第106話 『ゴエムの兄』
『レイ選手!!』
『三勝獲得ぅぅぅぅぅ!!』
実況の声が街中へ響く。
レイの腕輪が光る。
【3勝】
ユーマは口笛を吹いた。
「やるじゃねぇか。」
レイは肩をすくめる。
「普通だ。」
「普通じゃねぇよ。」
即ツッコミだった。
リリムも苦笑する。
ロキも頷いた。
あの三体の召喚獣。
確かに強い。
レイが本気を出したらどうなるのか。
少し気になるほどだった。
その時。
遠くから怒鳴り声が聞こえた。
「いたぞぉぉぉぉ!!」
「ゴエムをやった奴らだ!!」
ユーマ達が振り返る。
大勢の男達が走ってくる。
十人近い。
全員腕輪を付けている。
予選参加者だ。
ユーマ。
「また来た。」
リリム。
「人気者ね。」
ロキ。
「面倒だ。」
レイ。
「予選だからな。」
だが。
集団は途中で止まった。
そして。
左右へ分かれる。
道ができる。
その奥から。
一人の男が現れた。
大きい。
ゴエムよりさらに一回り大きい。
全身傷だらけ。
大剣を背負った戦士。
ただ立っているだけで強いと分かる。
男はユーマを見る。
「お前がユーマか。」
ユーマ。
「そうだけど。」
男はニヤリと笑った。
「弟がお世話になったらしいな。」
ユーマ。
「弟?」
数秒考える。
そして。
「あぁ。」
「ゴエムか。」
男は頷く。
ユーマ。
「なんだ。」
「あの弱い奴の兄貴か。」
沈黙。
後ろの舎弟達が固まる。
そして。
大爆発した。
「テメェ!!」
「ゴエムさんを侮辱するな!!」
「ぶっ殺すぞ!!」
だが。
男が手を上げる。
全員黙る。
そして。
男は笑った。
豪快に。
「ははははは!!」
腹を抱えて笑う。
ユーマ達も少し驚く。
男は涙を拭きながら言った。
「違いねぇ。」
「確かにあいつ弱ぇからな。」
後ろの舎弟達。
「ゴエムさん!?」
「否定してくださいよ!!」
「兄貴ぃぃぃ!!」
完全に身内からも認められていた。
男は笑いながらユーマを見る。
「だがよ。」
笑みが消える。
戦士の目になる。
「弟をやってくれたじゃねぇか。」
大剣を肩へ担ぐ。
「ぼっちゃん。」
ユーマ。
「ぼっちゃん?」
リリム。
「似合わない。」
ロキ。
「全然似合わないな。」
レイ。
「むしろ逆だ。」
ユーマ。
「お前ら酷くね?」
男は吹き出した。
「面白ぇな。」
そして。
大剣の切っ先をユーマへ向ける。
「一つ勝負しようぜ。」
周囲がざわつく。
ユーマは笑う。
「勝負?」
男。
「ああ。」
「俺に勝ったら。」
後ろを指差す。
「こいつら全員引き上げる。」
舎弟達。
「えぇ!?」
「兄貴ぃぃ!!」
無視だった。
男は続ける。
「俺が勝ったら。」
「お前の一勝もらう。」
予選らしい条件。
ユーマはカゼマサへ手を掛ける。
「面白ぇ。」
ニヤリ。
「やろうぜ。」
男も笑った。
「話が早ぇ。」
周囲の住民達も集まり始める。
「おい。」
「あれガンズじゃねぇか。」
「マジか。」
「ゴエムの兄貴だ。」
「レベル48だぞ。」
ざわつく。
レベル48。
グラディアでも中堅上位。
新人が相手にするには十分強敵だった。
ガンズは大剣を抜く。
ドォン。
氷の地面へ突き刺した。
「覚えとけ。」
「俺はガンズ。」
「ゴエムの兄貴だ。」
ユーマもカゼマサを抜く。
静かに。
ゆっくりと。
風が吹く。
「ユーマ。」
「レベル55。」
ガンズの眉が上がる。
「ほぉ?」
周囲もざわついた。
「55!?」
「高ぇ!!」
「マジかよ!?」
ガンズは笑う。
ますます楽しそうだった。
「なるほど。」
「弟が負けるわけだ。」
そして。
大剣を構える。
ユーマも構える。
リリム。
レイ。
ロキ。
ルア。
全員が見守る。
予選開始から初めての本格戦闘。
ガンズが笑う。
「来いよ。」
「ぼっちゃん。」
ユーマも笑った。
「だからその呼び方やめろ。」
次の瞬間。
二人が同時に地面を蹴った。




