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レベル1の『〇〇』 〜あなたが選ぶ転生物語〜  作者: 矢部夏 泡太
氷戦の街 グラディア編

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第107話 『それぞれの怒り』

ゴエムの兄ガンズの大剣が振り下ろされる。


だが。


ユーマの姿はそこにはなかった。


「なっ!?」


ガンズの目が見開く。


風が吹く。


ユーマは既に背後へ回っていた。


「風神流・風走り。」


「速ぇ・・・!」


ガンズが振り返る。


だが遅い。


ユーマはカゼマサを構える。


「風神流――」


風が集まる。


刀身へ。


「風神斬り。」


シュン。


音すら聞こえなかった。


次の瞬間。


ガンズの大剣が真っ二つになる。


そして。


ドォォォォォン!!


ガンズの身体が吹き飛んだ。


地面を何度も転がる。


沈黙。


周囲が固まる。


ユーマは刀を納めた。


カチッ。


「終わり。」


実況腕輪が光る。


【ユーマ 1勝】


ガンズは仰向けのまま笑う。


「はは・・・。」


「強ぇな・・・。」


完敗だった。


ガンズはゆっくり起き上がる。


「さすがだぜ。」


ニヤリ。


「ぼっちゃん。」


ユーマ。


「だからその呼び方やめろ!!」


ガンズは大笑いした。


周囲もつられて笑う。


だが。


その笑いはすぐに消えた。


取り巻き達が青ざめていたからだ。


「兄貴・・・負けた・・・。」


「うそだろ・・・。」


「無理だ・・・。」


全員の視線がユーマへ向く。


ユーマ。


リリム。


ロキ。


レイ。


ルア。


強者しかいない。


そして。


全員同じ結論へ辿り着いた。


「逃げろぉぉぉぉぉ!!」


一斉逃走。


ユーマ。


「早っ。」


リリム。


「ちぇっ。」


逃げていく背中を見る。


「私の獲物が。」


肩を落とす。


だがすぐに笑う。


「まぁいいか。」


「許してやる。」


その時だった。


バチッ。


空気が弾ける。


全員が空を見上げた。


黒雲。


いつの間にか。


頭上に雷雲が集まっている。


リリム。


「ん?」


次の瞬間。


ドゴォォォォォォン!!


雷が落ちた。


一人目。


「ぎゃあああああ!!」


さらに。


ドゴォォォォォォン!!


二人目。


ドゴォォォォォォン!!


三人目。


ドゴォォォォォォン!!


四人目。


五人目。


六人目。


七人目。


八人目。


九人目。


逃げる男達へ。


正確無比に雷が落ち続ける。


悲鳴。


爆発。


煙。


そして。


沈黙。


誰も立っていなかった。


全員戦闘不能。


ユーマ。


「・・・。」


リリム。


「・・・。」


レイ。


「・・・。」


ルア。


「・・・。」


煙の向こう。


一人の男が立っていた。


ロキだった。


ケラノウスを肩へ担いでいる。


表情は変わらない。


実況腕輪が反応する。


【ロキ 5勝】


沈黙。


そして。


実況の声が響く。


『出たぁぁぁぁぁぁ!!』


『本戦出場第一号!!』


『ロキーーーーーー!!』


観客達が沸く。


だが。


ロキは反応しない。


リリムが呆れたように言う。


「おいおい。」


「私の獲物だったのにー。」


ユーマも顔をしかめた。


「ロキ。」


返事はない。


「おい。」


ロキが振り返る。


だがその目は。


どこか遠くを見ていた。


ユーマは少し苛立った。


「さすがにひでぇぞ。」


ロキ。


「・・・。」


「逃げてただろ。」


「もうやる必要なかったじゃねぇか。」


沈黙。


ロキは答えない。


ユーマはさらに続ける。


「そんな勝ち方して嬉しいか?」


ロキ。


「・・・。」


「勝ちは勝ちだ。」


低い声だった。


ユーマの眉が動く。


「そういう話じゃねぇ。」


ロキ。


「俺には関係ない。」


ユーマ。


「は?」


ロキは闘技場の方向を見る。


ただ一点。


そこだけを。


「俺は番人を倒す。」


「そのためにここへ来た。」


「それだけだ。」


ユーマは何か言おうとする。


だが。


ロキはもう歩き出していた。


話は終わった。


そう言うように。


リリムが小さく呟く。


「・・・ヤバいわね。」


レイも黙っていた。


ルアも珍しく笑っていない。


ロキは聞いていない。


もう。


怒の番人しか見えていない。


ユーマはその背中を見ながら頭を掻く。


「おいおい・・・。」


「大丈夫かよあいつ。」


ロキは振り返らない。


ただ。


闘技場へ向かう。


その背中だけが遠ざかっていく。


そして。


実況の声が再び響いた。


『本戦出場者第一号ォォォォォ!!』


『ロキーーーーーー!!!』


大歓声。


だが。


ロキは立ち止まらない。


歓声も。


賞賛も。


何も聞こえていない。


その瞳には。


ただ一人。


怒の番人だけが映っていた。

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