第109話 『本戦前夜』
氷闘祭予選。
三日間に及ぶ戦いは終わりを迎えた。
街中で繰り広げられた無数の戦闘。
勝者。
敗者。
様々な思いを残しながら。
ついに本戦出場者が決定する。
闘技場上空。
巨大な魔導拡声器から声が響いた。
『皆様!!』
『長らくお待たせいたしました!!』
観客達が沸く。
『氷闘祭予選!!』
『全日程終了ォォォォォ!!』
歓声。
拍手。
怒号。
街全体が揺れる。
『そして!!』
『本戦出場者が出揃いました!!』
巨大な氷のスクリーンへ名前が映し出される。
ユーマ。
リリム。
レイ。
ロキ。
ルア。
そして他の強者達。
勝者だけが立てる舞台。
本戦トーナメント。
『明日!!』
『グラディア最強を決める戦いが始まります!!』
歓声が響き渡った。
⸻
その夜。
ユーマ達は宿へ戻っていた。
食事が並ぶ。
肉。
スープ。
パン。
戦士達のための豪快な料理。
ユーマは肉を頬張る。
「うめぇ。」
リリム。
「子供みたい。」
レイ。
「実際子供みたいなものだろ。」
ユーマ。
「誰がだ。」
ルア。
「あなたよ。」
全員笑う。
だが。
一つだけ違和感があった。
ユーマが辺りを見る。
「そういや。」
「ロキは?」
沈黙。
レイが首を振る。
「見てない。」
リリム。
「夕方からいないわね。」
ルアも少し考える。
「多分。」
「あそこじゃない?」
⸻
闘技場。
その外周。
巨大な怒の番人の像。
夜の静寂の中。
一人の男が立っていた。
ロキだった。
風が吹く。
ロキは何も言わない。
ただ。
怒の番人の像を見上げていた。
その時。
後ろから声が聞こえる。
「ロキ!」
振り返る。
ユーマ達だった。
ユーマは駆け寄ってくる。
「こんなところにいたのか!」
ロキは何も答えない。
ユーマは気にせず続ける。
「俺達も本戦行くぜ!」
ニヤリ。
いつもの笑顔。
「こっち来いよ!」
「明日に向けて飯食ってるんだ。」
「レイなんか珍しく肉三枚も食ったぞ。」
レイ。
「余計なこと言うな。」
リリムが吹き出す。
ルアも笑う。
少しだけ。
昔みたいな空気だった。
だが。
ロキだけが違う。
ロキは数秒黙った後。
静かに言った。
「遠慮しておく。」
ユーマ。
「え?」
ロキはそれ以上何も言わない。
そのまま歩き出す。
ユーマ。
「おい。」
ロキは止まらない。
「ロキ。」
返事もない。
ただ。
闇の中へ消えていく。
ユーマはその背中を見つめた。
「どうしちまったんだよ・・・。」
リリムが小さく呟く。
「番人のことしか見えてない。」
レイも頷く。
「危険だな。」
ルアは何も言わない。
ただ。
弟を見るような目でロキの背中を見ていた。
⸻
翌朝。
氷戦都市グラディア。
巨大闘技場。
観客席は満員だった。
戦士。
商人。
子供。
老人。
全ての者が集まっている。
歓声が鳴り止まない。
そして。
中央へ実況者が現れた。
『戦士達よぉぉぉぉ!!』
歓声。
『待たせたなぁぁぁぁ!!』
さらに歓声。
『氷闘祭!!』
『本戦開幕だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
闘技場が揺れる。
まるで地震のような歓声。
ユーマは笑う。
リリムも笑う。
レイは静かに目を閉じる。
ルアは不敵に笑う。
そして。
ロキだけが。
怒の番人を見ていた。
戦士達の運命を決める戦いが。
今。
幕を開ける。




