第100話 『新人狩り』
「久しぶりだなぁ。」
男は笑っていた。
その笑顔には悪意しかない。
レイの足が止まる。
ユーマ達も振り返った。
男の周囲には数人の取り巻き。
いや。
数人ではない。
十人近くいる。
皆同じような顔をしていた。
ニヤニヤ笑いながら。
レイを見ている。
まるで獲物を見るように。
先頭に立つ大柄な男が肩を回した。
「誰かと思えば。」
「親友殺しのレイ君じゃねぇか。」
周囲の舎弟達が笑う。
「ギャハハハ!」
「久しぶりっすねぇ!」
「相変わらず優等生っすか!」
レイは何も言わない。
ただ。
静かに男を見ていた。
ユーマは小声で聞く。
「知り合いか?」
レイ。
「知り合いじゃない。」
少しだけ間を置く。
「ゴミだ。」
ユーマ。
「なるほど。」
即納得だった。
男の額に青筋が浮かぶ。
「相変わらず口だけは達者だな。」
「レイ。」
男は笑う。
嫌な笑みだった。
「まぁ仕方ねぇか。」
「毎回毎回。」
「準優勝止まりだもんなぁ?」
舎弟達が大笑いする。
「ギャハハハ!」
「また二位っすもんね!」
「レイ様ぁ!」
レイは反応しない。
だが。
ユーマは気付いた。
少しだけ。
拳を握っている。
ゴエムはそれを見る。
そして。
さらに笑う。
「優勝しねぇのか?」
「できねぇのか?」
「どっちだ?」
周囲の空気が少し重くなる。
だが。
ゴエムは止まらない。
「まぁ無理か。」
「親友を殺したくせに。」
「今度は自分が死ぬのが怖ぇんだろ?」
舎弟達がまた笑う。
レイの表情は変わらない。
だが。
明らかに目が冷たくなっていた。
「黙れ。」
低い声。
ゴエムは楽しそうだった。
「図星か?」
「だから毎回負けるんだよ。」
「中途半端野郎。」
その時だった。
ユーマが前へ出る。
「おい。」
ゴエムの視線が向く。
「あ?」
ユーマは面倒そうに頭を掻いた。
「さっきからうるせぇぞ。」
一瞬。
沈黙。
そして。
ゴエム達が笑い出した。
「誰だお前!」
「新入りか!?」
「知らねぇのか!?」
ユーマ。
「知らねぇ。」
ゴエム。
「この街じゃ有名人だぜ?」
レイを指差す。
「親友殺しのレイ様だ。」
ユーマ。
「だからなんだ。」
ゴエム。
「・・・は?」
ユーマは肩をすくめる。
「事情も知らねぇのに。」
「ベラベラ喋ってんじゃねぇよ。」
ゴエムの顔から笑みが消えた。
レイも驚いていた。
少しだけ。
本当に少しだけ。
目を見開いている。
ユーマは続ける。
「他人の傷ほじくって。」
「楽しいか?」
ゴエム。
「お前・・・。」
舎弟達もざわつく。
空気が変わった。
だが。
次の瞬間。
ゴエムは笑った。
怒ったわけではない。
面白がっていた。
「気に入った。」
「新入り。」
舎弟達も笑う。
嫌な笑い方だった。
「じゃあよ。」
ゴエムは両手を広げる。
「グラディアのルールを教えてやる。」
取り巻き達が動く。
ユーマ達を囲む。
右。
左。
後ろ。
逃げ道を塞ぐ。
リリムがため息を吐く。
「面倒ね。」
ロキも頷く。
「面倒だな。」
ゴエムはニヤニヤ笑う。
「金置いてけ。」
「武器置いてけ。」
そして。
リリムを見る。
「ついでに女も置いてけ。」
沈黙。
リリム。
「殺す?」
ユーマ。
「まだダメ。」
ロキ。
「五秒待て。」
リリム。
「優しい。」
三人とも真顔だった。
ゴエムは少し引いた。
だが。
すぐに笑う。
「断るなら戦闘成立だ。」
「グラディアのルールだからな。」
ユーマは少し考える。
そして。
笑った。
「そうか。」
スッ。
腰の刀へ手を伸ばす。
名刀カゼマサ。
静かに抜く。
陽の光を反射する刀身。
ゴエムの顔から笑みが消える。
何か嫌な予感がした。
ユーマは刀を肩に乗せる。
そして。
ニヤリと笑った。
「じゃあ。」
「遠慮しなくていいんだな。」
ゴエム。
「あ?」
ユーマは一歩前へ出る。
「一発目は俺がやる。」
その言葉と共に。
風が吹いた。




