手が起こる。
先程まで行われていたのは、
剣士ラウルと水魔法使いミリアの戦いだった。
激戦の末。
勝利したのは剣士ラウル。
本戦らしいレベルの高い戦いだった。
ユーマは腕を組む。
「やっぱ本戦まで来ると強ぇな。」
リリムも頷く。
「予選とは別物ね。」
ルアは笑う。
「ここからが本番よ。」
そして。
実況が叫んだ。
『続いて第四試合ィィィィィ!!』
観客席が沸く。
『予選最速突破ァァァァ!!』
『番人へ斬りかかった男ォォォォ!!』
『ロキィィィィィィ!!』
大歓声。
観客達が立ち上がる。
「ロキだ!!」
「見せてくれ!!」
「番人を狙う男!!」
ロキは静かに闘技場へ入る。
歓声にも反応しない。
ただ歩く。
その姿を見て。
ユーマは少しだけ違和感を覚えた。
相変わらずだ。
番人以外見えていない。
そんな感じだった。
実況が続ける。
『対するはぁぁぁ!!』
『大地の魔法使い!!』
『鉄壁の守護者!!』
『アレックゥゥゥゥゥ!!』
闘技場へ一人の男が現れる。
三十代後半。
短髪。
無精髭。
派手さはない。
だが。
妙な存在感があった。
ユーマは首を傾げる。
「強いのか?」
ルアは即答した。
「強い。」
そして。
少しだけ真面目な顔になる。
「それに。」
「ロキにとっては最悪の相手ね。」
ユーマ。
「なんで?」
ルア。
「見てれば分かる。」
実況。
『試合開始ィィィィィ!!』
ゴングが鳴る。
その瞬間。
ロキが動いた。
バチバチバチッ!!
雷が走る。
ケラノウスを構える。
「雷槍。」
ドォォォォォォン!!
巨大な雷撃。
開幕から全力。
観客席が沸く。
「速ぇ!!」
「決まったか!?」
だが。
アレックは動かない。
杖を地面へ突き刺した。
ドン。
地面が光る。
次の瞬間。
雷が消えた。
いや。
吸い込まれた。
地面へ。
ユーマ。
「え?」
リリム。
「効いてない?」
レイが静かに言う。
「分散された。」
ロキの眉が動く。
アレックは落ち着いた声で言った。
「雷は地面に弱い。」
「常識だ。」
観客席がざわつく。
ロキは舌打ちした。
「チッ。」
再び雷。
今度は三連撃。
ドォォォォォン!!
ドォォォォォン!!
ドォォォォォン!!
だが。
全て地面へ逃がされる。
アレックは一歩も動いていない。
ユーマ。
「マジかよ・・・。」
ルア。
「だから言ったでしょ。」
「最悪の相手だって。」
ロキはケラノウスを握る。
小型斧が変形する。
巨大戦斧。
雷が纏う。
「なら。」
「直接だ。」
地面を蹴る。
ドォン!!
一気に距離を詰める。
ケラノウスを振り下ろす。
だが。
アレックが杖を掲げた。
「大地壁。」
ゴゴゴゴゴ・・・
巨大な土壁。
ガキィィィィン!!
戦斧が止まる。
ロキ。
「邪魔だ。」
力任せに破壊。
だが。
その瞬間。
「大地槍。」
地面から槍。
ドゴォォォォン!!
ロキが吹き飛ぶ。
観客席がどよめいた。
「入った!」
「アレックだ!」
「押してるぞ!」
ロキは着地する。
まだ余裕。
だが。
表情は険しい。
アレックは静かだった。
「怒りだけで勝てるほど。」
「本戦は甘くない。」
その言葉。
ロキの目が変わる。
完全に怒った。
「黙れ。」
雷が暴れる。
「黙れぇぇぇぇぇ!!」
ドォォォォォォン!!
雷。
雷。
雷。
雷。
まるで嵐。
だが。
全て。
地面へ吸い込まれていく。
アレックは動じない。
「無駄だ。」
ロキはさらに魔力を注ぐ。
冷静さを失っていた。
ユーマが立ち上がる。
「おい。」
「ロキ。」
レイは何も言わない。
ただ見ている。
アレックが杖を振る。
「大地拘束。」
ゴゴゴゴゴ・・・
地面が盛り上がる。
ロキの足を掴む。
ロキ。
「っ!?」
初めて動きが止まった。
その隙。
アレックが杖を向ける。
「終わりだ。」
「大地槍。」
ドォォォォォォォン!!
巨大な岩槍。
直撃。
ロキの身体が吹き飛んだ。
観客席が静まり返る。
実況も一瞬言葉を失う。
ロキは地面を転がる。
そして。
動かない。
実況が叫んだ。
『ロキ選手ダウゥゥゥン!!』
観客席がざわつく。
「マジか・・・。」
「ロキが・・・。」
「負けるのか?」
ユーマは拳を握った。
「おい・・・。」
リリムも笑っていない。
ルアも真顔だった。
アレックは静かにロキを見つめる。
そして。
杖を構え直した。
勝負はまだ終わっていない。
だが。
流れは完全にアレックへ傾いていた。




