第111話 『氷の軍勢』
『本戦第二試合ィィィィ!!』
実況の声が闘技場へ響く。
観客席も大歓声。
先程のユーマの勝利で会場の熱気は最高潮だった。
『続いて登場するのはぁぁぁ!!』
『氷の召喚士!!』
『レイィィィィィ!!』
歓声。
レイは静かに闘技場へ歩き出る。
表情は変わらない。
歓声にも反応しない。
ただ中央へ向かう。
実況はさらに叫ぶ。
『対するはぁぁぁ!!』
『鉄壁の氷盾!!』
『守りの怪物!!』
『ムーバァァァァァ!!』
巨大な男が現れた。
二メートルを超える巨体。
全身を氷の鎧で覆っている。
そして。
身体よりも大きな氷の盾。
見るからに重戦士だった。
観客席がざわつく。
「ムーバーか。」
「相性いいぞ。」
「召喚士殺しだ。」
「レイでも苦戦するかもな。」
ユーマは首を傾げた。
「そんな強いのか?」
ルアが頷く。
「守りだけならグラディアでも上位。」
リリム。
「面倒そうね。」
レイは静かに剣を抜いた。
ムーバーは笑う。
「お前がレイか。」
「評判は聞いてる。」
大盾を構える。
「だが。」
「その細腕で俺は倒せねぇ。」
実況。
『試合開始ィィィィィ!!』
ゴングが鳴る。
ドォォォォン!!
ムーバーが突進した。
速い。
巨体とは思えない速度。
レイは正面から迎え撃つ。
剣を振る。
ガキィィィィン!!
火花。
いや。
氷の破片が飛び散った。
しかし。
傷一つ付かない。
ムーバーが笑う。
「軽いな。」
レイ。
「そうか。」
淡々としている。
ムーバーが盾を振る。
ドォォォォン!!
レイは飛び退く。
そのまま手を掲げた。
「フロストホーク。」
魔法陣。
氷の鷹が現れる。
観客席が沸く。
「出た!」
「召喚獣!」
フロストホークは一気に上昇。
そして。
急降下。
ムーバーへ突っ込む。
だが。
ムーバーは盾を振り上げた。
ドゴォォォォォン!!
一撃。
フロストホークが吹き飛ぶ。
そのまま砕け散った。
ユーマ。
「うおっ!?」
リリム。
「やられた。」
ムーバーが笑う。
「召喚士ってのはこんなもんか?」
挑発。
観客席もざわつく。
だが。
レイは変わらない。
ため息を吐いた。
「はぁ・・・。」
ムーバー。
「あ?」
レイ。
「じゃあこれでいくか。」
静かな声だった。
だが。
少しだけ面倒そうだった。
レイはムーバーを見る。
そして。
小さく笑う。
「後悔すんなよ。」
「ゴリラ野郎。」
観客席。
シーン。
ユーマ。
「言った。」
リリム。
「言ったわね。」
ルア。
「珍しい。」
ムーバーの額に青筋が浮く。
「誰がゴリラだ。」
レイは無視した。
剣を地面へ突き刺す。
ドン。
巨大な魔法陣。
今までで最大。
闘技場全体を覆うほどだった。
観客席がざわつく。
「なんだ・・・?」
「デカくないか?」
「おい。」
レイは右手を掲げた。
冷気が集まる。
そして。
静かに言う。
「来い。」
空気が凍る。
「フロストウォーリアー。」
その瞬間。
地面が割れた。
一体。
二体。
三体。
氷の兵士が現れる。
さらに。
十体。
二十体。
三十体。
止まらない。
五十体。
七十体。
九十体。
そして。
百体。
闘技場を埋め尽くす氷の軍勢。
観客席が大騒ぎになった。
「ひゃく!?」
「多すぎるだろ!!」
「軍隊じゃねぇか!!」
ユーマが立ち上がる。
「ズルすぎるだろ!!」
リリム。
「これは酷い。」
ルアは笑っていた。
「あの子、本気出すとこうなるのよ。」
ムーバーも流石に顔色が変わった。
「おい。」
「待て。」
周囲を見回す。
右も。
左も。
前も。
後ろも。
氷兵。
完全包囲。
ムーバー。
「多くねぇか?」
レイ。
「行け。」
一言。
それだけだった。
百体のフロストウォーリアーが突撃する。
ドドドドドドドドド!!
地響き。
ムーバーは盾を構える。
だが。
無意味だった。
一体倒す。
二体倒す。
三体倒す。
だが。
十体来る。
二十体来る。
三十体来る。
「おい!!」
「待て!!」
「多い!!」
ムーバーの悲鳴が響く。
そして。
見えなくなった。
完全に埋まる。
実況も叫ぶ。
『ムーバー選手が見えませぇぇぇぇぇん!!』
ドゴン!!
バキィ!!
ガシャァァン!!
闘技場の中央から轟音が響く。
しばらくして。
静かになった。
氷兵達が左右へ退く。
そこには。
大の字で倒れるムーバー。
ピクリとも動かない。
実況。
沈黙。
そして。
絶叫した。
『勝者ァァァァァァァ!!』
『レイィィィィィィィ!!』
歓声爆発。
闘技場が揺れる。
だが。
レイは興味なさそうだった。
剣を拾う。
そして。
そのまま帰ろうとする。
ユーマは呆れた顔で言った。
「・・・。」
「絶対敵にしたくねぇ。」
リリム。
「同感。」
ルア。
「賢明ね。」
レイは聞いていなかった。
そのまま控室へ歩いていく。
百体の氷兵だけを残して。
本戦第二試合。
勝者。
レイ。
圧倒的勝利だった。




